弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

ブリストル・マイヤーズ株式会社,長島・大野・常松 法律事務所による「調査報告書」を公表

ブリストル・マイヤーズ株式会社(BMKK)の従業員が医師主導臨床研究であるSIGN研究のデザインをほぼ作成するという不適切な役務提供を行っていたこと等に関連し,ブリストル・マイヤーズ株式会社は,2014年10月27日,独立した外部の専門家から構成される第三者機関としての長島・大野・常松 法律事務所による「調査報告書」を公表しました.

結論として「本調査において、寄付および医師主導臨床研究の実施に関し、弊社による過去の不適切な役務提供等の可能性が指摘されました。一方、薬事法違反となる副作用症例の報告義務違反、データの改ざんや有効性・安全性の不当表示、及び患者様の個人情報保護法違反は認められませんでした。」(「医師主導臨床研究に関する第三者機関調査結果について」)とのことです.

「調査報告書」は,「BMKKにおいては、以下のとおり、臨床研究に対する労務提供に関するルールの整備が不十分であり、臨床研究に対する寄附に関するルールは存在したものの、その運用は必ずしも適切とはいえないものであった。」(57頁)と,社内ルールの整備不足等を指摘しています.

その背景について,「かつて販売推進目的から営業部門が過大な労務提供と寄附により臨床研究に深く関わっていた時代に培われた、医師と協働して作業して研究成果を上げることをGood Behaviorと捉える伝統的な社内文化が現場に残存していたようであり、MRを含む営業部門の現場において、臨床研究に対して労務提供を行うことの問題意識が希薄な状況が改められることはなかった。」(58頁)と指摘しています.

また,医師・医療機関の側にも今回の問題を誘発する一定の土壌があったと指摘しています.

まず、医師側には、臨床研究の実施によって薬剤に関する有用な情報を得ることができ、また、それを発表することで自己の医師としての実績になるため、臨床研究を実施したいというニーズが存在した。臨床研究にどのような利益があると見い出すかは医師によって異なるものの、何らかのメリットを感じて臨床研究を実施したい、あるいは参加したいという医師は相当程度存在したものと考えられる。

しかし、臨床研究を実施するには、検査費用等、多額の費用を要するにもかかわらず、国から医師・医療機関への研究資金の援助は十分でなく、また、臨床研究の実施には様々な書面作成等の作業が必要であるにもかかわらず、医師本人が多忙である上に、医療機関における人的資源も不足しており、純粋に医師・医療機関だけでこれを行うことは資金的にも労力的にも非常に困難であるという事情があった。

以上のような状況において、医師側には、製薬会社と協力して臨床研究を行うことにより、資金的・労力的に製薬会社の協力が得られ、寄附金の形で資金の提供がなされるため検査費用等の負担が不要となり、必要な書面作成等についても製薬会社の従業員が相当部分を分担してくれるという実態があった。他方、製薬会社側には、将来的な売上増大に繋がる臨床研究の結果を得ることに加え、臨床研究の実施それ自体により、自社製品が処方される患者を少しでも獲得し、売上を伸ばしたいというニーズがあり、双方のニーズが合致した。したがって、医師・医療機関としては、製薬会社が寄附及び労務提供をパッケージにして支援する臨床研究を広く利用する実態があった。

個々の医師の主観的な意識としても、臨床研究を介して医師側が製薬会社の資金と労務提供に大きく依存するような慣行が広く、かつ長年に亘って続いていたこともあって、製薬会社に寄附をさせたり、労務提供をさせたりすることについての問題意識が希薄になっていた側面が否定できないと考えられる。
」(61~62頁)

つまり,製薬会社に寄附・労務提供をさせることについて何とも思わず,成果物を自己の実績としようとする医師がいたわけです.
魚心あれば水心ということだったのでしょうか.


谷直樹

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by medical-law | 2014-10-29 02:22 | コンプライアンス