弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

東京高裁、副神経傷害事案で病院の控訴棄却(報道)

東京新聞「伊勢崎市民病院の医療ミス 市に3600万円 控訴審も賠償命令」 (2015年7月9日)は、次のとおり報じました.

「伊勢崎市民病院でリンパ節を摘出する手術を受けたブラジル国籍の二十代の女性が、医師のミスで左腕が上がらなくなる後遺症を負ったとして、病院を運営する伊勢崎市に約四千百万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は八日、約三千六百万円の支払いを命じた一審判決を支持し、市側の控訴を棄却した。
 大竹たかし裁判長は昨年十二月の一審前橋地裁判決に続き、手術の際、女性の左副神経が誤って切断されたとして、病院側の過失を認定した。
 判決によると、女性は二〇〇九年五月、手術を受けた。別の病院で再手術を受けたが、十分に回復しなかった。
 伊勢崎市民病院は「判決を精査して対応を考えたい」とコメントした。」

 
本件は私が担当したものではありません.
プロゴルファーを目指していた女性が、2009年5月に首のリンパ節の腫れが悪性リンパ腫かを調べるための手術を受けたところ、担当医がリンパ節付近を走る副神経を損傷させ、左腕が上がらない状態になったという、手術ミスの事案です.副神経は、胸鎖乳突筋や僧帽筋を支配する運動性の神経で、副神経が損傷されると腕が水平より挙がらないなどの障害がおきます.報道の件は時間的関係からしても副神経を傷害した原因は手術以外に考えがたく、副神経を傷つけないという注意義務に違反したものと考えられます.この手術ミスの事案で、そもそも控訴は無理だったのではないでしょうか.

 
谷直樹


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by medical-law | 2015-07-10 00:29 | 医療事故・医療裁判