弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

対論・出産事故補償

すこし前になりますが、読売新聞に勝村久司さんと白川修二さんの対談が掲載されていました.

対論・出産事故補償(1)制度見直し論議スタート(2013年8月22日)

勝村 「産科医療補償制度は、医療裁判が多い産科の医師を守ろうという目的で創設された経緯があり、僕は当初、事故の被害者のためというより医師のためという制度に強い違和感を抱いていました。しかし、約5年たってみて、この制度を評価しています。これまでの医療界にはなかった第三者による事故の原因分析と再発防止という機能が、初めて実現したからです。今年に入って創設が決まった医療事故調査制度のモデルとなるものだと思います」

 「見直しについては、現在、対象となる脳性まひの子どもを妊娠週数や出生体重で十分な根拠なく限定していますが、剰余金があるなら、その範囲をもっと広げるべきだと思っています。制度の準備段階では、もっと緩やかな条件も検討されていました。しかし、脳性まひの発症状況について十分なデータがない中での制度設計だったこともあり、まずは少なめにして、5年様子を見た上で見直すという話だったはずです。それが実行されるのを期待しています」


対論・出産事故補償(2)補償範囲 厳し過ぎる線引き(2013年8月22日)

勝村 「その前にまず、現状の脳性まひの子どもの妊娠週数や出生体重の線引きが厳し過ぎるので、その問題を解決してほしいと思います。5年後に見直すと当初から言っていたのですから、それをきちんと実行してからでないと、患者やその家族の立場を軽視した議論になってしまうのではないでしょうか」

 「産科医療補償制度で初めて実現した、第三者による原因分析や再発防止の機能は、医療事故調査制度のモデルとして、産科以外の分野にも広がってほしいと思います。ただし、産科医療補償制度の今回の見直しという範囲においては、脳性まひの子どもについてもっと対象を広げてほしいというのが私の考えです。原因分析や再発防止をきちんとやっていけば、脳性まひの子どもも現状より減らすことができるはずです」


対論・出産事故補償(3)なぜ健康保険でカバーするのか(2013年8月22日)

白川 「確かに、健康保険という公的保険の中で補償金を出すというのは前代未聞なわけです。とはいえ、日本の医療の助けにもなる制度がせっかくできたわけですから、すぐにやめろというような意見は私たちも持っていません。原因究明とか再発防止に生かすために、中身を充実するというか、うまく活用していくことは大事だと思っています」「厚労省もようやく重い腰を上げ、医療事故調査制度みたいなものについて、第三者を入れた形で作ろうということになってきました。これはいいことだと思いますけど、相当遅いというのは私も感じています。産科医療補償制度について言えば、本来は産科医自身が保険料を負担すべき内容なのです。ところが、それを出産育児一時金から負担するというのは、保険としては本来おかしいですよね。これをなぜ健康保険からカバーするのだという意見も、当然あるわけですよね」

対論・出産事故補償(4)通常の出産にも保険適用検討の余地(2013年8月22日)

勝村 「僕は、そもそも出産も保険適用にすべきだと考えています。このことに対し、僕の感触では、病院勤務の先生たちは同意見の方が多いですが、開業医の先生たちには反対の方が多い。でも、僕はやはりそれをしないといけないと思います。自由診療は言い値だから、値上げもコントロールがきかない。どんな医療内容であってもお金が払われるから、質のチェックができない。配置すべき助産師数の基準など、せめてこれだけはという施設要件をすべての医療機関に確保してほしいと思っても、自由診療ではそういうこともできない。保険適用にしていくことが産科医療の質を高め、救急やリスクの高いお産への対応など、本当に必要なところにお金を回すことにつながると、僕は思っているのです」


対論・出産事故補償(5)必要な補償をし、無駄を省く(2013年8月22日)

勝村 「この制度が原因分析と再発防止を実践してきたことで、産科の先生たちの緊張感がより高まって事故が減り、そのために対象者が最初の推定より少なくなってきた可能性もあると思います。データがなく、それを証明することも否定することもできないわけですが。その分、週数や体重といった厳しい条件の線引きを見直して、対象範囲を広げていくということが必要だと思います。脳性まひの子どもを育てている当事者の声を聞かずに、お金の数字だけを見て、見直しの議論を進めていくのだとしたら、僕は、行政のあり方として非常に問題があると感じます」

谷直樹

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by medical-law | 2013-09-13 23:19