弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

肺がん検診での見過ごし,原因究明・事故調査委設置を求める遺族と不要とする千葉市(報道)

msn産経「肺がん見過ごし女性死亡 遺族「原因究明して」 千葉市「再発防止策講じている」(2013.4.25)は,次のとおり報じました.
 
「千葉市が実施する肺がん検診で、委託先の医療機関が肺がんの所見を見過ごしたため、平成19年に市内の女性=当時(59)=が死亡した問題。25日に同市内で会見に応じた女性の夫(67)は、「なぜミスが起こったのか、市は原因を究明すべきだ」と訴え、事故調査特別委員会を設置しない市の対応に憤りをあらわにした。一方、市は「県警の捜査などで設置は難しかった」と釈明し、現在は再発防止策を講じているとした。

 遺族によると、女性が17年と18年に委託先の医療機関で検診を受けた際、「異常なし」と診断を受けた。しかし女性の死亡後、医療機関に開示請求した18年のカルテには「右肺の陰影が昨年より大きい」という記載があったという。

 夫は「どちらかの検診でがんを見つけることができたのでは」として医療機関を相手取り、裁判外紛争解決手続(ADR)を起こすとともに、実施主体の市に対しては事故原因の究明を求めて事故調査委の設置を要望した。

 肺がんの見過ごしを認めた医療機関とは22年に和解が成立したが、市は事故調査委を設置しなかった。
市によると、当初は事故調査委の設置を検討したものの、県警が業務上過失致死容疑で捜査に乗り出したため、検討を中断。その後、県警が立件を見送ったことで、市側は「見過ごしという原因究明がされており、再発防止策を講じているため設置の必要はない」と判断したという。

 一方、女性の夫は「市の再発防止策は具体性に欠ける。妻の死を価値あるものにするためにも、きちんとした対策をしてほしい」と訴えている。」


日本経済新聞「がん兆候見落とし女性死亡 千葉市健診、和解金払う」(2013年4月25日)は,次のとおり報じました.
 
「千葉市が医療機関に委託して実施した健康診断で、担当医が肺がんの兆候を見落としたため治療が遅れ、市内の女性(当時59)が2007年に死亡していたことが25日、市などへの取材で分かった。医療機関側はミスを認め、遺族に和解金として約1200万円を既に支払ったという。

 市と遺族によると、女性は05年6月と06年6月、市内の医療機関で胸のエックス線検査を受診。いずれも肺に影がみられたが「異常なし」と判断された。女性はその後、体の不調を訴え、別の医療機関で検査したところ末期の肺がんと診断され、07年11月に死亡した。

 医療機関側は「陰影は把握していたが、近く乳がんの検査もあると聞いていたので通知しなかった」と釈明したという。〔共同〕」


損害賠償金を支払えばよいというものではなく,医療機関側は「陰影は把握していたが、近く乳がんの検査もあると聞いていたので通知しなかった」と釈明したことが事実であれば,なぜそのような釈明を行ったのかを究明すべきですし,また,原因が見落としにあることが判明したからよいというものではなく,その見落としの原因を究明することが実効的具体的な再発防止策のためにも必要と思います.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2013-04-26 05:12 | 医療事故・医療裁判