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日本医療機能評価機構、「医療事故情報収集等事業第39回報告書(平成26年7月~9月)」

公益財団法人日本医療機能評価機構は、平成26年12月25日、「医療事故情報収集等事業第39回報告書(平成26年7月~9月)」を発表しました.

今回の個別のテーマの検討は、【1】職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故、【2】皮膚反応によるアレルギーテスト実施時の試薬に関する事例、【3】内視鏡の洗浄・消毒に関連した事例です.


◆ 職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故(100~144頁)

「第37回報告書では、職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故事例とヒヤリ・ハット事例を概観し、第38回報告書では、それらの中でも、「薬剤」と「輸血」の事例について分析しました。本報告書では、「治療・処置」「医療機器等」「ドレーン・チューブ」「検査」の事例を取り上げて分析しています。
「治療・処置」の医療事故事例のうち、職種経験1年未満の看護師・准看護師では、「手術」の「開腹」(ガーゼの体内残存の事例)、「一般的処置(チューブ類の挿入)」の「中心静脈ライン」「尿道カテーテル」が複数回報告されていました。一方、職種経験1年以上のそれらの職種の事例では、「末梢静脈ライン」や「尿道カテーテル」などの「一般的処置(チューブ類の挿入)」の報告がもっとも多く、「開腹」以外の「手術」の事例や「血液浄化療法(血液透析含む)」など「その他の治療」を選択している事例も多数報告されていました。
このことから、職種経験1年未満の看護師・准看護師には、まだ経験していない、あるいは関わりを限定されている治療や処置があることが伺えました。
「医療機器等」に関する医療事故事例は、職種経験1年未満の看護師・准看護師の報告は少なく、「酸素療法機器」「心電図・血圧モニタ」「人工呼吸器」などの事例が報告されていました。
「ドレーン・チューブ」に関する医療事故は、職種経験1年以上の看護師・准看護師では「気管チューブ」の事例が多かったのに対し、職種経験1年未満のそれらの職種では「末梢静脈ライン」の点滴漏れや患者による抜去、「栄養チューブ」の患者による抜去の事例が多く報告されていました。「検査」に関する事例は、職種経験1年未満の看護師・准看護師の医療事故事例の報告が3件あり、その内容は「患者取り違え」が2件、「検体のラベルの貼り間違い」が1件でした。これらの報告された医療事故事例とヒヤリ・ハット事例のうち主な事例を紹介し、背景・要因、医療機関の改善策、専門分析班及び総合評価部会の議論を整理して示しています。」


◆ 皮膚反応によるアレルギーテスト実施時の試薬に関する事例(145~150頁)

「本報告書分析対象期間内に、薬剤の成分に含まれていた水酸化ナトリウムについて皮内テストを行ったところ皮膚壊死を起こした事例が報告されています。皮膚反応によるアレルギーテストは、微量でも患者へ大きな影響を及ぼす可能性のある化学物質を含むことがあり、アレルギーテスト実施時の試薬に関する事例に着目することは有用な情報となると考え、分析を行いました。
事業開始(平成16年10月)から本報告書分析対象期間までに、水溶性ハイドロコートン注射液の成分のひとつである水酸化ナトリウムを皮膚反応によるアレルギーテストの試薬としていた事例が2件報告されていました。事例を紹介するとともに、背景・要因や医療機関における改善策をまとめて示しています。」



◆ 内視鏡の洗浄・消毒に関連した事例(151~165頁)

「今回、本報告書分析対象期間において、内視鏡の使用後、適切に洗浄を行わなかったまま、次の患者に使用した事例の報告がありました。
そこで、内視鏡の洗浄・消毒に関連した事例に着目し、事業開始から本報告書分析対象期間までに報告された14件の事例を分析しました。
「洗浄・消毒したものと使用済のものの取り違え」の事例の背景・要因を詳しくみると、すべて院内のルールからの逸脱によるもので、洗浄・消毒したものと使用済のものが混在しない環境や手順を検討することの重要性が示唆されました。
また、「洗浄・消毒方法の誤り」「洗浄・消毒に使用する洗浄器の不具合」についても、主な背景・要因や医療機関の改善策を紹介しています。」


◆ 類似例

類似例は以下のとおりで、一部の医療機関の報告ではありますが、医療事故のおきやすい類型がわかります.

「これまでに提供した「医療安全情報」について、本報告書分析対象期間(平成26年7月~9月)に類似事例の内容は27であり事例数は53件であった。」とのことです.
「膀胱留置カテーテルによる尿道損傷」6件
「小児の輸液の血管外漏出」5件
「抜歯部位の取り違え」3件
「アレルギーのある食物の提供」3件
「グリセリン浣腸実施に伴う直腸穿孔」2件
「手術部位の左右の取り違えおよび手術部位の左右の取り違え(第2報)」2件
「MRI検査室への磁性体の持ち込みおよびMRI検査室への磁性体の持ち込み(第2報)」2件
「注射器に準備された薬剤の取り違え」2件
「湯たんぽ使用時の熱傷」2件
「未滅菌の医療材料の使用」2件
「アレルギーの既往がわかっている薬剤の投与」2件
「清拭用タオルによる熱傷」2件
「PTPシートの誤飲およびPTPシートの誤飲(第2報)」2件
「電気メスペンシルの誤った取り扱いによる熱傷」2件
「画像診断報告書の確認不足」2件
「病理診断報告書の確認忘れ」2件
「禁忌薬剤の投与」2件

「「共有すべき医療事故情報」について本報告書分析対象期間に類似事例が報告された共有すべき医療事故情報の内容は17であり、事例数は57件であった。」とのことです.
「『療養上の世話』において熱傷をきたした事例」8件
「熱傷に関する事例(療養上の世話以外)」7件
「ベッドのサイドレールや手すりに関連した事例」5件
「体内にガーゼが残存した事例」5件
「病理検体に関連した事例」5件
「ベッドなど患者の療養生活で使用されている用具に関連した事例」4件
「施設管理の事例」3件
「アレルギーの既往がわかっている薬剤を投与した事例」3件
「ベッドからベッドへの患者移動に関連した事例」3件
「眼内レンズに関係した事例」3件
「食物アレルギーに関連した事例」3件
「注射器に準備された薬剤の取り違えの事例(名前の記載あり)」2件
「注射器に準備された薬剤の取り違えの事例(名前の記載なし)」2件

「個別テーマについて本報告書分析対象期間に類似事例が報告されたテーマは、7テーマであり、事例数は13件であった。」とのことです.
「画像診断報告書の内容が伝達されなかった事例」3件
「胸腔穿刺や胸腔ドレーン挿入時に左右を取り違えた事例」3件
「医薬品添付文書上【禁忌】の疾患や症状の患者へ薬剤を投与した事例」2件
「血液検査採取時、患者間において採血管を取り違えた事例」2件




谷直樹

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by medical-law | 2014-12-29 03:08 | 医療事故・医療裁判