弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

岩手県立中央病院麻酔科医師,麻薬取締法違反罪で在宅起訴

時事通信「麻酔薬抜き取り、自分に注射=医師を在宅起訴―盛岡地検」(2014年8月28日)は,次のとおり報じました.

「麻薬成分を含む麻酔薬を自分の身体に使用したとして、盛岡地検は28日までに、麻薬取締法違反罪で、岩手県立中央病院麻酔科の30代の男性医師=盛岡市=を在宅起訴した。男性医師は手術のため患者に投与される麻酔薬を抜き取って使っていたという。
 病院などによると、6月8日午後に行われた緊急手術中、勤務外だった男性医師は手術室に入り、麻酔薬のチューブのつなぎ目に注射器を挿入。数ミリリットル抜き取って持ち去り、病院内のトイレで自身の右腕に注射した。」


msn産経「手術中に麻酔薬抜き取り、自分で使用 医師を在宅起訴」(2014年8月28日)は,次のとおり報じました.

「岩手県立中央病院の30代の男性医師が、手術中の患者に点滴していた麻酔薬を注射器で抜き取り、自分で使用したとして、麻薬取締法違反罪で在宅起訴されたことが28日、病院への取材で分かった。起訴は25日付で、患者に影響はなかったという。

 医師は「十数回ほど手術中に麻酔薬を抜き取ったことがある。ストレスを解消できると思った」と話しているという。

 病院によると、医師は6月8日、担当外の外科手術に立ち会い、成人の男性患者に点滴していた麻酔薬をチューブの連結部分から数cc抜き取り、院内のトイレで自分に注射した。

 手術チームの看護師が、医師が注射器をポケットにしまうのを目撃して上司に相談。本人が院長に対して使用を認めたため、警察に連絡した。

 病院によると、麻酔薬は鎮痛効果のある「フェンタニル」という薬剤で、麻薬に指定されている。」



患者に使用されている麻酔薬を一部とは言え抜き取る行為は,かなり悪質ではないでしょうか.

野本麻酔科学会のサイトには,「一回でも社会規範から逸脱した目的や方法で、薬物を自己摂取すると乱用になり、それが継続されて自分でコントロールできなくなった状態が依存症である。麻酔科医が陥るのは、乱用と依存症の両者が考えられる。特に問題となる状況は依存症に陥った場合である。
 一旦依存症に陥った場合、これは進行性の病気であり、回復したように見えてもその過程は薬物を止め続けている状態であり、「依存症に関しては完全治癒はあり得ない」というのが現在の考え方である。そうなると、一旦依存症に陥った麻酔科医は麻酔を続けることはできない、という厳しい考え方に立って対処する必要がある。
 したがって、興味本位や、現実逃避、ストレスなどから乱用した場合、その早い時点で発見し、依存症に陥らない状況で救済する必要がある。
 法的な面からは、薬物の入手方法が違法であれば、それを発見した時点で刑事告発もやむをえないと思われるが、施設内でまず検討するなど、法的手段に関しては慎重に対処すべきである(日本ではまだDrug Courtの考え方は広まっておらず、実施している裁判所もない)。」
と記載されています.

「処罰」のみならず「救済」も必要と考えますが,犯罪を黙視するわけにはいかないでしょうし,薬物濫用,薬物依存は麻酔科医に限りませんので,麻酔科医だけ特別に軽く扱う合理的理由はありませんので,依存性のある薬物事犯共通の問題として考える必要があるでしょう.ドラッグ・コートは,薬物依存症の治療を法的に義務付けるもの(強制的治療)で,再発防止効果が実証されていると言われています.薬物事犯についてドラッグ・コートは検討されてよいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2014-08-28 20:35 | 医療事故・医療裁判