弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

群馬大学医学部附属病院,腹腔鏡下肝切除術後に8人死亡(報道)

読売新聞「腹腔鏡手術後8人死亡…群大病院、同じ医師執刀」(2014年11月14日)は,次のとおり報じました.

「群馬大学病院(前橋市)で2011~14年、腹腔鏡(ふくくうきょう)を使う高難度の肝臓手術を受けた患者約100人のうち、少なくとも8人が死亡し、病院が院内調査委員会を設置して調べていることがわかった。

 8人を執刀したのはいずれも同じ医師。同病院ではこれらの手術は事前に院内の倫理審査を受ける必要があるとしているが、担当の外科は申請していなかった。

 病院関係者によると、手術が行われたのは第二外科(消化器外科)。死亡した8人は60代~80代の男女で、肝臓がんなどの治療として腹腔鏡を使う肝臓切除手術を受けた。手術と死亡の因果関係は現時点では不明だが、8人は術後に容体が悪化し、約3か月以内に肝不全などで亡くなった。

 事態を重く見た病院側は現在、同科肝胆膵(すい)(肝臓、胆道、膵臓)グループの全手術を停止している。」


因果関係は不明ですし腹腔鏡下肝切除術は高度な技術を必要としますが,それにしても8%の死亡率は他施設と比較して高すぎると思います.
院内調査委員会の調査にはバイアスがかかるおそれがあり限界がありますので,公正な外部委員をいれて厳正に調査を行ったほうがよいと思います.

谷直樹

【追記】

産経新聞「「認識が甘かった…」 執刀した40代助教が怠った3つの事前準備」(2013年11月14日)は、次のとおり報じました.

「腹腔鏡(ふくくうきょう)を使った肝臓手術で患者8人が術後4カ月以内に死亡していたことが判明した群馬大病院(前橋市)。いずれも40代の助教(男性)が執刀しており、14日、群馬県庁で行われた会見で、病院側は、この助教が手術に関し、(1)患者への十分な告知と同意(インフォームドコンセント)(2)院内審査組織への申請(3)肝機能チェックなどの術前検査-の3点について、極めて不十分だったことを認めた。申請や検査について助教は「必要ないと思った。認識が甘かった」と話しているという。

 この助教が所属する第二外科が平成22年12月から今年6月までに行った腹腔鏡を使った肝臓切除手術は92例。亡くなった8人の執刀も含め、ほとんどを、助教が担当した。92例中、高難度とされる保険適用外の手術は56例あり、死亡した8例も適用外手術だった。

 厚生労働省によると、腹腔鏡を使った肝臓の切除手術は比較的実施しやすい「部分切除」などに限り保険適用される。高度な技術が必要な「区域切除」などは有効性や安全性が十分に確認されていないとみなされ保険適用外となっている。

 このため保険適用外手術を行うには、厚生労働省への先進医療の届け出や院内審査組織への申請が必要だが(一部内科治療は不要)、他大学と連携して行った7例の手術を除き、助教は申請していなかった。


会見で、野島美久(よしひさ)病院長は「(助教は)申請手続きが必要と認識していたが、認識が甘かった。申請したら止められると思い、故意に申請を怠ったわけではない」としたが、ではなぜ必要と認識していた申請を怠ったのか、釈然としない。

 また、助教が患者へのインフォームドコンセントを行ったかについて、病院側は「(本人は)患者に保険適用外手術であることや先進医療であることは伝えたと話している」としたが、カルテなどの記録には、助教が患者に説明した旨の記載はなかったという。

 厚労省や院内審査組織への申請が必要な高度な手術であることを助教が患者に伝えていたかについても、病院側は「これから確認する」。仮に院内審査組織に助教が申請していた場合、手術を許可していたのかとの問いには「何ともいえない。年齢や疾患のステージなどを厳密に調べる必要がある。まだ、調査は及んでいない」としている。

 野島病院長は「問題として(病院側が)認識しているのは術前評価とインフォームドコンセント。診療記録を見た限りインフォームドコンセントは不十分で、肝臓の機能が手術に耐えられるか検査する術前評価も不十分だった」と認めた。

 病院側の説明によると、高難度の手術を行う際の術前評価では、肝臓の容量を計算するなどの検査も必要だったが、実施されておらず、外部の専門家からも疑問の声が出ているという。


検査を行わなかったことについて助教は「もう少し簡単な検査で十分という認識で、認識が甘かった。必要ないと思った」などと話しているという。

 群馬大病院では、平成17年にも生体肝移植手術で肝臓の一部を提供した女性が手術後に下半身不随となった医療事故が起きており、野島病院長は「同じような事案が起きたことを非常に残念に思う」としている。

 8人の中には、術後わずか2週間で死亡した患者もいた。病院側は院内に弁護士や医療事故の専門家など外部から5人を登用した調査委員会を設置、年度内に調査結果をまとめたいとしている。

 助教は手術の執刀医から外れたものの今も病院に勤務する。なぜ、ずさんな準備態勢で手術に踏み切ったのか、詳細は調査結果を待つしかない。

 腹腔鏡 腹腔鏡は腹部を観察するためのカメラ。腹腔鏡手術では体に数カ所の穴を開け、このカメラとともに手術器具を差し入れ、テレビモニターで内部の映像を見ながら切除や縫合などを行う。開腹手術に比べて患者への負担が少ないため実施が広がっているが、熟練した技術が求められ、ミスによる患者の死亡が後を絶たない。」


【再追記】

読売新聞「群馬大病院死亡…腹腔鏡 保険手術と偽る、診療報酬不正請求か」(2014年11月17日)は、次のとおり報じました.


「群馬大学病院(前橋市)で腹腔鏡ふくくうきょうを使う高難度の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で、病院側が保険適用外の手術を保険がきく手術として診療報酬を不正請求していた疑いのあることが、遺族らの証言などでわかった。

 病院では、8人を含む保険適用外の56人の事例について調査を進めており、不正に受け取っていたと判明すれば健康保険組合などの保険者に返還するとみられる。

 腹腔鏡を使う肝臓の切除手術は、比較的実施しやすい「部分切除」などについては2010年4月から保険適用されている。しかし、難易度の高い「区域切除」などの手術の場合は保険適用が認められていない。

 14日開かれた記者会見で群馬大病院は、死亡した患者に行った手術がすべて保険適用外の難しい手術であることを認めた。保険適用外の手術は通常、費用は研究として病院持ちで行うか、自費診療として患者側が全額支払う形になる。

 しかし、亡くなった8人のうち6人は、病院側がいずれも開腹手術や腹腔鏡による部分切除など、保険がきく手術を行ったことにして請求し、患者側も「保険の自己負担分だけを支払った」と証言している。

 たとえば、保険診療で定められた腹腔鏡による部分切除の費用は約60万円で、患者が支払う自己負担は通常の3割なら約18万円になる。

 遺族の多くは、保険診療なのかどうかの説明を事前に執刀医から受けていなかった。ある遺族は気になって尋ねたが、「保険で大丈夫ですよ」と言われたという。

 今回のケースで不正請求があったかどうかについて、群馬大病院は読売新聞の取材に対し、「そういうケースもありうる」としている。

 肝臓手術に詳しい外科医は「保険適用外の腹腔鏡手術を行う場合、病院側が臨床研究として医療費を負担できるほど研究費はなく、自費診療として患者に全額負担をお願いすると手術を受けてもらえない。こうしたことを背景に、群馬大も、実施件数を増やすために不正に保険請求したのではないか」と指摘している。」



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by medical-law | 2014-11-14 07:27 | 医療事故・医療裁判