弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

名古屋高裁平成27年1月23日逆転判決,ステントグラフト挿入による動脈損傷について医師の過失否定(報道)

朝日新聞「遺族側が逆転敗訴 手術後の男性死亡事故で名古屋高裁」(2015年1月23日)は,次のとおり報じました.

「人工血管を取り付ける手術後に死亡した男性(当時76)の遺族が、愛知県豊橋市の豊橋市民病院に損害賠償を求めた訴訟で、名古屋高裁(林道春裁判長)は23日、病院に約5100万円の賠償を命じた一審・名古屋地裁判決を取り消し、訴えを棄却する判決を言い渡した。

 男性は2002年7月、脚の付け根から人工の血管を入れる手術を受けた際、腰付近の血管の損傷による出血性ショックの状態になり、8日後に死亡した。

 2011年の名古屋地裁の判決は、執刀医が血管の抵抗に応じて器具を挿入する注意義務を怠った過失があると認定した。これに対し、23日の高裁判決は、損傷は執刀医が抵抗を感じない程度の刺激で生じたもので、避けられなかったと認定。過失はなかったと結論づけた。」


これは,医師が大動脈解離を発症した76歳の男性患者にステントグラフトを挿入したところ動脈損傷による出血性ショックとなり,翌月患者が死亡した事案です.ステントグラフト挿入の際,医師は特段抵抗を感じなかったとのことです.

医師が抵抗を感じなかったと証言した場合,それは,医師に不注意があったからなのか,その患者の血管が脆弱になっていたからなのか,が争いになります.
医療行為が原因で動脈損傷が発生し,それについて病院が全く責任を負わないという判決は遺族にとっては容易に受け入れがたいものではないかと思います.しかし,他方,医師の側からすると,通常通り注意深く操作したのに悪い結果が生じたことで過失があるとされたのではたまったものではないと考えるでしょう.大動脈解離を発症した患者の動脈損傷は一筋縄ではいかない難しい事案です.

名古屋地裁平成23年10月28日判決は,血管の弾力性のデータなどに基づき抵抗を感じなかったのは医師が必要な注意を怠ったためと認定しました.
これに対し,名古屋高裁平成27年1月23日判決は,弱い刺激で損傷が起きたので医師の注意義務違反(過失)はなかったものと認定したわけです.地裁判決から高裁判決まで長い年月がかかっているので,おそらく鑑定書など追加の証拠が提出された結果なのでしょう.
判例集に公開されたら,判決文を熟読したいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2015-01-24 06:35 | 医療事故・医療裁判