弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

1審裁判官の誘導を指摘した高裁判決

日刊ゲンダイ「東大准教授はいかにして痴漢「逆転無罪」を勝ち取ったのか」(2013年7月26日)は,次のとおり報じました.

「裁判官によってなし崩し的に有罪にされた被告が2審で逆転無罪に――。痴漢事件でこんな画期的な判決が下って注目を浴びている。

 無罪を勝ち取ったのは46歳の東大准教授。2010年9月、JR総武線の車内で30代のOLの尻を触ったとして逮捕、起訴された。昨年8月、東京地裁で罰金40万円の有罪判決を言い渡された。これが25日の2審判決で無罪になったのだ。

 今回の判決のポイントは1審の判決を疑い、「(女性の証言は)1審の裁判官が誘導した」「被害女性の証言は信用できず、被告が犯人であるとの証明はない」と断じたことだ。

 1審で被害女性は当初、「犯人の手をつかみ、振り向いて顔を確認すると被告だった」と主張。

 ところが裁判の過程で「つかんだ指から……」となり、その指が准教授であることがなぜ分かったかが曖昧になった。

 結局、「(その指から)腕が伸びて肩までつながっているが……」という言い方に変わったのだが、2審の裁判長はその変遷を疑問視し、裁判官の誘導があったと見なしたのだ。

 被告の主任弁護士を務めた宮村啓太氏があらためてこう言う。
「重要なのは被害女性が当初、指から肩までのつながりを確認したとは言ってなかったことです。ところが裁判官に言葉巧みに誘導されて、指と肩がつながっていたという証言に変わり、被告を有罪にしてしまった。今回の無罪判決の決め手は、証言に対する裁判長の評価が違ったこと。私たちは戦術を変えたわけではありません。1審と同じように女性の言い分が曖昧だと主張し、その主張が認められたのです。被告が警察、検察の取り調べで一貫して無実を主張したことも功を奏しました」

 痴漢の裁判なんて面倒くさいのか、検察だけでなく、裁判官までが被害者の証言を誘導、被告を有罪に陥れようとしたとは恐ろしい話である。

 准教授に問い合わせたところ、「検察が上告するかもしれないので、コメントは差し控えさせてください」との答えだったが、事件の教訓は一にも二にも無実であれば絶対にメゲず、それを叫び続けることだ。」


弁護人はあさひ法律事務所の宮村啓太先生だったんですね.
中田久美監督が「私ができるのはブレないことだけ」と述べたことと相通じるものを感じました.


谷直樹

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by medical-law | 2013-07-27 03:56 | 司法