弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

横須賀市立うわまち病院の肺動脈損傷事故の使用者責任は横須賀市か公益社団法人地域医療振興協会か(報道)

神奈川新聞「医療過誤で患者死亡、遺族らが市に損賠請求/横須賀」(2014年3月13日)は,次のとおり報じました.

「横須賀市立うわまち病院(同市上町)で手術中に医師が誤って肺動脈を損傷して患者を死亡させたとして、遺族が市を相手に、約4058万円の損害賠償請求調停を、横須賀簡裁に申し立てていたことが12日、分かった。

 市議会への説明資料の申し立て概要によると、事故が起きたのは昨年10月15日。市内在住の男性(59)に対し、胸腔鏡という小型カメラを使って左肺下葉の切除手術を行っている際、執刀医が誤って左肺動脈を損傷。男性は出血多量となって多臓器不全を引き起こし、同月26日に亡くなった。

 遺族は、執刀医は市の使用者で、市に使用者責任があるとして、損害賠償金の支払いを求めた。市側は、同病院は公益社団法人「地域医療振興協会」が管理運営しており、市に使用者責任はないとの見解を示している。」


神奈川新聞「過失致死容疑で県警が捜査、横須賀・うわまち病院で患者死亡」(2014年3月18日)は,次のとおり報じました.

「横須賀市立うわまち病院(同市上町)で手術中に執刀医が誤って肺動脈を損傷して患者を死亡させたとされる事故で、横須賀署が業務上過失致死容疑で捜査していることが17日、分かった。

 事故が起きたのは昨年10月15日。市内在住の男性(59)に対し、胸腔(きょうこう)鏡という小型カメラを使って左肺下葉の切除手術を行っている際、女性医師(41)が誤って左肺動脈を損傷。男性は出血多量となって多臓器不全を引き起こし、同月26日に亡くなった。

 同署は事故の直後に病院から連絡を受け、捜査を開始した。カルテなどの提出を受け、司法解剖も実施。医学的見地から調べを進めている。

 この事故では、遺族が市を相手に、約4058万円の損害賠償請求調停を、横須賀簡裁に申し立てている。

 申し立てでは、執刀医は市の使用者で、市に使用者責任があるとして賠償を求めているが、市側は、同病院は公益社団法人「地域医療振興協会」(本部・東京都)が管理運営しており、市に使用者責任はないとの見解を示している。」


横須賀市立うわまち病院の開設者が横須賀市で,運営者が公益社団法人地域医療振興協会です.
使用者責任は,開設者が負うか,運営者が負うか,の争いです.開設者は病院運営の最高責任者ですが,運営者を置いたら開設者にその責任はなくなるのか,という問題です.

横須賀市の主張は,運営者である公益社団法人地域医療振興協会が使用者で同法人を相手方とすべきということなのでしょう.

公益社団法人地域医療振興協会は,どのような考えなのでしょうか.

第715条1項は「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と定め,同条2項は「使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。」と定めています.

病院の開設者(横須賀市)が使用者であるとしても,その場合運営者(公益社団法人地域医療振興協会)が「使用者に代わって事業を監督する者」となりますから,いずれにしても公益社団法人地域医療振興協会は責任を免れないということになりそうです.

裁判所の判断に期待したいですね.

【追記】
産経新聞「胸腔鏡手術ミス認め和解 横須賀市、4千万円賠償」(2015年2月13日)は,次のとおり報じました.

「神奈川県横須賀市は13日、同市立うわまち病院で平成25年に肺の胸腔鏡手術を受けた同市の男性=当時(59)=が死亡したのは手術ミスが原因だったと認め、遺族に4370万円を支払うことで和解したと発表した。遺族が損害賠償を求め、提訴していた。

 市によると、男性は25年10月15日、胸に穴を開けて小型カメラを入れて行う胸腔鏡で、左肺の腫瘍の切除手術を受けた際、大量出血。同26日に多臓器不全で死亡した。

 手術は40代の女性医師が担当。出血は、腫瘍に癒着していた動脈をハサミ型の器具ではがそうとした際、誤って動脈を傷つけたためだった。

 遺族は26年5月、市と病院を運営する公益社団法人「地域医療振興協会」(東京)に約5千万円の損害賠償を求めて横浜地裁横須賀支部に提訴。今年1月13日、和解が成立した。和解金は市と協会が連帯して支払った。県警横須賀署は、業務上過失致死の疑いで任意で捜査している。」


弁護士 谷直樹

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by medical-law | 2014-03-18 06:20 | 医療事故・医療裁判