弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

仙台市内の元院長の産婦人科医師が準強制わいせつの疑いで逮捕される(報道)

NHK「診察中にわいせつか 医師逮捕」(2014年11月20日)は,次のとおり報じました.

「仙台市内の病院に勤務していた75歳の医師が、おととし診療中に患者の女性の下半身をさわるなどしたとして準強制わいせつの疑いで警察に逮捕されました。
医師は容疑を否認しているということです。
逮捕されたのは名取市増田の医師で日本産科婦人科学会の専門医、××××容疑者(75)です。

××医師はおととし10月ごろ当時勤務していた仙台市若林区内の病院で、産婦人科の診察に訪れた30代の女性の患者の下半身を触るなどしたとして、準強制わいせつの疑いが持たれています。
警察によりますと、××医師は調べに対し「診察の中で触れることもあるが下心を持って触ることは絶対にない」と供述し、容疑を否認しています。

警察は、××医師に不必要に体を触られたと話す女性がほかにもいることから余罪についても調べることにしています。」


下心がなかったとのことですが,そこが問題なのではありません.
この産婦人科医(FNNは元院長と報じています)に性的意図(わいせつ傾向)があったか否かは問題ではありません.
性的意図(わいせつ傾向)を故意を超えた要件とするという考え方(最高裁昭和45年1月29日判決)は,刑法学の現在の多数説ではありません.

刑法学の現在の多数説では、患者の同意を得て,外形的に医学上必要な治療を行った場合は,仮に医師に性的意図(わいせつ傾向)があったとしても準強制わいせつ罪にはあたらない,と一般に考えられています.
刑法学の現在の多数説では,本件の産婦人科医が外形上医学的に必要な程度以上に(すなわち,不必要に)触わったか否かが問題なのです.通常の診療を行っていれば,産婦人科医が外形上医学的に必要な程度以上に触わったという立証は不可能です.

古い最高裁昭和45年1月29日判決の考え方からは,客観的な行為より性的意図(わいせつ傾向)の自白が重視されることになりがちです.
証拠隠滅,逃亡のおそれがないと考えられる本件において逮捕の必要があったのか,疑問です.自白を強要するための逮捕という疑いすら感じられます.


谷直樹

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by medical-law | 2014-11-20 20:48 | 医療事故・医療裁判