弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

セラビ助産院の助産師.秦野赤十字病院の小児科医を業務上過失傷害の疑いで書類送検(報道)

TBS「新生児治療で指欠損、助産師・医師ら書類送検」(2013年2月7日)は,次のとおり伝えました.

「3年前、神奈川県で低体温症になった赤ちゃんが治療中にやけどを負い、足の指3本を失うという事故が起きました。事故の責任はどこにあるのでしょうか。神奈川県警は7日、助産師1人と小児科医2人を書類送検しました。

 去年5月。家族に囲まれ、ろうそくを吹き消す北風晶彦ちゃん。この日、2歳の誕生日を迎えました。元気に遊ぶ晶彦ちゃんですが、足の指3本がありません。生まれた直後に低体温症に陥り、救命医療の過程で重度のやけどを負ったためです。

 3年前のあの日、晶彦ちゃんは4つの病院を転々とし、生死をさまよいました。2010年5月28日。当初、宗彦さんは助産院での出産を希望していました。しかし・・・

 「助産師に『今、陣痛が来ている』と報告し、 そのつど『まだ大丈夫、まだ大丈夫』と言われ、ようやく助産師が午前5時半ごろに到着したころにはもう産まれそうっていう状況になり、急きょ、自宅で出産するということになってしまいました」(父親 北風宗彦さん)

 出産自体は3時間ほどで終わり、安産だったものの、助産師に取り上げられた晶彦ちゃんの呼吸は弱く、泣き声もかすかに聞こえる程度だったといいます。

 容態の悪かった晶彦ちゃんが最初の診療所に運ばれたのは出産から1時間23分後。移動手段は助産師の車でした。

 「赤ちゃんの症状としては呼吸困難。NICU(新生児集中治療室)で入院させて治療しないといけない」(最初に運ばれた診療所 浅野クリニック 浅野充也医師)

 NICUでの入院治療が必要と判断された晶彦ちゃんは、2つ目の病院となる「秦野赤十字病院」へ搬送。しかし、移動は救急車ではなく、助産師の車が使われました。病院に到着した時には出産から2時間以上が経過していました。付き添った宗彦さんによると、医師はこう声を荒げたといいます。

 「赤ちゃんが冷たすぎる。今まで何をやっていたんですか」

 晶彦ちゃんの身体の温度は34.7度まで低下し、「低体温症」などと診断され、身体を温める処置が施されました。病院側の説明によれば、保育器に入れられた晶彦ちゃんの周りに温かいタオルや枕などを置き、保育器内の上部にドライヤーで温風を送ったということです。身体の温度は上がったものの、呼吸の状態は悪く、晶彦ちゃんはさらに設備が整った別の病院に救急車で搬送されることに。この3つ目の病院で、父親の宗彦さんは衝撃の事実を知らされました。

 「やけどがひどい。これは何ですか」(医師)

 「まさか、やけどがあるなんてことはみじんも思いもしないです」(父親 北風宗彦さん)

 大きく水泡ができた晶彦ちゃんの足の皮は破れ、黄色い液体が漏れ出していました。重度のやけどと診断された晶彦ちゃんは「熱傷センター」のある4つ目の病院に運ばれ、そのまま入院。生後間もなく3本の足の指を失った晶彦ちゃん。それから1年5か月・・・晶彦ちゃんは自分の足で歩きました。

 助産師は宗彦さんに「適切な処置だった」と説明。秦野赤十字病院もドライヤーを使ったことは認めたものの、「医療行為でやけどが生じたとは考えにくく、やけどの原因は特定できなかった」としました。このままでは真実は明らかにならないと考えた宗彦さんは、神奈川県警に対し助産師らを刑事告訴しました。

 「もし、助産師が本当に正確なマー君の状況を伝えていれば(よかった)。(助産師が)低体温のことを伝えなかったこととか、そこが問題の本質だと思う」(父親 北風宗彦さん)

 それから2年半、7日、1つの局面を迎えました。神奈川県警が助産師と秦野赤十字病院の小児科医2人を業務上過失傷害の疑いで書類送検しました。県警は、小児科医2人については「ドライヤーで温めていなければ、もっと重篤になった可能性がある」として過失は不十分だと認めています。しかし、助産師については、晶彦ちゃんが呼吸不全に陥っていたにもかかわらず、救急車を呼ばずに自家用車で診療所に運ぶなど、産後の処置を誤ったことで、低体温症の原因を作ったと判断しました。

 「本当に今日は1つの節目だと思う。マー君にも帰ったらすぐに報告してあげたい」(父親 北風宗彦さん)

 宗彦さんは「きょうの書類送検は一つの節目だが、今後も事故の責任を明らかにしていきたい」と話しています。」


NHK「新生児事故 助産師ら3人書類送検」(2013年2月7日)は次のとおり伝えました.

「3年前、神奈川県二宮町で、自宅で産まれた男の子が低体温症になったうえ、病院で治療を受けた際に足に重いやけどを負って指を切断する事故があり、警察は、立ち会った助産師の対応の遅れなどが事故につながったとして、助産師ら3人を業務上過失傷害の疑いで書類送検しました。

書類送検されたのは、二宮町の「セラビ助産院」の66歳の助産師と、神奈川県秦野市の「秦野赤十字病院」に勤務していたいずれも30代の医師2人の合わせて3人です。
警察の調べによりますと、この助産師は、平成22年5月、二宮町で自宅出産に立ち会った際、産まれた男の子が呼吸障害だったのにすぐに救急車を呼ばないなど対応が遅れたことが低体温症につながった疑いがあるということです。
男の子は、その後、一命を取りとめましたが、秦野赤十字病院で治療に当たった2人の医師が、男の子を保育器に入れ、ドライヤーを上に向けて熱した風を送り続けた際、保育器の壁を伝わった風が足に当たり続けたために重いやけどを負って、足の指3本の切断につながった疑いがあるということです。
このため警察は7日、3人を業務上過失傷害の疑いで書類送検しました。
これまでの調べに対して、助産師は「自分で何とかなると思った」、2人の医師は「救命措置を最優先し、やむをえなかった」と話しているということです。
助産院“コメントできない”
神奈川県二宮町の「セラビ助産院」は「事実関係を確認中なので、コメントできない」と話しています。
また神奈川県秦野市の「秦野赤十字病院」は「現時点では警察から詳しい説明を受けていないので、コメントを差し控えたい」と話しています。」



テレビ朝日「ドライヤーで新生児の指を“欠損”助産師ら書類送検」(2013年2月7日)は次のとおり伝えました.

「神奈川県二宮町で、生まれたばかりの赤ちゃんの処置を誤り、足の指3本を失わせたなどとして助産師の女ら3人が書類送検されました。

二宮町のセラビ助産院の助産師の女(66)は2010年5月、北風宗彦さん(36)の長男(2)が生まれた際、呼吸障害があったにもかかわらず、NICUに搬送するなどの適切な処置をせずに、低体温症を発症させた疑いが持たれています。その後、搬送された秦野赤十字病院で、医師の女(37)と男(30)が長男にドライヤーの熱風を直接当てて重いやけどをさせ、両足の指3本を失わせた疑いが持たれています。取り調べに対し、助産師の女は「何とかなると思った」と容疑を認めています。」


MSN産経「男児大やけど 助産師のずさんな対応に振り回された家族」(2013年2月7日)は。次のとおり報じました.

 「動けないほどの陣痛になるまで自宅待機させられ、呼吸障害のあった男児がようやく運ばれた医療機関は救急対応できない近所の診療所…。神奈川県二宮町で自宅分娩(ぶんべん)の男児が低体温症などに陥り、助産師(66)が業務上過失傷害容疑で7日に書類送検された事件。助産師の初期対応のずさんさは際立っており、男児の父親(36)は「命を預かる助産師として対応能力に問題があったのは明らか」と訴えている。

 ■想定外の自宅出産 父親によると、「自然なお産」に興味を持っていた母親は、予定日2カ月前の平成22年4月、助産師が運営する助産院での出産を決めた。5月27日午前3時ごろに陣痛が始まり、同日夜に助産院で受診したが、「あと1日かかる」と診断されていったん帰宅した。

 しかし、28日午前5時、母親は動くことができなくなり、助産師が自宅を訪れた後の午前8時12分に出産。想定外の自宅分娩となった。男児はほとんど産声を上げず、背中をさすっても反応はほとんどなかった。心配する父親に助産師は「大丈夫、大丈夫」と答え、チューブで酸素吸入を続けた。不安を感じながらも両親は助産師の言葉を信じたという。

 ■「赤ちゃんが冷たい」

 医療法は緊急事態に備えて助産院に医療行為を嘱託する医療機関を確保するよう求めており、この助産院でも町に隣接する市立病院と契約を結んでいた。「小児科医に診せる」。出産から約1時半後、助産師は父親にこう告げ、男児を自家用車に乗せた。しかし、搬送先はなぜか近くの小児科診療所だった。医師は呼吸障害があると診断、男児は総合病院に運ばれた。

 「赤ちゃんが冷たい、今まで何をしていたんですか!」。肌着とバスタオルにくるまれ、顔面蒼白(そうはく)の男児を一目見た総合病院の医師はこう叫んだ。男児は胎内で低酸素状態となり、その影響で排便。汚れた羊水を肺に吸い込んだため、呼吸不全と低体温になったと診断された。総合病院で羊水の吸引や体温を上げるためのドライヤーによる加温の緊急処置を受けた男児は28日午後、人工呼吸設備の整った市立病院に救急搬送された。

 ■3本の指を切断

 父親は転院先の市立病院でわが子にふりかかるさらなる不幸を知った。ドライヤーによる加温で、男児が両足に大やけどを負っていたからだ。結局、6月には壊死(えし)した右足の指2本と左足の指1本を切断せざるを得なかった。

 助産師のずさんな対応は今回の事件以前から際立っていた。助産師から「近くの病院で診てもらって」と電話越しに言われた女性は救急車内での出産を余儀なくされ、別の女性は助産院で出産後に出血が止まらなかったにもかかわらず搬送まで約2時間を要して出血量が3リットルに及んだという。

 県助産師会の関係者は「まじめに取り組む助産師が大多数。このような無責任な対応をされると助産師全体の評価が下がってしまう」と懸念している。」


神奈川新聞「二宮・新生児医療ミス:女性助産師、嘱託医らと連絡取らず」(2013年2月8日)は次のとおり報じました.
 
「県警によると、助産師としてのキャリアは40年以上。「やることはやったと思っている。判断が間違ったとは思わない」。業務上過失傷害の疑いで書類送検された女性助産師は7日、神奈川新聞社の取材に対し、そう強調した。

 医療法は、医療行為ができない助産所の開設者に対し、産婦人科医の嘱託医と、救急対応可能な医療機関を定めるよう義務付けている。この助産師は今回、どちらにも頼らず、自身の車でこうした医療機関ではない診療所や総合病院に運んだため、治療が遅れた、とされる。

 この初期対応について、県内のあるベテラン女性助産師は「救急車を呼び、連携先の病院に搬送すべきだった」と疑問を投げ掛ける。「助産師も、搬送された側の医師も最善を尽くそうとしたのだろうが、結果的に二重三重に後手に回った」とも。

 このベテラン助産師は、安全なお産のため、平時から嘱託医や緊急時の協力医療機関と意思疎通を図っているという。だが「地域や個人によって、意識に温度差があるのが現状。十分な関係が築けていない場合もある」と指摘する。

 県助産師会は今回の事故を受け、書類送検された助産師を除名にしたといい、「コメントする立場にない」としている。」



読売新聞「出生男児の救急搬送、なぜ遅れた…低体温症に」(2013年2月8日)は,次のとおり報じました.

「二宮町で2010年、自宅で生まれた男児を病院にすぐ搬送せず、低体温症にさせたとして、同町の女性助産師(66)が7日、業務上過失傷害容疑で書類送検された事件。男児は病院で低体温症の応急処置を受けた際、やけどを負って足の指3本の切断を余儀なくされた。「すぐに救急搬送されていれば……」。そう悔やむ男児の父親は、今回の事件が多くの医療関係者の教訓になることを願っている。(竹内駿平)

◆助産師を書類送検

 県警などによると、男児は同年5月28日朝、自宅分娩(ぶんべん)で出生。その際、胎便を含んだ羊水を吸い込むことで呼吸障害を引き起こす「胎便吸引症候群」に陥った。

 助産師は異常分娩の場合、産科・産婦人科や小児科があり、入院設備も備えている提携先の医療機関に乳児を搬送することになっている。しかし、この助産師は提携先の小田原市の病院に男児を運ばず、自家用車で同町の診療所に搬送。診療所から「対応できない」と回答されると、秦野市内の病院に搬送した。この時すでに、出産から約2時間20分がたっていた。

 男児は病院で低体温症と診断され、女性医師(37)は体温を上げるため、男児を入れた保育器内をドライヤーで暖めるよう男性研修医(30)に指示。研修医らは男児にタオルを巻き、直接温風が当たらないよう注意したが、温風が容器内を対流し、体温を測るために露出していた足などにやけどを負った。

 男児はこの処置で一命を取り留めたが、最終的に搬送された横浜市内の病院で翌6月、右足の薬指と小指、左足の小指の計3本の欠損が確認された。

 男児の両親が助産師の対応について大磯署に被害を申告し、医師2人についても秦野署に刑事告訴したため、県警は捜査を開始。助産師は助産師歴40年以上のベテランで、調べに対し、「何とかなると思った」と供述し、容疑を認めているという。

 一方、医師2人は「命を救うためにやむを得ず行った」と話しており、県警は「これほど重度のやけどを負うことは通常、予見できず、刑事責任を問うのは困難」と判断した。

 医師の対応について、小児救急医療に詳しい元長野県立こども病院副院長の田中哲郎氏は「ドライヤーを用いた点は検討すべき余地があり、湯たんぽを保育器に入れて容器全体を温めるなど、他の方法もあった」と前置きした上で、「原因は助産師にあり、病院側の措置に悪意はない。一命を取り留めた点は評価すべきだ」と指摘する。

 男児は現在2歳。父親(36)によると、低体温症による後遺症は確認されず、元気に外を走り回れるほどにまで回復しているという。

 父親はこの日、「命を救ってくれた医師には感謝しているが、息子が生まれた日、もしすぐに救急搬送されていればという思いは拭い切れない」と複雑な胸中を語った。」



一般に医療者の刑事責任を問うことには反対論も強いのですが,本件の助産師の場合,刑事責任を問われてもやむを得ないのではないか,と思います.小児科医はおそらく不起訴でしょう.
検察の判断に注目したいと思います.


【追記】

公益社団法人日本助産師会は,平成25 年3 月1 日,「神奈川県の助産師が書類送検された件に関する日本産師会の見解」を発表しました.

「日本助産師会(以下本会)は神奈川県助産師が書類送検された件について専門家集団としての責任から以下の対応をしてまいりましたのでご説明させていただきます。

1 当該助産師に対する本会の対応について

当該助産師の助産業務につき、安全上の問題があり助産業務を継続することが適切ではないと判断し指導を行って参りましたが、当該助産師に積極的な改善対応が認められませんでした。そのため、分娩を取り扱う業務の停止と研修を勧告しましたが、この勧告は受け入れられないとの回答がありました。
以上の経緯により総会に於いて除名処分と致しました。

2 除名に関する公表について

除名については会員用ホームページに掲載し、公表しております。

3 当該助産業務の継続について

当該助産師の助産業務の継続は様々な問題を抱えていると判断し、助産業務の停止の勧告をしたことは上記のとおりですが、本会は強制加入の職能団体ではないため助産所の開業を停止させる権限はなく、当該助産師は本会を除名されましたが、残念ながら助産業務を継続するに至っております。

4 取材対応を控えさせて頂いている理由について

当該助産師は既に書類送検され、司法手続に入っているため、コメントを控えさせて頂いております。」


谷直樹

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by medical-law | 2013-02-08 10:07 | 医療事故・医療裁判