弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

フィラデルフィアの連邦裁判所,NFLが元選手の慢性外傷性脳症(CTE)で10億ドル和解へ

日本経済新聞「NFL集団訴訟、健康被害で和解 賠償金計1200億円」(2015年4月23日)は,次のとおり報じました.

「【ニューヨーク=共同】米プロフットボール、NFLの元選手が現役時代のプレーで脳に健康被害が生じたとしてリーグに損害賠償を求めていた集団訴訟が22日、フィラデルフィアの連邦裁判所で和解に達し、総額で10億ドル(約1200億円)にも上る賠償金がNFLから支払われる見通しとなった。訴訟では5千人以上が原告となっていた。AP通信など米メディアが報じた。

 NFLを引退した約2万人のうち、将来的に6千人がアルツハイマー病や認知症になる恐れがあると推定されている。和解案では1人平均19万ドル(約2280万円)の賠償金を受け取る。30代や40代でパーキンソン病と診断された場合や、脳の損傷が死因だった元選手には最高で500万ドル(約6億円)が補償される。」

頭部への繰り返される衝撃に因り,タウ蛋白陽性の神経原線維変化が進行し,パンチドランカー同様の脳障害を引き起こすことが知られています.
この慢性外傷性脳症(Chronic traumatic encephalopathy)は,生存中にタウ蛋白を調べることが難しく,解剖しないと正確な診断ができません.
NFL(National Football League)は,頭部への繰り返される衝撃が脳障害を引き起こすことを知っていました.NFLは,豊富な資金で研究者にアメリカンフットボールとの因果関係を否定する報告を発表させました.しかし,結局,因果関係を否定する見解は多数とはなりませんでした.
そして,裁判所で,このような和解が成立する見通しとなったわけです.

ボクシング,アメリカンフットボール以外でも頭部への衝撃が繰り返されるスポーツでは,同様のことが起こり得ます.
認知症等のリスクを減らしたければ,頭部が衝撃を受ける危険のあることは,極力さけたほうがよいと思います.


 谷直樹

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by medical-law | 2015-04-24 02:18 | 司法