弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

甲府地裁平成24年10月2日判決,山梨赤十字病院内にあるリハビリ施設介護職員の自殺で因果関係肯定(報道)

読売新聞「日赤に7000万円賠償命令…介護職員自殺」(2012年10月3日)は,次のとおり報じています.

 「介護職員だった男性(当時43歳)が自殺したのは、勤務先の施設を運営する山梨赤十字病院(富士河口湖町船津)が注意義務を怠ったことが原因だとして、県内に住む男性の妻ら遺族が同病院を運営する日本赤十字社(東京都港区)を相手取り、約8895万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2日、甲府地裁であった。

 林正宏裁判長は「時間外労働の減少に向けた適切な指示をせずに漫然と放置していた」として病院側の責任を認定し、約6991万円を支払うよう命じた。

 判決によると、男性は2005年8月から、山梨赤十字病院内にあるリハビリ施設「あかまつ」に勤務していた。施設の責任者に就任したことに伴って業務量が増加し、07年4月頃からうつ病の症状が出始め、同月24日、施設内の浴室で首をつって自殺した。男性の自殺については09年12月、都留労働基準監督署が労災認定した。

 判決は男性の時間外労働について、自殺するまでの6か月間の1か月平均は99時間30分、自殺直前の1か月に限れば166時間を超えていたと認定。「施設の責任者に就任することで、男性の業務量は過重なものであった」とし、「業務と自殺に因果関係を認めることができる」と判断した。

 さらに、病院側はタイムカードで男性の勤務状況を把握できたにもかかわらず、タイムカードの確認をせず、「労働者の心身の健康に配慮し、適切な業務遂行をなし得るような十分な支援態勢を整える注意義務を怠った」と指摘した。

 遺族側は、男性の妻に対して約4447万円の支払いを求めていたが、判決は「遺族補償年金などを受給し、損害が補填(ほてん)されている」として約2544万円を支払うよう命じたため、支払い命令の総額は請求を下回った。

 山梨赤十字病院の今野述(のぶる)院長は「判決の中身を詳細に検討した上で今後の対応を考える」とのコメントを発表した。」


本来,人の生命と健康のためにある施設が,その職員の生命と健康に注意をはらわなかったのは,義務違反にあたり,予見可能性は肯定できるでしょうし,上記の時間外労働時間を考えれば,自殺と因果関係有りとの認定は適切と思います.
なお,遺族基礎年金,遺族厚生年金は,逸失利益に限って,損益相殺の対象になります.他の財産的損害,精神的損害との関係では控除できません(最高裁平成11年10月22日判決,判例時報1692巻50号).


【追記】

毎日新聞「山梨赤十字病院の職員自殺:過労認定 赤十字社が控訴 賠償命令判決に不服」(2012年10月18日)は,次のとおり報じました.

「山梨赤十字病院(富士河口湖町)の職員の男性(当時43歳)が自殺したのは過労によるうつ病が原因として日本赤十字社(東京)に約7000万円の賠償を命じた甲府地裁判決について、日本赤十字社は17日までに判決を不服として控訴した。

 控訴は16日付。甲府地裁は今月2日の判決で、男性が亡くなる前1カ月の時間外労働は166時間余りに上ると認定。病院側の対応を「心身の健康に配慮し、支援する注意義務を怠った」などと指摘していた。控訴について山梨赤十字病院は取材に「コメントを差し控える」とした。【片平知宏】」


【再追記】

NNN「梨赤十字病院の過労自殺訴訟が和解」(2013年4月26日) は,次のとおり報じました.

「富士河口湖町の病院で職員が自殺したのはうつ病が原因だとして、遺族が病院側に損害賠償を求めた裁判が26日、東京高裁で和解が成立した。
 裁判は山梨赤十字病院に勤務していた職員が2007年、病院内で自殺し、遺族が病院を運営する日本赤十字社を相手取りおよそ8900万円の損害賠償を求めていた。去年10月、甲府地裁は過労自殺と認め6990万円の支払いを命じたが、病院側が判決を不服として控訴していた。
 病院の今野述院長は「高裁の前向きな提案を受け入れた。ご冥福をお祈りしたい」とコメントしている。」



谷直樹

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by medical-law | 2012-10-03 20:19 | 医療事故・医療裁判