弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

薬害オンブズパースン会議が薬事法違反と不正競争防止法違反でノバルティスファーマを告発

msn産経「ノバルティスファーマを刑事告発 降圧剤広告は「誇大」 薬害NGO」(2013年11月1日)は、次のとおり報じました.
 
「高血圧治療の降圧剤「ディオバン」(一般名・バルサルタン)の臨床研究データ操作問題で、研究論文を引用して薬の効果を誇張して宣伝するなどしたとして、NGO「薬害オンブズパースン会議」が1日、薬事法違反(誇大広告)と不正競争防止法違反(誤認惹起=じゃっき=)罪で、販売元の製薬会社「ノバルティスファーマ」の告発状を東京地検に提出した。

 同会議のメンバーは薬害エイズ問題などを手がけた弁護士ら。告発状によると、ノ社は平成23年発行の医療専門誌2誌に、データ操作が発覚した京都府立医大の論文を引用した記事広告を掲載。治療効果を「脳卒中、狭心症のリスクは有意に減少した」と宣伝したなどとしている。

 同会議は、論文の結論が誤っていた可能性が高いにも関わらず、ノ社の広告は抑制効果が高い印象を与えており、「虚偽または誇大」と指摘。「商品の品質について誤認を引き起こした」として、不正競争防止法にも違反するとした。

 ノ社の関与については、データ解析に元社員が参加し、交通費を負担していた点を指摘し、「会社として(不正を)認識していたとするべきだ」と主張した。同会議事務局長の水口真寿美弁護士は「日本の臨床試験の信頼性を揺るがす重大事案。厚生労働省の調査は不十分。(解明は)捜査に委ねたい」と訴えた。

 ノ社広報部は「現段階では何も情報を得ていないため、コメントは控える」としている。


「<告発状より抜粋>

被告発会社の下記告発事実記載の各所為は、
薬事法第90条2号、第85条4号、第66条1項 誇大広告等の禁止違反
不正競争防止法第22条1項、第21条2項5号 不正競争
に該当すると思料されるので、厳正な捜査を遂げた上、被告発会社を処罰されるよう告発する(刑事訴訟法第239条1項)。

  告 発 事 実
   
被告発会社ノバルティスファーマ株式会社は、高血圧治療薬(降圧剤)であるディオバン(一般名バルサルタン)を製造販売する製薬企業であるが、被告発会社は、京都府立医科大学が実施したディオバンと他の既存降圧剤の効果を比較した臨床研究であるKYOTO HEART Studyの研究論文において、不正なデータ操作が行われ、ディオバンが既存降圧剤と比べて脳卒中や狭心症などの心血管イベントを抑制する効果があるとする同研究論文の結論は真正ではないにもかかわらず、

1 2011年1月発行の日経メディカルにおいて、
(1)「試験の対象は、JIKEI HEART Studyが心不全や冠動脈疾患などの心血管疾患を伴う高血圧、KYOTO HEART Studyはハイリスク高血圧という違いがありましたが、一次エンドポイント(心血管事故及び心血管死の複合ポイント:脳卒中・TIA、心筋梗塞、心不全及び狭心症による入院など)の相対リスクは両試験とも有意に減少しました」(疎1、151頁堀内)
(2)「両試験とも脳卒中、狭心症がバルサルタン群で有意に減少しましたね。」(疎1、151頁光山)

2 2011年6月発行の株式会社メディカルレビュー社が発行する「高血圧ナビゲータ 第3版」において、
(1)「KYOTO HEART Studyで、バルサルタンは日本人の心血管イベントを有意に減少させることが示されています。」(疎2、299~300頁小室)
(2)「(KYOTO HEART Studyでは)一次評価項目である脳・心・腎イベントはバルサルタン群で相対的に45%、有意(P<0.0001)に減少していました。内訳をみると、狭心症はJIKEI HEART Study同様、やはりバルサルタン群で有意に減少しています(相対リスク減少率49%:P=0.01058)。脳卒中も、KYOTO HEART StudyではCTないしMRIで病巣の存在を確認しているのですが、JIKEI HEART Study 同様、バルサルタン群で有意に減少していました(相対リスク減少率:45%、P=0.01488)。」(疎2、300~301頁熊谷)

等、KYOTO HEART Studyの研究論文の結果を引用した医師による対談を利用して記事を提供し、もってディオバンの治療効果について虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布したものである。

また、上記のように、KYOTO HEART Studyの研究論文の結果を引用した医師による対談を利用して記事を提供し、商品の広告にその商品の品質、内容について誤認させるような虚偽の表示をしたものである。 」


谷直樹

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by medical-law | 2013-11-02 01:11 | 医療