弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

弁護士久保井摂氏,Advanced Directives(事前指示書,事前指定書)について語る

西日本新聞に,「NPO法人患者の権利オンブズマン」(福岡市)理事長の弁護士久保井摂氏(九州合同法律事務所所属)のインタビュー記事が載っていました.

Advanced Directives(事前指示書,事前指定書)がテーマです.

終末期医療の希望明記 事前指示書の有効性は? 法的効力ないが重要な判断材料」(2013年03月15日)です.

「-事前指示書に法的効力はあるのか。
 
ない。事前指示書は「自分が意思表明できなくなったときに、どんな医療行為を受けたいか、あるいは、受けたくないか」を明確にしておくための文書だが、それを有効にしてくれる法律がないのだ。従って担当医に文面通りの医療行為をさせたり、させなかったりする強制力はない。

 -法整備は難しいのか。
 
そうだ。というのは、例えば、かなりの高齢の人が回復の見込みがほとんどなさそうな状態であっても、その人に治療を提供することが「無駄な延命治療」と断定するのは難しいからだ。治療が回復につながる可能性を完全に排除することはできない。そうした現実を法律でルール化することは難しい。

 そもそも日本には「患者の権利」そのものを定めた法律さえない。そういう状況で「終末期における権利」だけを規定するのは適切でないとの指摘もある。

 -では事前指示書は何の役にも立たないのか。

そんなことはない。本人が意思表明ができなくなっている場合にどんな医療行為をするのか、あるいは、しないのかを家族や医療機関が判断する重要な材料となる。

 -終末期に適切な医療行為を受けられるようにするために、アドバイスをお願いしたい。

法律家として助言するのは難しい。ただ「積極的に治療をしてほしい場合」「治療をしてほしくない場合」など、いろいろなケースを想定して、終末期の医療への自分の考えを深めていくことは欠かせない。

 その上で、家族など周囲の人たちとの関係性をしっかり築き、自分がどのように死を迎えたいかを理解してもらって、自分の意思を代弁してくれる状況を作り上げておくことは有効だと考えられる。

    ◇   ◇

 「患者の権利オンブズマン」は、理事長だった池永満弁護士が昨年12月に死去したのを受け、2月10日に臨時会員総会を開き、副理事長だった久保井弁護士を新理事長に選任した。 」


患者の自己決定権が尊重されることから,患者の治療拒否権も認められます.
そこで,患者に意思決定能力が失われた場合が問題になります.
日本では,患者に意思決定能力が失われた場合,家族が代わって判断することが多いようですが,その法的根拠は必ずしも明らかではありません.

患者の自己決定権を尊重するために,将来自己決定ができない状態になった場合に備えて,自分の希望をあらかじめ書面に残すことがあります.この書面が,Advanced Directives(事前指示書,事前指定書)です.
指示の方法には,Living-WillとDurable Power of Attorney(持続的代理権授与)の2つがあります.
Living-Willは,自分の希望,意思を書いておく方法ですが,将来自分がどのような状況になるのか具体的に想定するのは困難ですから,具体的な状況に応じたきめ細かな指示は困難です.
Durable Power of Attorneyは,代理人の判断が真に患者本人の意思にそうものか,難しい問題があります.
ただ,今の日本の状況は,Advanced Directives(事前指示書,事前指定書)前の法的整備が必要な段階のように思います.


谷直樹

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by medical-law | 2013-03-16 00:39 | 医療