弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

松阪市民病院,肝臓ラジオ波焼灼術(RFA)施行後の死亡事故を公表

松阪市民病院は,2015年7月31日,ホームページで,「肝臓ラジオ波焼灼術(RFA)施行後の死亡事故」を次のとおり公表しました.

「事故発生場所:三重県松阪市殿町1550番地 松阪市民病院 病室
医療事故レベル5
患者:80歳代 男性
基礎疾患:心筋梗塞、糖尿病、末期腎不全
事故発生までの経過:上記治療のため入院中に肝細胞癌と診断された。
事故発生日時:平成27年3月

概要
RFA実施後血圧が低下したため抜針する。その後血圧が上昇したため検査室を退室した。心臓の動きに変化はなく、腹部超音波検査も施行し、腹水貯溜を認めるが出血ではないと判断した。帰室後約1時間経過時血圧低下、SPO2低下あり昇圧剤の使用、BiPAPによる呼吸サポートを開始した。血液検査Hb6.8mg/dl、再検査Hb8.0mg/dlであり出血は考えなかった。その後心肺停止となりRFA施行約11時間後に死亡された。

事故後の対応および再発防止策
死亡後病理解剖を施行した。腹腔内に約700mlの濃血性腹水が確認された。
医療安全管理委員会の開催および、「松阪市民病院医療事故判定委員会設置要綱」第1条に基づき、外部委員を指名し医療事故判定委員会を開催し事故について検証を行った。
その結果、坑血小板剤の服用が継続されていたこと、出血を腹水と判断したこと、早期に出血の可能性の診断が出来ていれば救命の可能性があったと思われる。

再発防止策としては、
1)RFA施行に関しては未だ統一されたガイドラインが存在しないが、プラビックス、コンプラビンなどの坑血小板剤使用時にはTAE(TACE)は行うがRFAを施行しないなどの手順を決める。
2)RFA施行時のトラブルに関して、あらかじめ検査などの手順を決めておく。
3)同意書に施行手技に基づく重大事故での死亡率なども記入する。
4)侵襲のある処置、検査などの場合は転科をすることで、より主体的に医師が関与していく。」



読売新聞「医療ミス遺族に1500万円支払い松阪市民病院」(2015年7月31日)は,次のとおり報じました.

「三重県松阪市は30日、市民病院で肝臓がんの手術を受けた県内の男性(当時82歳)が死亡する医療ミスがあり、遺族に1500万円を支払うことで22日に示談が成立した、と発表した。

 市によると、男性は今年1月、狭心症などで市民病院に緊急入院。肝臓がんが見つかったため、消化器内科の40歳代の男性医師が3月4日、がんを焼き切る手術をした。その後、焼き切った部分から約700ミリ・リットルの出血があったが、医師は腹水と判断。男性は容体が急変し、翌5日未明に死亡した。死因は腹腔内出血による出血性ショック。男性は狭心症の治療で、血液を固まりにくくする抗血小板薬を服用していたという。

 小倉嘉文院長は遺族に謝罪した上で、「病院側の判断ミスで申し訳ない。再発防止策を徹底し、市民の信頼に応えられるように努力したい」とした。」


朝日新聞「肝臓がん手術後、医療ミスで三重県内の男性死亡 松阪市民病院」(2015年7月31日)は,次のとおり報じました.

 「3月4日にがん細胞をラジオ波の電流で死滅させる手術後、心肺停止して翌5日に死亡し、いったんは心不全が死因と診断した。
 ところが解剖の結果、腹部内に約700ミリリットルの出血が確認され、死因をラジオ波手術による出血性ショック死と変更した。」



 私は,関東地方の或る大学病院におけるRFAの際の出血による死亡事故を担当していますが,報道の件は私が担当したものではありません.
 松坂市民病院の事案は,解剖の結果腹部内に約700ミリリットルの出血が確認され,死因が心不全から出血性ショックに変更され,医療事故を認識されました.解剖の重要性を痛感します.
 また外部委員を含む医療事故判定委員会で事案の解明につとめたことが,原因究明,再発防止,比較的早期の示談解決につながったと思います.

谷直樹


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by medical-law | 2015-08-02 11:48 | 医療事故・医療裁判