弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

金沢大学病院の外部調査委員会が,倫理指針に反し先進医療の臨床試験を実施した問題について中間報告

北陸朝日放送「倫理指針違反で金大附属病院が中間報告」 (2014年9月8日)は,つぎのとおり報じました.

「金沢大学附属病院が行ったがん治療の臨床試験で、国が認めた倫理指針に違反していた問題で、病院側がこれまでの中間報告を発表しました。
この問題は金大附属病院が、がん治療の先進医療として、6年前から行っていた「カフェイン併用化学療法」について、厚生労働省が定めた試験期間を過ぎても、研究を実施していたものです。
病院側は、外部の有識者による調査委員会を設置し、8日、これまでの中間報告を発表しました。
調査委員会の報告では、臨床試験の正式な手続きをせずに、治療された患者が114人いることが分かりました。
調査委員会は「担当の整形外科の医師が、臨床試験以外でも治療を名目にカフェイン治療が実施できると誤解した、認識の甘さが根本的な問題だ」と指摘しました。
またこの化学療法では、2010年に骨肉腫で入院していた当時16歳の少女が急性心不全で死亡。抗がん剤の副作用による医療ミスの疑いがあるとして、整形外科の男性教授ら3人が5月に業務上過失致死の疑いで、書類送検されています。
少女の死亡との因果関係について、調査委員会では「この治療で患者に何が起きたか、再度検討していくべきだ」としたうえで、「明確な結果が出るまでは、この治療法を再開すべきでない」との見解を示し、臨床研究の担当部門の整備など、再発防止策を提言しました。」


整形外科の教授が,臨床試験期間中に臨床試験外に治療と称しカフェイン療法を実施し,臨床試験期間終了後にも治療と称しカフェイン療法を実施した事案です.
倫理指針を意図的に無視逸脱したのではなく,治療としてならできると誤解していたという報告ですが,有効性と安全性が確立していない「実験的療法」が治療として実施できないことくらいは,普通分かるはずです.医師に被験者の権利を尊重する姿勢があれば,倫理指針を正しく理解できたはずです.

【追記】

朝日新聞「業務上過失致死容疑の金沢大病院医師ら3人を不起訴処分」(2015年10月11日)は,次のとおり報じました.

「2010年に金沢大付属病院の先進医療を受けていた骨肉腫の少女(当時16)が死亡したのは医療ミスの疑いがあるとして、業務上過失致死の疑いで書類送検されていた当時の50代男性医師ら3人について、金沢地検は不起訴処分にした。7日付。「起訴するに足りるだけの証拠が集められなかった」としている。

 少女は「カフェイン併用化学療法」を受けていたが、急性心不全で死亡。遺族が12年、石川県警に告訴した。

 この化学療法をめぐっては、病院の倫理審査委員会の承認を受けるといった正式な手続きをせずに治療された患者が08~13年に106人いたとの報告書を、病院の調査委員会が昨年12月にまとめた。金沢大は今年3月、厚生労働省の倫理指針に違反していたとして、治療していた教員ら4人を文書訓告や学長による口頭注意の処分とした。」


 刑事手続きは,ハードルが高いようです.


谷直樹

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by medical-law | 2014-09-09 01:12 | コンプライアンス