弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

群馬県立心臓血管センター,術後の血圧低下の報告を受けた医師が患者を診察せず死亡の事案で賠償(報道)

WSJ「医療ミスで4300万円賠償=60代女性が術後死亡—群馬県」(2015 年 2 月 9 日)は,次のとおり報じました.
「群馬県立心臓血管センター(前橋市)は9日、不整脈の手術を受けた県内の60歳代の女性患者が合併症で死亡する医療ミスがあったと発表した。県は遺族に謝罪し、賠償金4300万円を支払う。
 同センターによると、女性は2013年12月に不整脈の手術を受けた後、血圧が低下。看護師が2回にわたり主治医に報告したが、主治医は経過観察を指示し診察はしなかった。女性は心肺停止状態となり、合併症を起こしていることが判明。14年1月に死亡した。[時事通信社]」


日本テレビ「術後に容体悪化も医師は診察せず」(2015 年 2 月 9 日)は,次のとおり報じました.
「女性は、手術した日の夜遅くに吐き気や血圧の低下がみられ、それを看護師が医師に伝えたが、2人の医師は経過観察を指示するなどして直接診察せず、女性は心膜と心臓の間に体液が異常にたまる合併症で、心肺停止の状態になった。その後、女性は去年1月になって死亡したという。」

心臓手術後に縫合部から出血し,心タンポナーデをきたすことがあります.心タンポナーデは,心嚢内液体貯溜により循環に障害が生じている病態です.臨床症状として,ベックの三徴(頸静脈怒張,低血圧,心音減弱,ただし3つとも揃うわけではありません)等が知られています.
そこで,心臓手術後に血圧低下の報告を受けたときは,医師は,当然,出血,心タンポナーデの可能性を考えねばなりません.医師2名が経過観察を指示したのは,明らかな注意義務違反(過失)にあたります.血圧低下の報告を受けたときに,心タンポナーデの可能性を考え心エコー検査を実施していれば心タンポナーデを診断できたはずで,死亡結果は回避できたはずです.


【追記】

朝日新聞「手術後、ミス重なり死亡 県が4300万円賠償へ」(2015年2月10日)は,次のとおり報じました.

県立心臓血管センター(前橋市亀泉町)は9日、2013年12月に不整脈治療の手術をした県内の60代女性が翌月死亡した医療事故があり、術後の対応ミスで合併症の発症を見落としたことが死亡の原因となったとする調査結果を記者会見して発表した。県は責任を認め、遺族に約4300万円を賠償するための議案を16日開会の県議会に提出する。
 大島茂院長らによると、女性は13年12月、カテーテルを心臓内部に挿入して不整脈の原因の心筋部分を高周波電流で焼く「カテーテルアブレーション治療」を受けたが、翌日早朝に心肺停止状態となり、心臓マッサージで心拍が戻ったものの、脳死状態と診断され、14年1月に死亡した。
 女性は手術終了から約7時間後の午後11時ごろに吐き気などを訴え、血圧も66に低下していた。看護師が吐き気止め薬を注射するなどした後、当直医と主治医に報告し、主治医が輸液と経過観察を指示したが、ともに診察はしなかった。翌日午前5時10分ごろ、夜勤の看護師が心電図モニターの電極パッドが外れ、心肺停止状態の女性を見つけた。心膜と心臓の間に体液がたまる心タンポナーデを発症したとみられる。」



 谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-02-10 03:18 | 医療事故・医療裁判