弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

輸血によるHIV感染

朝日新聞「HIV感染者の血液を輸血、患者1人の感染確認」(2013年11月26日)は,次のとおり報じました.

「エイズウイルス(HIV)に感染した40代男性が献血した血液が、患者2人に輸血され、うち60代の男性がHIVに感染していたことが分かった。26日に開かれた厚生労働省の専門委員会で日本赤十字社が報告した。献血者が感染初期だったため血液が検査をすり抜けたとみられる。2003年に輸血によるHIV感染が確認され、04年に検査を強化して以降、感染者が出たのは初めて。

 日赤は来夏までに、20人分をまとめて検査する手法から、より精度の高い1人ずつの個別検査にし、施設数は8カ所に倍増する。

 同省によると、40代男性が今月献血した血液からHIVを検出。このため同じ男性が今年2月に献血し、日赤が保管していた血液を詳しく調べたところ、HIVが検出された。この血液はすでに患者2人に輸血されていた。うち消化器の手術で10月に輸血を受けた60代男性が、HIV感染していたことが判明した。もう1人は医療機関を通じ連絡を取っており、今後、感染の有無を確認する。

 HIV検査では、感染直後などウイルス量が少ない時期は検出できないことがある。このため、感染の危険性があるかどうかを問診で確認しているが、献血した男性は、2週間ほど前に男性間の性的接触があったが、事実と異なる申告をしていた。検査目的に献血をしたとみられる。

 検査の結果は献血者には伝えられない。厚労省は検査目的の献血はせず、保健所などの無料検査を受けるよう呼びかけている。HIV薬害被害者の花井十伍さんは「献血者は、輸血による感染という重大な事態が起きることを自覚して、責任を持って献血にのぞんで欲しい」と話す。」


来夏と言わず,可及的すみやかに,より精度の高い1人ずつの個別検査にしてほしいですね.

この献血者は,検査目的とみられるとのことですが,HIV感染の未必の故意があった場合(未必の故意について,判例は認容説にたっているとみられています.),傷害罪にあたる可能性もあると思います(性病についての最高裁昭和27年6月6日判決刑集 6 巻 6 号 795 頁参照,赤痢菌・チフス菌についての東京高裁昭和51年4月30日判例時報851号21頁参照).

善意で行う献血者に罰則はなじまない,という考えもありますが,虚偽申告は輸血の感染リスクを高めますので,感染の具体的な危険を認識しての虚偽申告に対し罰則を導入することも十分検討に値すると思います.


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2013-11-26 23:09 | 医療