弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カフェインとアドリアマイシンの併用化学療法の少女死亡で金沢大学病院の医師3人が書類送検(報道)

北陸朝日放送「医療ミスで金大病院教授ら書類送検」 (2014年5月23日)は,次のとおり報じました.

「金沢大学附属病院で、2010年に骨肉腫の治療を受けた少女が死亡したのは、医療ミスによる抗がん剤の副作用の疑いがあるとして、警察が金沢大学附属病院の男性教授ら3人を書類送検していたことがわかりました。業務上過失致死の疑いで書類送検されたのは、金大附属病院整形外科の男性教授(56)、担当医の医師(41)研修医(43)の3人です。教授ら3人は2010年、骨肉腫で金沢大学附属病院に入院していた当時16歳の少女に、抗がん剤にカフェインを併用して投与するカフェイン併用化学療法を行っていたところ、少女は急性心不全で死亡しました。抗がん剤の副作用による医療ミスの疑いがもたれています。教授から少女が死亡したと報告を受けた当時の病院長は、病院内の倫理審査委員会に報告しておらず、病院は先月倫理指針違反にあたるとして会見を開いていました。病院側は「カフェイン併用化学療法と少女の死亡に、因果関係はないと思っている」と説明していました。しかし書類送検されたことは明らかにしていませんでした。少女の遺族はおととし、医療ミスの疑いがあるとして警察に告訴し、警察が捜査を進めていました。」


北陸中日新聞「少女死亡 化学療法ミス疑い 金大病院教授ら書類送検」(2014年5月23日)は,次のとおり報じました.

「「正当な治療」と否定

 金沢大病院(金沢市)で二〇一〇年に骨肉腫治療を受けた少女=当時(16)=が死亡したのは、医療ミスによる抗がん剤の副作用の疑いがあるとして、金沢中署が一月、業務上過失致死の疑いで整形外科教授で主治医の男性医師(56)ら三人を書類送検していたことが、捜査関係者への取材で分かった。少女の遺族が一二年七月、告訴状を提出していた。教授は本紙の取材に「抗がん剤使用の一般的な基準にのっとった正当な治療」と容疑を全面的に否定している。

 ほかに書類送検されたのは、担当医だった男性医師(41)と、当時研修医で現在は別の病院に勤務する男性医師。

 告訴状などによると、三人は金沢大病院に骨肉腫で入院していた当時高校一年の少女に、〇九年十月から翌一〇年一月にかけて、抗がん剤アドリアマイシンに強心利尿薬のカフェインを併用投与する化学療法を計五クール実施した。

 一〇年一月中旬の検査で少女の心機能が低下し、抗がん剤の副作用による心筋症の疑いがあったのに、化学療法を中止する注意義務を怠り、二月十八、十九日に六クール目の化学療法を実施。十九日に少女はアドリアマイシン心筋症による急性心不全となり、三月二日に死亡したという。

 アドリアマイシンの添付文書は、重大な副作用として「心筋障害、さらに心不全があらわれることがある」とし「観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止する」と明記。心機能異常のある人には「禁忌」としている。

 教授は取材に「抗がん剤の中止を判断する際、(少女の)心臓の機能を基準に当てはめた結果、(化学療法の継続は)問題なかった」と反論。病院総務課の担当者は「大学が訴えられたわけではない。個人情報に関係するのでコメントは差し控える」と話した。

 カフェイン併用化学療法 骨肉腫など悪性骨軟部腫瘍に対し、抗がん剤にカフェインを併用投与する治療法。カフェインには抗がん剤で損傷したがん細胞のDNA修復を阻害し、細胞死を引き起こす作用があり、抗がん剤の効果を高める目的で併用する。今回、書類送検された金沢大病院整形外科の男性教授が開発し、1989年に臨床治療を始めた。資料によると、抗がん剤の有効率は従来の40%から90%以上に、生存率(5年・10年)は50~70%から90%以上に向上した。2004年に厚生労働省の「高度先進医療」に承認された。」



北陸中日新聞「書類送検の金沢大教授 治療の有効性、学会でアピール」(2014年5月23日) は,次のとおり報じました.

「5年生存率、5%が90%に」

 金沢大病院(金沢市)で2010年に骨肉腫治療を受けた少女=当時(16)=が死亡したのは、抗がん剤の投与ミスの疑いがあるとして、業務上過失致死容疑で書類送検された同病院整形外科教授の男性医師(56)が23日、神戸市内で開かれた日本整形外科学会学術総会のパネルディスカッションで発表し、少女にも行った化学療法の有効性を強調した。

 この化学療法は、抗がん剤に強心利尿薬のカフェインを併用投与し、抗がん剤の効果を高める治療法で、厚生労働省の「先進医療」に承認されている。

 教授は、全国から集まった医師ら100人を前に、カフェイン併用の化学療法によって1980年ごろは5%ほどだった5年生存率が90%に向上したなどと、療法の効果を強調。「有効な化学療法で、いろいろな再建手術ができる」と述べ、腫瘍のできた骨を切断後に再建し、走ったり正座したりできるまで回復した患者を動画を交えて紹介した。

 少女の遺族が金沢中署に提出した告訴状などによると、この教授らは10年1月中旬の検査で少女の心機能が低下し、抗がん剤アドリアマイシンの副作用による心筋症の疑いがあったのに、化学療法を中止する注意義務を怠り、翌2月にも抗がん剤とカフェインの併用投与を継続。少女はアドリアマイシン心筋症による急性心不全となり、死亡したとされる。

 少女への化学療法について、教授は本紙の取材に「抗がん剤使用の一般的な基準にのっとった正当な治療」と容疑を全面的に否定している。」



北陸中日新聞「「治療 ベスト尽くした」 金大病院 書類送検の教授」(2014年5月24日)は,次のとおり報じました.

金沢大病院(金沢市)で二〇一〇年に抗がん剤の副作用で死亡した少女=当時(16)=への化学療法をめぐる事件で、当時主治医で、書類送検された同病院整形外科医師の男性教授(56)は「一般的な基準に沿った治療だった。ベストは尽くした」と治療の正当性を主張している。学会出席のため訪れている神戸市内で二十二、二十三両日、本紙の取材に答えた。(医療問題取材班)

 少女の治療は男性教授をはじめ、三人の医師が担当。骨肉腫で入院中だった少女が一〇年三月に抗がん剤の副作用による急性心不全で亡くなるまでに、三人は化学療法を中止する義務を怠ったとして、業務上過失致死の疑いがもたれている。

 教授は、今回の容疑について「全く認めません」と否定。一方で、少女については「ベストは尽くしたが、残念だった」と述べた。

 少女の心機能が低下したにもかかわらず、化学療法を継続したことには、日本癌(がん)治療学会などの名称を挙げて「抗がん剤の使用を中止するには一般的な判定基準がある。心臓の機能をすべて当てはめて、五段階のグレードのうち二番目になったことから、(治療継続は)問題ないと判断した」と説明した。

 治療は抗がん剤にカフェインを併用して効果を高める臨床試験として実施された。抗がん剤の有効率や生存率向上の成果が評価されてきたが、承認された期間が過ぎた後も治療を継続していたことが国の倫理指針違反にあたるとして、第三者を含む院内の調査委員会が詳細を調べている。

 教授は「国の制度の変化がいろいろあり、対応しきれない」と説明。「(不備を正すよう)指示があれば、きちんとやります」と話した。
治療有効性 学会で強調

 男性教授は二十三日、神戸市内で開かれた日本整形外科学会学術総会のパネルディスカッションで発表し、少女にも行っていたカフェイン併用化学療法の有効性を強調した。

 発表では、カフェイン併用化学療法によって、一九八〇年ごろには5%ほどだった五年生存率が90%に向上したなどと成果を挙げ、「有効な化学療法で、いろいろな再建手術ができる」と説明。骨肉腫ができた患者の間節が手術後も正常に動くことを目標に掲げていると訴え、患者が正座した写真や、走る動画を交えて、腫瘍のできた骨の切除後に再建に成功した症例を紹介した。カフェイン併用化学療法は、DNAの修復を阻害するカフェインを一緒に投与して抗がん剤の効果を高める療法。厚生労働省の先進医療に承認されている。
当時の病院長 取材に答えず

 今回の化学療法をめぐる少女の死亡事例を把握していながら、院内の倫理審査委に報告していなかったとされる当時の金沢大病院長も二十三日、主治医と同じく神戸市内の学会に出席。脊椎がん治療を題材に講演した。講演の後、事実関係を問う本紙の取材に答えず、少女の死亡を把握した時期などの質問にも応じなかった。」


書類送検は,事件が警察から検察に移ったということを意味します.起訴されずに終わる事案も多数あります.
1)この少女が急性心不全となり死亡したこと,
2)その急性心不全がアドリアマイシン心筋症によるものであること
3)1月中旬の検査結果が心機能低下を示すもので,アドリアマイシン心筋症の疑いを示唆するものであったこと
4)アドリアマイシン心筋症の疑いから,抗がん剤アドリアマイシン投薬中止の注意義務があったこと
等を証拠に基づいて立証できるか,が検討されることになります.


谷直樹

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by medical-law | 2014-05-25 09:14 | 医療事故・医療裁判