弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

香川県立中央病院,肺がん見落とし事案5000万円で和解(報道)

香川県立中央病院のサイトに,2012年6月14日,以下の「お詫びとお知らせ」が掲載されました.

「当院において、がん治療後、継続して外来診療を受けられていた患者様に関し、胸部レントゲン写真及びCTの画像・検査報告書を確認していなかったため、肺がんの発見が遅れた事故がありました。

 この事故を受け、検査結果や検査報告書の確認の徹底を図るとともに、検査結果の確認漏れの有無を担当医師が閲覧することができるよう電子カルテシステムを改善するなどの対策を講じました。

 患者様のご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご遺族の皆様に心よりお詫び申し上げます。また、今回のことを重く受け止め、安全で質の高い医療の提供により一層努めて参ります。」


これだけでは,事態がよくわかりませんが,以下の報道のとおり,検査を指示した整形外科医,産婦人科医は検査画像を見ることなくすぎたようです.また,異常陰影を指摘した放射線医のレポートは,翌年まで読まれることがありませんでした.

◆ 読売新聞の報道

読売新聞「肺がん見逃し 遺族質問まで説明せず…香川県立中央病院」(2012年6月15日)は,次のとおり報じました.

「県立中央病院(香川県高松市)で14日、肺がん発見の機会を2度も見過ごすというずさんな診療経緯が明らかになった。

 胸部のエックス線写真やコンピューター断層撮影法(CT)検査の結果確認を2人の担当医が怠る単純なミスが重なり、50歳代の女性が死亡。病院側は遺族が問い合わせるまで、こうした経緯を説明しておらず、県庁で記者会見した松本祐蔵院長らは苦しい弁明に追われた。

 記者会見には、松本院長と、山地耕太郎事務局長が出席。「重大な医療事故だった」とミスを認めて陳謝し、経緯を説明した。

 松本院長らによると、エックス線撮影は女性の腕の骨折治療を担当した整形外科医が、CT検査は治療済みの子宮頸がんの経過観察として、産婦人科医が実施を決めた。いずれも肺に異常な影が写っており、電子カルテで簡単に閲覧できたが、2人とも一度も目を通していなかった。

 理由について、整形外科医は「(心機能の事前チェックが必要な)全身麻酔での手術を予定していたが、結果的に部分麻酔で行ったため、画像を見なかった」と説明。産婦人科医は「検査を行ったことを忘れていた」と話したという。

 CT検査で肺の影に気付き、報告書に記載した放射線科の医師も、産婦人科医に直接知らせておらず、松本院長は「病院全体のチェック体制に問題があった」との認識を示した。

 この報告書は、2009年6月に女性が肺がんと診断された直後に見つかり、その1か月後には、医療ミスとして松本院長にも報告されていた。しかし、病院側は女性側に伝えず、10年10月に亡くなった後も、遺族の問い合わせを受けるまで知らせていなかった。

 報道陣から「問い合わせがなければ、隠していたのか」とただされた松本院長は「当初は『患者の負担になる』と判断した。その後、院内での協議が続いて遺族に十分な対応ができなかったが、隠し通すつもりはなかった」と釈明した。

 再発防止策として、同病院は、検査結果が閲覧されない場合、電子カルテを見る画面上に警告が出るようシステムを変更。しかし、ほかに放置されている検査結果がないかどうかは「データが膨大で、すべてはチェックできていない」としている。(小野隆明)」


◆ 産経新聞の報道

msn産経「確認ミス がん発見遅れ死亡 香川県立中央病院 ■遺族に5000万円賠償へ」(2012年6月15日)は,次のとおり報じました.

「香川県立中央病院(高松市)は14日、胸部レントゲン検査などで肺に異常があったのに医師の確認ミスで県内に住む50代の女性の肺がんの発見が遅れ、その後死亡したとして、遺族に5千万円の損害賠償を支払い和解することで合意したと発表した。

 女性は平成18年6月に同病院で子宮頸がんの手術を受け、その後も外来を受診。20年2月に手首を骨折した際の治療で胸部のレントゲン撮影を行い、同年8月には子宮頸がんの経過確認のために腹胸部のCT(コンピューター断層撮影)検査を受けた。いずれも肺に異常陰影があったが、整形外科と産婦人科の担当医師はともに画像の確認を怠っていたという。

 女性は別の医療機関で受けた検査で肺に異常がみられ、中央病院で改めて検査し21年6月に肺がんが発見された。同病院で入院治療を行ったが、22年10月に死亡。同病院は肺がんが見つかった段階で医師の確認ミスに気づいたが、昨年1月に遺族から診療行為の問い合わせを受けるまで事実を伝えていなかった。

 同病院は、早く治療を始めていれば5年生存率が30~40%上がっていたと分析しており「病院全体でチェックする体質が不十分だった。心からおわび申し上げたい」と話した。」


◆ 朝日新聞の報道

朝日新聞「がん見逃すミス、遺族に5千万円賠償へ 香川県立病院」(2012年6月15日)は,次のとおり報じました.
 
「香川県立中央病院(高松市、松本祐蔵院長)は14日、2008年に2度にわたり50代の女性患者の肺がんを見逃すミスがあり、女性が10年10月に死亡したと発表した。遺族との和解のため、県は遺族に5千万円の損害賠償を支払う議案を21日開会の県議会に提出する。

 病院によると、女性が08年2月に手首を骨折し、手術前にX線画像を撮ったところ、肺に影があったのに整形外科の男性医師が見逃した。さらに同年8月、別の治療の経過観察で女性の胸と腹のCT検査をした放射線科の担当者が「肺に異常陰影がある」との所見を付けて電子カルテを更新したのに、産婦人科の男性医師が気づかずに放置した。

 09年6月に女性が別の病院で検査を受けて、肺がんが見つかった。女性は県立中央病院に入院。このとき病院はCT検査結果の放置について把握したが、女性側に伝えず治療を続けた。女性の死亡後に遺族の求めに応じて院内の医療事故調査委員会が調べた結果、X線画像の見逃しも含めて2度のミスが確認された。松本院長は会見で「家族への説明が遅れたことは申し訳なかった」と謝罪した。

 関係する2人の医師を処分するかどうかは今後、県が判断するという。(細川治子)」


◆ 四国新聞の報道

四国新聞「県立中央病院医療ミス/がん見落とし、賠償へ」(2012年6月15日)は,次のとおり報じました.

「香川県立中央病院20+ 件(松本祐蔵院長)は14日、2度にわたってエックス線写真などの確認を怠り、香川県内の50代女性患者の肺がん発見が遅れて死亡したとして、遺族に慰謝料など損害賠償金5千万円を支払うと発表した。

 同病院によると、女性は2008年2月、左手首の骨折手術の際、エックス線で胸部を撮影。同年8月には以前手術した子宮頸(けい)がんの術後経過を見るため、胸腹部のコンピューター断層撮影(CT)検査を受けた。どちらも肺に異常な陰影が写り、CT検査結果には技師の異常所見も付いていたが、整形外科と産婦人科それぞれの男性医師が画像などを確認していなかった。

 女性は、09年6月に他の病院で肺の異常を指摘され、香川県立中央病院20+ 件を受診。肺がんが見つかり、摘出手術を受けたが、10年10月に死亡した。

 同病院は肺がんを見つけた時点で、CT検査の確認ミスに気付いていたが、11年1月に遺族から治療に関する問い合わせがあるまで説明していなかった。2月に事実関係を確認した上で遺族に経緯を説明し謝罪。和解協議の末、5千万円の支払いで合意した。同病院を運営する香川県は、21日開会の6月定例香川県議会に関係議案を提出する。

 松本院長は、早期に治療を行っていれば5年生存率は30~40%上昇していた可能性があったと説明。「病院のチェック体制が不十分だった。心からおわびを申し上げたい」と謝罪し、確認漏れをチェックする電子カルテシステムを改めるなど再発防止に徹底して取り組む考えを示した。

 香川県立病院では、過去10年間に100万円以上の損害賠償となった医療ミスは4件ある。」


◆ 感想

報道から,経過をまとめてみます.
患者は,平成20年2月に胸部のレントゲン検査を受け,同年8月に腹胸部のCT検査を受けた.いずれの画像でも,肺に異常陰影があった.
整形外科と産婦人科の担当医師はともに画像の確認を怠っていた.
平成21年6月に肺がんが発見され,入院治療を行ったが,22年10月に死亡した.

肺がんの種類にもよるのでしょうが,本件は,10月から1年4月の遅れがなければ,5年生存率は30~40%上昇していた可能性があった,として,5000万円で和解しています.

私も,肺がんの見逃し事件を担当していますので,参考にさせていただきます.

谷直樹
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by medical-law | 2012-06-15 20:49 | 医療事故・医療裁判