弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

高砂市民病院,検体を取り違え乳腺切除(報道)

読売新聞「「良性」なのに乳腺一部切除手術…検体取り違え」(2014年6月16日)は,つぎのとおり報じました.

「兵庫県高砂市の高砂市民病院は16日、乳がんの検査のため病理診断を行った県内在住の女性2人の検体を取り違え、誤った検査結果を伝えるミスがあったと発表した。

 その結果、本来は良性だった女性は、別の病院で乳腺の一部の切除手術を受けていた。病院側は2人に謝罪した。大野徹院長は記者会見で「あってはならない事故が起きた。患者2人と家族に精神的、肉体的苦痛を与えたことを深くおわびします」と述べた。

 病院側の説明では、2人は4月上旬、胸から組織片を採取し、顕微鏡で調べる検査を行った。検査は、外科医が組織片を採取し、看護師が検体として容器に入れてフェルトペンで名前を記入した。その後、検体を別の容器に移す際に取り違えた可能性があるという。」


医療安全情報No.53(2011年4月)でも,検体取り違えについて注意喚起を行っています.
今は,「ICタグを使った病理検体管理システム」もありますが,検体取り違えミスは,複数の検体を同時処理することを止めれば,防止できるミスです.
同時処理のほうが効率はよいのですが,取り違えミスのリスクがあります.
高砂市民病院は,どのような方法で再発を防止するのでしょうか.

【追記】

読売新聞「乳房切除ミス、20代女性が賠償提訴…大阪地裁」(2016年4月4日)は,次のとおり報じました.

「乳がんの病理検査で検体を取り違えられ、必要のない手術で乳房の一部を失った20歳代の女性が、取り違えた高砂市民病院(兵庫県高砂市)を運営する同市を相手取り、慰謝料など約1850万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴していたことがわかった。病院側はミスを認めて謝罪したが、取り違えの原因は不明のまま。女性は「被害を繰り返さないためにも、裁判で原因をはっきりさせたい」と訴えている。

 訴状などによると、女性は2014年4月、同病院で胸の組織片の病理検査を受け、右胸の乳がんと診断された。翌月、別の病院で乳房を切除したが、摘出部位からがん細胞が見つからず、診断時に別の50歳代女性の検体と取り違えられていたことが判明した。50歳代女性はその後、切除手術している。高砂市民病院は女性に謝罪し、その後、解決金250万円を提示。外部調査委員会が公表した報告書は「病理検査室で取り違えが起きた可能性が高い」とする一方、原因は「特定できない」とした。その上で再発防止を促した。

 女性側は「原因不明で再発防止ができるのか。少しの注意でミスは簡単に防げたはず。極めて初歩的で重大な過失があった」と指摘している。

 3月23日に同地裁であった第1回口頭弁論で市側はミスを認めたうえで、切除した乳房の範囲が小さいことなどから解決金額が妥当だと主張している。同病院は読売新聞の取材に「裁判中なのでコメントは控えたい」としている。」


乳房を切除されて250万円では誰も納得しないでしょう.
同種事案の過去の賠償額が低額なので,このような提示になっているのでしょうが,判決で適切な水準まで引き上げることはできないのでしょうか.


谷直樹

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by medical-law | 2014-06-17 08:08 | 医療事故・医療裁判