弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

日本医療機能評価機構、医療事故情報収集等事業第40回報告書

公益財団法人日本医療機能評価機構は、2015年3月26日、医療事故情報収集等事業第40回報告書(平成26年10月~12月)を公表しました.
今回とりあげた個別のテーマは、「職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故」「カリウム製剤の急速静注に関連した事例」「放射線治療の照射部位の間違いに関連した事例」「口頭による情報の解釈の誤りに関連した事例」です.

◆ 職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故

報告書は、「職種経験1年未満の看護師・准看護師の事例には、「知識不足(経験不足)」「思い込みによる安易な実施」や「危険性の認識不足」といった職種経験1年未満の看護師・准看護師側の要因と、「知識・技術の評価体制の不備」「職場内のルールが曖昧または形骸化」といった職種経験1年未満の看護師・准看護師を取り巻く環境の2つの特徴があることが示唆された。」とまとめています.

環境の側の要因もある、という指摘は重要と思います.

◆ カリウム製剤の急速静注に関連した事例

報告書は、「カリウム製剤は、急速静注すると不整脈や心停止を起こすことがあるため、ハイリスク薬とされ
ている。急速静注は禁止であることだけでなく、なぜ禁止なのか、急速静注したらどうなるのかということまで含めた十分な知識を持つことの重要性が示唆された。また、投与方法・投与速度の指示を明確にすること、少しでも不明な点があれば確認するように習慣づけることが必要である。
急速静注できないようなプレフィルドシリンジ製剤などのキット製品を医療機関で採用することは改善策の一つであるが、医療者がその製剤の意味を理解した上で使用することが重要である。また、カリウム製剤によって販売名や薬液の色が異なることに注意が必要であり、自施設のカリウム製剤を確認しておくことの重要性が示唆された。
」とまとめています.

私は、以前、カリウム製剤の急速静注事案の訴訟を担当したことがあり(裁判上の和解で終了)、大変興味深く読みました.

◆ 放射線治療の照射部位の間違いに関連した事例

「照射部位の間違い 20
過剰照射 8
熱傷 5
患者取り違え 5
機器の不具合 4
機器の設定間違い 3
その他 3
合 計 48」


やはり、放射線部位の間違いが多いことがわかります.

報告書は、「放射線治療の照射部位の間違いに関連した事例20件について、外部照射14件と内部照射6件に分類し分析をした。外部照射は、ⅰ左右の取り違え5件、ⅱ照射範囲のずれ6件、ⅲ照射部位の取り違え1件、ⅳ照射範囲の過不足2件であり、事例の内容や主な背景・要因などを取りまとめた。
外部照射の照射範囲のずれの背景・要因から、医師、診療放射線技師、看護師など職種を超えたチームで情報を共有し、相互チェックができる仕組みを医療機関において検討する重要性が示唆された。
また、外部照射の照射部位の取り違えの背景・要因から、医療機関において、職種横断的な確認ができるシステムやルールを構築する必要性が示唆された。
内部照射はすべて線源やアプリケータの位置の間違いに関する事例であり、背景・要因から、線源の留置の確認の際に、チェックすべき事項を明示することや熟練した医師が確認する体制などを検討することが重要であることが示唆された。」
とまとめています.

現在私が示談交渉・医療ADRを依頼されている事案のなかにも放射線誤照射事案がありますので、とくに関心をもって読みました.、

◆ 口頭による情報の解釈の誤りに関連した事例

報告書は、「口頭による情報の解釈の誤りに関連した事例30件について、薬剤、治療・処置、検査、療養上の世話に分類し、事例の内容や主な背景要因等を取りまとめた。
薬剤の事例のうち、情報を伝える側と、受け取る側の薬剤の希釈に関する解釈の誤りは10件、薬剤の単位の誤りは7件と多く、投与量の誤りが5件、薬剤の投与方法は2件、その他は3件であった。
薬剤の事例では、経験の浅い研修医や看護師が口頭による情報の解釈を間違えた事例が多かった。
特に経験が浅いスタッフに対しては、当然に分かっているであろう院内ルールや略語についても、内容が理解できるよう情報を提供する必要があることが示唆された。医療機関では口頭指示の場合、単位は略さずに行うことを取り決めていることもあるが、日常から薬剤の単位を略さずに表現し、習慣付けておくことの重要性が示唆された。  
治療・処置、検査、療養上の世話の事例では、医療者の想定する言葉と患者がイメージする言葉の違いが起きる可能性があるため、医療者は患者に説明する際には、医療者の質問の意図が伝わるように、具体的に話すことの重要性が示唆された。
」とまとめています.

医療事故・医療過誤の大半は、シンプルなミスによるものです.
その対策もシンプルです.

 谷直樹

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by medical-law | 2015-03-27 01:42 | 医療事故・医療裁判