弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

川崎市立多摩病院,東海大学の学生が手術中の大量の出血で高次脳機能障害となった事案で提訴される(報道)

日本テレビ「脳に障害”医療ミスと病院を提訴 神奈川」(2014年9月24日)は,次のとおりじました

「2012年、神奈川県の川崎市立多摩病院で骨折の治療で手術を受けた20歳の男性が脳に障害が出て、話すことや歩くことができなくなったのは医療ミスによるものだとして病院側を相手取り、損害賠償を求める訴えを起こした。  
原告側の代理人らによると、川崎市に住む清水利紀さんは2012年、川崎市立多摩病院で太ももの骨折の治療のため手術を受けたが、手術中に多量に出血した影響で脳に障害が発生し、話すことや歩くことができなくなったという。清水さんとその家族は24日、多量の出血に対して適切な処置がなされなかったなどとして、病院側に約4億7000万円の損害賠償を求める訴えを起こした。  
清水利紀さんの母親「(息子は)リハビリに行く以外ベッドの上で過ごしています。手術室で何が起きたのか、私たちも息子も事実を明らかにしていただきたい」  これに対し、病院側は「訴状が届いていないため、コメントできない」としている。」


毎日放送「“手術が原因で寝たきりに” 大学生と家族が病院を訴え」(2014年9月24日)は,次のとおりじました

「手術が原因で寝たきりになったとして、東海大学の学生が病院を訴えました。

 川崎市の大学生、清水利紀さん(20)は、おととし、交通事故で太ももを骨折し、手術を受けた後、転倒したため、川崎市の市立多摩病院で手術を受けました。しかし、手術中に大量の出血があり、出血性ショックなどを起こしたため、その後、高次脳機能障害となり、ほぼ寝たきりの状態となりました。

 清水さんの家族は「執刀医などの判断に問題があった」として、24日、病院側を相手取り、4億7000万円の損害賠償を求める訴えを横浜地裁に起こしました。病院側は家族に対し、大量出血した際のマニュアルがなかったことなど体制に問題があったことは認めましたが、執刀した医師などの判断に問題はなかったと説明しているということです。

 「事故は1人の責任では起きないと思う。1人1人の小さなミスが重なってのことだと思う。事実を明らかにしてほしい」(清水さんの母 佳子さん)

 清水さんの家族は、刑事告訴も検討しているということです。」


テレビ朝日「骨折手術で寝たきりに 大学生が損害賠償を請求」(2014年9月24日)は,次のとおりじました

「川崎市の病院で足の骨折手術を受けた際に大量に出血して脳に障害を負ったとして、男子大学生が執刀医などを相手取り、4億7000万円を請求する訴えを起こしました。

 東海大学1年の清水利紀さん(20)はおととし、交通事故で右足の太ももを骨折し、その後、治療のために川崎市立多摩病院で手術を受けました。家族によりますと、手術の際に清水さんは大量出血でショックを起こし、脳に障害を負ったことから、ほぼ寝たきりの状態になったということです。24日、家族は「病院側が適切な処置を速やかに行わなかった」などとして、執刀医などを相手取り、4億7000万円の損害賠償を請求する訴えを横浜地裁に起こしました。病院側は、大量出血の際の対応策を決めていないなどの不備があったことは認めたものの、執刀医らの判断に問題はなかったと説明しているということです。家族は今後、刑事告発も検討するとしています。」


どこからのどのような出血なのか,出血後どのように対応したのか,報道からは全く不明です.一人一人のミスが積み重なり悪しき結果が発生した事案は,一般に,過失・因果関係の特定が難しく,立証のハードルが高いことが多いのですが,本件は,出血後の対応に過失あり,との主張のようです.出血性ショックに対しては,すみやかに出血源の検索と止血を行ない,輸液・輸血を行うのが常ですが,本件はどのような対応だったのでしょうか.
また,出血性ショックにいたる程度の大量出血は回避できなかったのでしょうか.

【追記】

msn産経「川崎市立病院の骨折手術で重度の後遺症 大学生が提訴」(2014年9月25日)は,次のとおり報じました.

 
「川崎市立多摩病院(多摩区)で手術を受けた際、大量出血後の処置が遅れて重度の後遺障害が残ったとして、同市高津区の東海大1年、清水利紀さん(20)と家族ら計6人が24日、市や病院の指定管理者である聖マリアンナ医科大(宮前区)、男性医師2人を相手取り、計約4億7千万円の損害賠償を求める訴えを横浜地裁に起こした。

 訴状などによると、清水さんは交通事故で右の大腿(だいたい)骨を骨折して固定する手術を受けたが、松葉づえを使って歩行中に転倒して再骨折。平成24年9月に行われた再骨折後の手術で、静脈に直径が鉛筆の芯ほどの傷が2カ所できて出血が始まったが、医師は気付かずに少なくとも35分間は止血や輸血をせずに手術を継続。

 その結果、出血量は最終的に約8・5リットルに達し、出血性ショックを起こした清水さんは心肺停止状態に陥って低酸素脳症となり、現在も動いたり、言葉を発したりできないという。

 原告側は、医師らに注意義務違反や止血・輸血を行う義務違反などがあったと主張。提訴後に横浜市内で会見した母親の佳子さん(50)は「本来なら楽しい大学生活を送っていたはずのわが子が、今はベッドの上で過ごしている。本人は話せないが、安全であるはずの手術室で何が起きたのかを知りたい」と涙ながらに訴えた。

 川崎市病院局は「訴状が届いておらず、中身を確認した上で対応したい」、聖マリアンナ医科大は「訴状が届いていないので詳細が分からず、コメントできない」とそれぞれ話している。」



上記新聞記事からすると,術中の静脈からの出血に35分間気づかなかったことが過失,という主張のようです.

介護費用の計上により損害額が大きくなるのはわかりますが,京都地裁平成17年7月12日判決が,6歳女子の介護費用等を算定し総額2億4800万円の賠償を命じたのが,これまでの最高額です.
約4億7000万円の請求では,この京都地裁の判決の約2倍です.膨大な印紙代になりますので,いささか疑問を覚えます.一部請求にすることはできなかったのでしょうか.


谷直樹

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by medical-law | 2014-09-25 04:01 | 医療事故・医療裁判