弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

水俣病裁判,国は裁判に勝つためなら偽証も強要するのか

熊本日々新聞「「棄却妥当と証言を」 水俣病診断医師に環境省」(2013年2月26日)は,次のとおり報じました.

「水俣病関西訴訟の最高裁判決で被害を認められた大阪府豊中市の女性(87)が熊本県に患者認定を求めた訴訟の控訴審で、環境省が、女性を水俣病と診断した医師の意見書の証拠提出を見送り、さらに証人として「(棄却処分とした)認定審査時の判断は妥当だった」と証言するように求めていたことが、26日分かった。

 女性は最高裁判決後も認定申請を棄却されたため、2007年に提訴。12年4月、控訴審で逆転敗訴し上告した。女性の弁護団は26日、医師の意見書を最高裁に提出し、「フェアではない」と同省の対応を批判している。

 環境省は訴訟当事者ではないが、水俣病認定が法定受託事務であることなどから訴訟に参加している。

 弁護団によると、証言を求められたのは新潟水俣病の臨床経験があり、順天堂大客員教授などを務める佐藤猛医師(80)=神経内科。大阪高裁で係争中の11年6月、環境省から証人出廷を要請された佐藤医師は、過去の検診記録などから女性を水俣病と診断した意見書を作成。これに対し、同省は「認定審査会の判定は妥当だったと証言してほしい」と求めたが、佐藤医師は「1回目の認定申請(1973年)に関する審査会から終始、水俣病と診断するのは可能」と拒否したという。

 佐藤医師は、3月15日に最高裁の口頭弁論があるのを知って弁護団に接触。「患者の病気の苦しみに同情を禁じ得ず、裁判の判定にも納得できなかった」と説明したという。

 環境省特殊疾病対策室は「係争中で個別の内容についてはコメントできないが、少なくとも虚偽の証言をするよう要請した事実はない」と話している。
(石貫謹也、渡辺哲也)」


読売新聞「「国側有利な証言 医師に依頼」認定訴訟で弁護団指摘」(2013年2月27日 )は,次のとおり報じました.

「熊本県が水俣病の患者と認定しなかったのは不当として、大阪府豊中市の女性(87)が患者認定を求めている訴訟で、女性の弁護団は26日、来月15日の上告審弁論を前に記者会見を開き、環境省が控訴審で証人として出廷を依頼した医師に対し、本人の見解と異なる証言をするよう繰り返し働きかけたと指摘、医師名で経緯を説明する書類を最高裁に提出したと発表した。

 弁護団によると、同省の担当官が2011年6月、国立国際医療研究センター(当時は国立精神・神経センター)国府台病院の佐藤猛元院長(80)に女性の症状に関する意見書を作成し、県側証人として出廷するよう依頼。カルテなどから佐藤氏が「女性は水俣病」と診断すると「当時の知見では水俣病ではないとの判断は妥当だったと証言してほしい」と繰り返し要請したという。

 佐藤氏が拒否すると、証人の話はなくなり、県側は別の医師の意見書を同高裁に提出。昨年4月の控訴審判決で女性が敗訴したことを知り、納得できなかった佐藤氏から、今年1月、弁護団に情報提供があったという。」


環境省が,医師に虚偽の証言をさせようとするのも問題ですが,国の代理人は,そのような活動を制止しなければいけないと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2013-02-28 00:55 | 医療事故・医療裁判