弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

北里大学病院、右頸部血腫の気道圧迫により窒息に至った医療事故の報告書

北里大学病院は、2015年1月19日、「右頸部血腫の気道圧迫により窒息に至った医療事故の報告書」を公表しました.

◆ 原因分析

「 【お亡くなりになった直接の要因】
① 右頸部に生じた巨大血腫が気道を圧迫し、このために気管内挿管が困難となり、気道確保までが遅れたため、低酸素脳症、多臓器不全に至ったこと。

【血腫の形成・増大を来たした要因】
① 自己末梢血造血幹細胞採取目的のカテーテル操作の際に、右頸部の動脈を穿刺したこと。
② カテーテル内の血液が固まってしまうことを防ぐため、薬剤(へパリン)を用いた際、体内に過剰のへパリンが入ったこと。

【この医療事故を起こした背景要因】
① 当該科の診療体制、教育指導体制に不備があったこと。
② 処置を担当する医師、看護師など、医療従事者相互の情報共有やコミュニケーションが不十分であったこと。

【具体的な問題点】
① 処置を実施する場合には、指導医や上級者は事前に実施手順を確認し、準備状態を確認し実施させることや、指導医や上級者が責任を持って支援するという体制が整備されていなかった。
② リスクの高い処置を開始する前に、処置に関わる医療従事者間で情報を共有し、具体的な基準、手順、とくに注意すべき点、起こりうる危険、問題が生じた場合の対応等についてのブリーフィングや確認が行われていなかった。」


◆ 外部委員の提言

「調査検討会(外部調査)委員の提言は、下記の通りでした。
(1) 組織として、リスクの高い処置について、リスクを低減化するプロセスの共有と手順の遵守。
① 北里大学病院で行われている医療処置の中で、リスクの高い処置は何かを関連部門の職員が共有し、その処置について、5WIH の考え方で基準を定め、手順書を作成する。
② 処置の実施に当たっては、経験や記憶に頼らず、基準、手順に従い確実に実施するように習慣化する。
③ 処置の実施にあっては、手順や起こりうる危険について共有し、問題が生じた場合の対処方法を共有し、処置終了後に最終確認を行うことを手順に含めておく。

(2) 全職員が、チームとして情報共有のための技術を高め、ルールを定めて問題や課題を協同して解決する姿勢を養う。
① お互いが感じ、考えている懸念や問題について常に情報交換を行い、問題が大きくなる前に、発見し対処できるようにする。
② チームSTEPPS などの手法を用いて具体的なコミュニケーション技術を身につける。また、コミュニケーションが上手くいかない場合のルールも定めておく。

(3) リスクの高い医療行為を、安全を確保して確実に実施できる技術を身につけられる体制を整える。
① 研修医及び新人教育体制を確立する。
② 医療技術や知識の習熟レベルに応じて、実施可能な医療行為を明確にする。
③ リスクの高い医療行為が実施可能な基準を定めて、習熟していないスタッフが処置を実施する場合には、指導医や上級者が事前に実施手順を確認し、準備状態を確認して実施させる。
④ 習熟するまで、指導医や上級者が責任をもって支援する体制を作る。

(4) 安全文化の醸成
① 北里大学病院において、侵襲的な処置を実施する際には、処置を担当する医療者相互がリスクを共有し、患者安全が確保された手順書に従って実施することを最優先とする安全文化を育てる。」


北里に限らず大学病院にありがちな背景事情と思います.
医療事故が起きたときは、このように調査検討会(外部委員)による調査・検討が原因の究明と再発防止に役立ちます.


谷直樹


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by medical-law | 2015-01-19 23:42 | 医療事故・医療裁判