弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

AEDの使用が遅れたために植物状態になったとして仙台医療センター仙台オープン病院が提訴される(報道)

河北新報「「AED処置遅れ植物状態」男性が病院提訴」(2015年6月2日)は,次のとおり報じました.

 「仙台オープン病院(仙台市宮城野区)に入院した宮城県大和町の男性(57)が心肺停止後に遷延性意識障害(植物状態)になったのは、自動体外式除細動器(AED)の使用が遅れたためだとして、男性と妻が1日、病院を運営する公益財団法人仙台市医療センター(同)に1000万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。
 訴えによると、男性は2013年4月、十二指腸がんで入院。手術後、腹部の激しい痛みを訴え、コンピューター断層撮影(CT)を実施したところ、撮影中に心肺停止状態となった。男性はAEDの使用で約15分後に蘇生したが、現在も意識が戻っていない。
 男性側は「病院は男性の心肺停止後、別の蘇生法を試すなどしていた。AEDを直ちに使用していれば、植物状態になるのを避けられた可能性が高い」と主張している。
 賠償請求額は男性の事故前の収入などから約8040万円と算定したが、今回は一部の請求にとどめた。審理の状況に応じて増額するという。」


 心停止後脳に血液が供給されなかった時間が長ければ,蘇生しても虚血により脳が受けたダメージは回復せず,遷延性意識障害(植物状態)となってしまいます.
 院内での心停止で蘇生できた症例の場合,すみやかに除細動を行っていれば結果が違っていた高度の蓋然性が認められると思います.救急科専門医指定施設内での心停止について15分後の除細動では対応が遅い,と言わざるを得ません.
  なお,本件は私が担当した訴訟ではありませんが,私も同様の事案を担当しています.このような医療事故は結構多いのかもしれません.


 谷直樹


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by medical-law | 2015-06-03 01:04 | 医療事故・医療裁判