弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

大学病院,収賄再発防止策機能せず謝罪(報道)

京都新聞「「汚職防止策が機能せず」 元准教授起訴で謝罪」(2015年7月3日)は,次のとおり報じました.

「×××被告の起訴を受け、病院長が3日、京都市左京区の同病院で会見し、「本院として誠に遺憾であり、このような事態が生じたことを大変申し訳なく思う」と謝罪した。

 病院長は、今年2月12日に京都府警から××被告が収賄に関わっている疑いがあると知らされ、捜査協力を求められたと説明。病院も6月11日から内部調査を始め、今月2日には外部の有識者も入れた本格的な調査委員会の設置を決めたことを明かし、「引き続き事実の確認を進め、公判の状況も踏まえ、厳正に対処していく」とした。

 2012年にも薬学研究科の元男性教授が収賄容疑で東京地検に逮捕され、物品納入の手続き厳格化などの再発防止策を進めてきたが、病院長は「現実には十分に機能しなかった。深刻に受け止めている。今後さらなる再発予防に努める」と述べた。

 記者からはほかにも、院内で医療用ポンプの水増し発注の疑いがあることや、入札契約や科学研究費の使途のチェック体制について質問が出たが、「調査中」と繰り返し、答えなかった。」



毎日新聞「病院汚職:接待の要求さえ…担当者の強い権限裏目に」(2015年7月3日)は,次のとおり報じました. 

「○○病院の医療機器購入を巡り、収賄罪で起訴された××被告は、京都府警の調べに「接待を受けるうちに感覚がまひし、自分を見失った」と供述したという。同病院は3日、事件発覚後初めて記者会見し、「誠に遺憾で大変申し訳ありません」と陳謝したが、癒着の原因や背景については「調査中」と繰り返すのみだった。

 ◇癒着が日常化

 「明日、肉料理どうですか。予約お願いします」。捜査関係者によると、××被告は贈賄罪で罰金命令を受けた西村器械の社員に対し、物品以外に接待もメールで要求していた。祇園の高級クラブなどでの接待は2011年7月から14年4月まで約50回にわたり、総額約50万円を負担させていたという。

 病院関係者によると、一般に医療機器の契約は高額で、維持管理や備品などの契約も見込めるため、業者にとっては「うまみ」が大きい。そのため競争も激しく、同病院のある医師は「表立った接待は減ったが、目の届きにくい海外の学会に業者が同行して医師を接待する話は今もよく聞く」と明かした。

 業界団体「医療機器業公正取引協議会」(東京都文京区)は自主規制基準で、発注側への金品提供などを禁止しているが、対応は「各社のコンプライアンス(法令順守)と同業他社間の相互監視」(協議会事務局)に任されているという。

 ◇強い権限

 今回問題になった医療機器購入は、入札ではなく全て随意契約だった。規定で、契約額100万円以上で相見積もり、500万円以上は公募型見積もり合わせを義務付けていたが、選定では、担当者個人が強い権限を持っており、不正の抑止にはつながらなかった。

 病院関係者は「専門領域では、担当医が必要と主張した医療機器に関し、周囲が口を出しにくい」と話す。××被告は海外でも論文が評価される若手のエース的存在だったといい、周囲の監視がより効きにくかったとみられる。

 ◇再発防止は

 ○○大では12年、薬学研究科発注の物品調達を巡って元教授による汚職事件が起き、研究者と業者の癒着が問われた。今回の事件発覚も、きっかけは同病院の別の元技師と業者の癒着疑惑で、根は深いといえる。

 院長は記者会見で、内部調査を踏まえ、外部識者も含めた調査委員会を近く発足させることを表明したが、問題点や対策などについては口をとざした。

 病院経営に詳しい医療コンサルタントは「自治体の病院に比べ、大学病院には公務という認識が低いと感じる。再発を防止するには、問題意識を持ってチェック機能を再整備する必要がある」と指摘する。【村田拓也、宮川佐知子、川瀬慎一朗】」



産経新聞「「ふさわしい物を持つべきと賄賂を要求」 元准教授を起訴 京都地検」 (2015年7月3日)は,次のとおり報じました.

「○○病院の研究医療機器の納入をめぐる汚職事件で、京都地検は3日、収賄罪で同病院臨床研究総合センター元准教授の医師、×××容疑者(47)を起訴した。××被告が「准教授にふさわしい物を持つべきと考え、賄賂を要求するようになった」と供述していることが京都府警への取材で分かった。」

「起訴状などによると、××被告は血管再生医療の研究プロジェクトで使用する医療機器を随意契約で発注した際、同社が有利に受注できるよう取り計らった謝礼として、平成22年12月~25年9月、海外製のキャリーバッグやスピーカーなど計17点(約95万円相当)を受け取ったとされる。

 京都府警によると、××被告は23年7月から26年4月までの間、祇園などの寿司屋や高級クラブで飲食接待を受けていた。「接待を受けるうちに常識がまひしていった。これぐらい大丈夫だろうと甘い認識があった」と供述したという。
○○病院は3日、××被告の逮捕後、初めて記者会見した。病院長が「このような事態になり、申し訳ない」と謝罪。「世間を騒がせることになり、どこかで謝罪しなければならないと思っていた。もっと早くに会見すればよかったが、このタイミングになってしまった」と述べた。

 今後、大学と病院それぞれの調査委員会が事実関係を調べ、「その結果を受けて厳正に対処する」としている。」



逮捕以降沈黙を守り続けてきていましたが,ここにきてようやく会見を行いました.ただし,具体性のある内容ではなかったようです.
医療機器,研究機器の採否の判断はたしかに専門的知識が必要ですが,事実上一人の医師・研究者が独断で購入を決定しチェックも働かないようでは,贈賄収賄の温床となってしまうと思います.

大学と病院でそれぞれの別の調査委員会を設けているところが,複雑な事情を示唆していると思います.

谷直樹


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by medical-law | 2015-07-04 05:43 | コンプライアンス