弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

最終報告書、教授の恣意的診断が臨床試験『Jikei Heart Study』の結果を歪めた可能性を指摘

毎日新聞「バルサルタン試験:責任者の教授、恣意的診断か」(2014年12月12日)は、次のとおり報じました.

「降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、東京慈恵会医大の調査委員会(橋本和弘委員長)が12日、最終報告書を発表した。試験には複数の医師が参加、試験責任者で当時教授だった××××氏(73)が担当した患者のデータが、目立ってバルサルタンの宣伝に有利な結果になっていたことが分かった。医師の恣意(しい)的な診断が試験結果をゆがめた可能性がある。


 ◇慈恵医大が最終報告書

 最終報告を受け、大学は××氏の客員教授の肩書を取り消し、試験に関与した教員を厳重注意した。また、○○○理事長は給与の2割を、□□□□学長は1割をそれぞれ3カ月間自主返上する。

 昨年7月の中間報告では、試験に参加した販売元のノバルティスファーマ社員が血圧値のデータを操作していた可能性があると指摘していた。今回の最終報告は、この点も改めて指摘した。

 調査委は、中間報告の後に入手した患者データを新たに検証。××氏が脳卒中などの心血管疾患と診断した症例数が、バルサルタンを服用する患者グループでは9件だけだったのに対し、服用していないグループでは90件と10倍多かったことが分かった。研究チームは、バルサルタンの脳卒中などの予防効果は他の降圧剤よりも大きいと結論付けていたが、××氏の診断分を除くと、両グループの差はなくなった。

 ××氏は調査委に対し「偏っていると言われても、思い当たることは何もない」と話しているという。慈恵医大の試験結果をまとめた論文は、既に撤回されている。【河内敏康、八田浩輔】

 ◇広告引用、宣伝効果大きく

 バルサルタンの臨床試験を実施した5大学のうち、最初に試験を始めた東京慈恵会医大の論文は、2007年に海外の有名医学誌「ランセット」に掲載された。他の降圧剤にはみられない特別な効果があると認めた論文は、販売元ノバルティスファーマの広告に再三引用され、大きな宣伝効果をもたらした。

 一連の疑惑では東京地検特捜部が、京都府立医大の11年と12年の論文で脳卒中などの発症数を改ざんしたとして、統計解析を担当したノ社元社員の△△△△被告(63)と法人としてのノ社を薬事法違反(虚偽広告)で起訴し、捜査を終結している。慈恵医大の論文については虚偽広告の公訴時効(3年)が経過していた。」


教授の診断分を除くと差がない、というのですから、教授が恣意的に診断した疑いが強いと考えられ、そうであればきわめて悪質です.

なお、毎日新聞「バルサルタン疑惑:英誌が千葉大論文を撤回 著者同意なく」(2014年12月9日)は、次のとおり報じました.

「降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、英医学誌が千葉大の論文を撤回していたことが分かった。データ改ざんの可能性を指摘した大学の調査結果を受けた措置。著者らは撤回に同意していないが、医学誌側が強制的に撤回した形だ。

 撤回されたのは2012年に英医学誌「ジャーナル・オブ・ヒューマン・ハイパーテンション」に掲載された論文で、今年10月9日付だった。同誌は「利益相反の管理とデータの信頼性に問題がある」と説明している。

 千葉大の調査委員会は、論文で使われたデータがバルサルタンに有利になるよう改ざんされた可能性を指摘。さらに試験責任者の●●●●教授(現東京大教授)ら著者を「虚偽説明で調査を混乱させた」と批判していた。千葉大は8月までに2度、著者らに論文の撤回を勧告している。

 一方、●●氏の代理人は取材に「撤回に同意していない」と話し、11年に別の医学誌に発表した主論文も撤回しない意向を示した。

 一連の論文には薬の販売元であるノバルティスファーマの社員が関わっていたが、論文上は社名が伏せられ、所属は「大阪市立大」となっていた。●●氏らは疑惑発覚後、この点を修正して再投稿していた。【八田浩輔】」


千葉大学のVART研究も、アムロジピンに比べバルサルタンが心臓と腎臓に対する保護効果が大きいという結論は、データ改ざんによって導かれたものであることが明らかになっています.


谷直樹

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by medical-law | 2014-12-13 01:59 | コンプライアンス