弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

新出生前診断申込みとダウン症知見の現状

神奈川新聞「出生前診断申し込み、1週間で100組超 市大付属病院」(2013年5月11日)は,次のとおり報じました.

 「4月に臨床研究として始まった妊婦の血液を使った新しい出生前診断。わずか1カ月で約440人もが受診した。赤ちゃんの先天異常に不安を募らせる妊婦。検査後も悩みは尽きない。新しい検査にどう向き合うか。納得がいく判断を導く正確な情報提供と、夫婦の決断を支える仕組みづくりが課題だ。

 県内で唯一、新たな出生前診断を実施している横浜市立大付属病院(横浜市金沢区)では、4月末までの1カ月間で69人の妊婦が採血検査を受けた。開始後1週間で100組を超す申し込みがあり、遺伝カウンセリングを受けた多くの夫婦が採血検査に進んでいた。実施している全国の15施設のうち、国立成育医療研究センター(75人)=東京都=、名古屋市立大病院(72人)に次ぐ人数だった。

 横浜市大付属病院で検査を受ける場合、検査対象は▽出産予定日に35歳以上▽ダウン症児などの妊娠・出産経験者▽胎児がダウン症などの可能性が高い-のいずれかに該当することが条件。かかりつけ産科医の紹介状は必要ないが、同病院のホームページに掲載されている説明文を読み、検査への理解を深めた上で申し込む。費用は約21万円。

 ほぼ毎日実施されている遺伝カウンセリングでは、複数の専門医が染色体異常に関する知識や検査で明らかになる内容、検査結果に向き合う心構えなどについて説明。カウンセリングを踏まえて採血検査を実施するか決める仕組みだが、採血検査の受診者数は、さまざまなリスクのある羊水検査に比べて多いという。

 産婦人科の遺伝専門医でもある平原史樹病院長は「技術は進歩しているが、慎重に判断した上で受診してほしい」と強調している。」


21万円でも,これだけの申込みがあるのですね.

ちなみに,米サンフォード・バーナム医学研究所のXin Wang氏らの研究(「Nature Medicine」4月号(2013; 19: 473-480))により,ダウン症の機序がわかってきましたので,いずれ治療法が開発されるかもしれません.
Xin Wang氏らは,21番染色体を1本多く持つことで,miR-155というマイクロRNAが正常よりも多く発現し,miR-155が「CCAAT/エンハンサー結合タンパク質β(C/EBPβ)」を介してSNX27遺伝子の発現を低下させる,と報告しました.
そして,SNX27タンパク質の発現が低下すると,リサイクル回路の機能が低下し,グルタミン酸受容体が不足し,神経機能の低下が起こることになります.

検査技術は進歩したが,治療法が未だ開発されていないという現状をできるだけ早く克服していただきたいです.

健康百科「ダウン症が“治せる病気”に? 発症メカニズムを解明」(2013年5月8日)ご参照


【追記】

読売新聞「新型出生前診断で「陽性」…実は陰性のケースも」(2013年5月16日)は,次のとおり報じました.

「妊婦の採血で胎児に染色体の病気があるかを高い精度で調べる新型出生前診断で、実際に異常はなかったのに陽性と判定されたケースが出たことがわかった。

 異常の有無を確定できる羊水検査では陰性だったことが15日、妊婦に伝えられた。新型出生前診断が4月に臨床研究として始まってから初のケース。実施施設の医師は「高精度でも確実ではない。慎重な対応が必要なことが裏付けられた」としている。

 検査を受けたのは、関東地方に住む40歳代の妊婦。4月上旬、昭和大病院(東京都)で受けた。その結果、検査が対象とする三つの病気の一つで、18番染色体が3本あり、心臓などに重い障害の出る18トリソミーについて、「陽性」と判定された。」


新出生前診断でも,当初のふれこみほどの精度はないようです.

谷直樹

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by medical-law | 2013-05-13 01:41 | 医療