弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

宮崎県立日南病院,モルヒネの副作用管理が適切でなく,術後に低酸素脳症(報道)

共同通信「モルヒネ副作用で意識不明、宮崎 前立腺手術の男性」(2013年1月10日)は,次のとおり報じました.

 「宮崎県日南市の県立日南病院は10日、70代の男性患者=同県串間市=が前立腺切除手術後に心肺が停止し、低酸素脳症になる医療事故があったと発表した。男性は意識不明の状態が続いており、病院は手術中に痛み止めとして使ったモルヒネの副作用管理が適切でなかったのが原因として、家族に謝罪した。

 病院によると、男性は前立腺肥大症で昨年9月28日に入院。手術は10月1日に実施、成功した。しかし手術の4時間後に看護師が心肺停止状態となった男性を発見。強心剤の投与で呼吸や心拍は戻ったが、低酸素脳症になった。」


モルヒネは過量,急激な使用で呼吸抑制が生じることもあります.用法,用量,使用後(術後)の観察は,どのようなものだったのでしょうか.
なお,がん患者の疼痛管理のために使うのと,本件のように手術の際に使うのとでは,使用法が異なります.


【追記】

この病院では,これまで前立腺肥大症の手術は身体的負担が小さいと考え,患者にモニターを装着していなかったそうです.モニターを装着しないなんてふつう考え難いことです.監視義務違反にあたるのではないでしょうか.


【再追記】

西日本新聞「県立日南病院の医療事故 宮崎県3600万円支払いへ」 (2013年11月16日)は,次のとおり報じました.

「宮崎県は15日、県立日南病院(日南市)で昨年10月、同県串間市の当時70代の男性患者が前立腺の切除手術後に心肺停止となり、意識不明が続いている医療事故について、慰謝料として3600万円を支払うことで男性の法定代理人と合意したことを明らかにした。11月の定例県議会に関連議案を提出する。

 県によると、男性は術後に痛みを抑えるモルヒネの注射を受けた。約4時間半後に看護師が心肺停止に気付いたという。院内の事故調査委員会は心電図などのモニター機器の未設置が発見を遅らせたと結論づけ、病院側は謝罪していた。男性の治療費は賠償金とは別に病院側が今後も負担するという。」



谷直樹

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by medical-law | 2013-01-10 20:48 | 医療事故・医療裁判