弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

府中刑務所に勤務していた医師が外部研修を受けたと偽り637万円余りを受給

NHK「刑務所常勤医が630万円不当受給」(2013年11月7日)は,次のとおり報じました.


「刑務所常勤医が630万円不当受給


東京・府中市にある府中刑務所に勤務していた医師が、勤務として扱われる外部研修に行ったと偽った報告書を提出し、630万円余りの給与が不当に支給されていたことが会計検査院の調べで分かりました。

会計検査院によりますと、府中刑務所に勤務していた医師1人が、おととし7月までの3年近くにわたって、ほかの医療機関で外部研修を受けたと報告していたにもかかわらず、研修を受けていなかったことが分かったということです。
刑務所などの常勤医師は、計画書や報告書を提出すれば、医療機関など外部で受けた研修を勤務として認められていますが、この医師は、全く研修を行わないまま報告書を提出していたということです。
会計検査院は、合わせて2112時間分の給与と手当、合わせて637万円余りが不当に支給されたと指摘しています。
これについて、府中刑務所は、「指摘された給与は医師からすでに返還された。誠に遺憾で再発防止に努めたい。医師には、適法な勤務を指導するとともに外部研修期間中の勤務時間の管理や内容の把握を適切に行っていきたい」と話しています。
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奈良、仙台、大阪でも

会計検査院によりますと、同様の不当な支給は、奈良、仙台、それに大阪の3つの少年刑務所や少年鑑別所でも3人の医師に対しておよそ4年にわたって合わせて3200万円余りが支給されていたということです。
また、ほかにも刑務所など26施設で、外部研修を受けたと報告した135人の常勤医師について会計検査院が調べたところ、施設側が研修先や勤務時間などを把握していないケースが多かったということです。
このため、会計検査院は、法務省に対して、常勤医師への給与が適正か確認できるよう研修期間中の勤務時間の管理など各施設に対して指導を行うよう意見を出しました。


医師不足解消のための制度

今回、不当受給が指摘された研修制度は、医師不足を解消するために設けられた制度でした。
八王子医療刑務所や千葉刑務所でおよそ7年間勤務した、あべクリニックの阿部惠一郎院長は「刑務所では、ほかの医療機関と比べて給料が安いうえ、臨床研究が難しかったり、刑務所側から医療行為に制限が設けられたりすることもあってメリットが少なく医師が集まりにくい環境になっている。研修制度は、数少ないメリットになっていた」と指摘します。
法務省によりますと医師が配置されることになっている全国の163の刑務所や少年院のうち、31施設で常勤の医師がいないなど深刻な医師不足になっています。
関係者は、医師がいなくなるのを恐れて刑務所側から、医師に対して研修などについて厳しい勤務管理をしづらい状態があったのではないかと指摘しています。」


返還すればすむ問題ではありません.
受けていない研修を受けたと偽って報告し,その研修時間の給与を受け取った行為は,「人を欺いて財物を交付させた」にあたるのではないでしょうか.

給与が少なく医師が集まりにくいという問題については,給与の改訂を行うなど正面から対応すべきと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2013-11-08 13:04 | 医療