弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

小児がん拠点病院の指定に関する検討会,小児がん拠点病院選定結果のまとめ

「小児がん拠点病院の指定に関する検討会」は,2013年1月31日,北海道大学病院,東北大学病院,埼玉県立小児医療センター,国立成育医療研究センター,東京都立小児総合医療センター,神奈川県立こども医療センター,名古屋大学医学部附属病院,三重大学医学部附属病院,京都大学医学部附属病院,京都府立医科大学附属病院,大阪府立母子保健総合医療センター,大阪市立総合医療センター,兵庫県立こども病院,広島大学病院,九州大学病院の15医療機関を「小児がん拠点病院」に選定しました.

同一の地域から複数の医療機関が選ばれている一方で,小児がん拠点病院が全く選定されていない地域もあります.
これは,「小児がん拠点病院の整備について」(平成24年9月7日健康局長通知)に基づき、小児がん拠点病院を募集し,申請があった37医療機関から,小児がん領域での総合力を重視し,多角的な視点で評価を行ない,平均点4点以上の医療機関を選定した結果です.

名古屋大学医学部附属病院,4.48
京都府立医科大学附属病院,4.44
九州大学病院,4.41
広島大学病院,4.30
兵庫県立こども病院, 4.29
国立成育医療研究センター,4.26
三重大学医学部附属病院, 4.23
埼玉県立小児医療センター,4.19
神奈川県立こども医療センター,4.18
大阪市立総合医療センター,4.16
東北大学病院,4.10
大阪府立母子保健総合医療センター,4.09
北海道大学病院,4.05
京都大学医学部附属病院 ,4.01
東京都立小児総合医療センター,4.01

評価まとめはコチラの末尾です.

今回はバランスのとれた総合力を重視した結果で,選ばれなかった医療機関の中にも特定の領域において突出した実績を持つ医療機関があります.こうした医療機関も,小児がん患者が適切な医療を受けられる医療提供体制を整備していくという観点で重要であり,拠点病院と連携し,小児がん診療のネットワークの一員として、大きな役割を担うことが期待される,としています.

「小児がん拠点病院の指定に関する検討会」は,2013年2月5日,「小児がん拠点病院選定結果のまとめ」を発表しました.

「Ⅳ 拠点病院を中心とした望ましい小児がん診療体制の構築について

平成24年6月に閣議決定したがん対策推進基本計画(以下「基本計画」という。)では、重点的に取り組むべき課題の一つとして、新たに小児がん対策が掲げられた。基本計画の中では、小児がん患者とその家族が安心して適切な医療や支援を受けられるような環境の整備を目指し、5年以内に拠点病院を整備し、小児がんの全国の中核的な機関の整備を開始することが目標に定められている。

小児がん拠点病院の必要性に至った背景には、小児がんの年間新規患者数が2000人から2500人と少ないにも関わらず、小児がんを扱う施設は約200程度と推定され、小児がん患者が必ずしも適切な医療を受けられていないと懸念されていることがあげられる。
こうした課題を踏まえた上で、小児がん拠点病院の整備について検討を行い、平成24年9月にとりまとめられた「小児がん医療・支援の提供体制のあり方について(報告書)」では、「小児がんは患者数も少ないことから、質の高い医療を提供するため、患者や家族の経済的・社会的な負担を軽減する対策(教育環境の整備、宿泊施設の整備等)も図りながら、一定程度の集約化を進めることが必要であり、これまで関連する学会の努力により小児がんを専門的に扱う医療機関に一定の集約化が進められている。一方、均てん化の観点から、患者が発育時期を可能な限り慣れ親しんだ地域に留まり、他の子どもたちと同じ生活・教育環境の中で医療や支援を受けられるような環境を整備する必要もある。」と記載されている。

今回、小児がん拠点病院の選定に当たっては、この「集約化」と「均てん化」のバランスをとりつつ、小児がん診療の総合力という観点から、申請のあった医療機関を評価し選定を行った。今後、これらの拠点病院を中心に日本の小児がん診療提供体制を構築することが期待される。

同時に、今回の選定作業を通じて、
① ブロック内の確実な連携の推進
② 特定の領域で突出した実績を有する医療機関の扱い
といった課題も明らかになった。

これらの課題に対しては、以下のような対応が考えられる。


<課題への対応>

① ブロック内の確実な連携の推進

今後、拠点病院が中心となって、ブロック内の小児がん医療機関の参加も得て、ブロック全体を見渡した確実な連携を推進するとともに、それを検証する仕組みが必要である。

このため、拠点病院に対しては、ブロックごとに小児がん診療提供体制について、特に診療連携と人材育成という観点から協議する場を設置し、小児がん診療提供体制に関する各医療機関の役割分担・連携のあり方、地域の小児がん診療の向上に向けた取組等を盛り込んだ計画(以下「計画」という。)を指定後6ヶ月後を目途に厚生労働省に提出することを提言する。とりわけ、ブロック内に複数の拠点病院が指定された地域では、各拠点病院の強みを活かし、ブロック全体として提供される医療の質が向上するよう、具体的な連携の姿を明確に示す必要がある。

なお、協議の場では、今回指定に至らなかった医療機関も含め、地域ブロック全体の小児がん診療を考える際に重要な役割を果たすと考えられる医療機関、及び地域ブロックを超えて連携が必要な医療機関等にも参加を求め、切れ目のない連携を進めることが必要である。

厚生労働省に対しては、指定1年後を目途に、有識者、患者・家族等、医療従事者等から構成される検討会を設置し、各ブロックの計画とその進捗状況を検証することを提言する。さらに、検証結果を踏まえ、必要に応じて指定された拠点病院に対して改善を要請するとともに、小児がん医療を充実させるべき地域が明らかになった場合には、新たな医療機関の追加指定も含めて検討することを提言する。

② 特定の領域で突出した実績をもつ医療機関の扱いについて

今回、拠点病院の選定にあたっては、小児がん領域における総合力を重視し、造血器腫瘍、固形腫瘍(脳・脊髄腫瘍を含む)の両領域でバランスのとれた実績を持ち、難治性・再発症例に対応できること、地域連携、緩和ケア、長期フォローアップ、相談支援、臨床研究、長期滞在施設等を重視して評価を行った。

 しかしながら、申請医療機関の中には、例えば、脳・脊髄腫瘍の実績の多い埼玉医科大学国際医療センター、網膜芽腫の実績の多い国立がん研究センター中央病院、ハプロ移植の実績の多い福島県立医科大学附属病院など、特定の領域において突出した実績を持つ医療機関があった。こうした医療機関も、小児がん患者が適切な医療を受けられる医療提供体制を整備していくという観点で重要であり、拠点病院と連携し、小児がん診療のネットワークの一員として、大きな役割を担うことが期待される。

こうしたことから、厚生労働省に対しては、指定1年後を目途に拠点病院を検証する際、こうした特定の領域に優れた実績を持つ医療機関についても、小児がん医療提供体制の中でどのように位置づけるべきか検討することを提言する。

拠点病院の選定は小児がん対策の第1歩であり、拠点病院を中心とした地域全体の小児がん医療・支援の向上のためには、今後の検証と改善が重要であることは言うまでもない。

また、小児がん医療は拠点病院で完結することはなく、今回指定に至らなかった医療機関、申請を見合わせた医療機関等、拠点病院以外の医療機関も小児がん医療及び支援の充実には不可欠であり、これらの医療機関の協力を得ることも重要である。

厚生労働省においては、拠点病院の指定後も、1年後を目途に、有識者、患者・家族等、医療従事者等から構成される検討会を設置し、各拠点病院から提出された計画及び実施報告をもとに、各拠点病院の取組・実績等の把握や評価、拠点病院の抱える課題の抽出を行い、課題への対応案を検討していくことが求められる。
さらに、均てん化と集約化のバランスをとりつつ、新たな医療機関の追加指定や特定の領域に実績を持つ医療機関についても全国の小児がん医療提供体制の中で果たすべき役割を検討する必要がある。また、必要に応じて、拠点病院の指定要件の見直しも検討すべきである。

将来的には、平成25年度に整備が予定されている小児がんの中核的な機関を中心とし、全国の小児がん患者が、全人的な質の高い小児がん医療及び支援を受けることができる体制を確保することが必要であり、小児がん医療提供体制の先駆的な取組を参考として、他の希少がん対策にも反映していくことが期待される。」



谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2013-02-06 04:53 | 医療