弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

戦後70年にあたっての総理大臣談話

死者を迎え送るお盆です.夏の夜の迎え火・送り火,灯籠流し,花火はとても美しい.

ポツダム宣言の受諾は1945年8月14日です.
天皇陛下がポツダム宣言の受諾を国民に伝えた8月15日が,日本では,終戦記念日とされています.
その終戦記念日における戦没者の慰霊行事は,戦争についての総括と指針を示す重要なものです.
政府は,戦後70年にあたっての総理大臣談話を発表しました.
決定までには紆余曲折があったようですが,村山談話の「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「お詫び」のキーワードが用いられました.

「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。植民地支配から永遠に訣別し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。

 先の大戦への深い悔悟の念と共に、我が国は、そう誓いました。自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを堅持してまいりました。七十年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たちは、静かな誇りを抱きながら、この不動の方針を、これからも貫いてまいります。

 我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。

 こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。」


 総理曰く具体的にどのような行為が「侵略」にあたるかは歴史家の議論に委ねるべき(!),とのことで,あの戦争が「侵略」にあたるとうけとられないような表現になっています.この点は後退といえるでしょう.

 「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。しかし、それでもなお、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。」

 この部分の解釈は微妙です.謝罪は終わりにしたい,という総理の本音が現れているのでしょう.「しかし」と続き,「世代を超えて」とあるので,村山談話から逸脱していないとも読めますが.

 キーワードが入ったのは一応評価しますが,多方面に配慮し,論旨に一貫性がない(揺るぎないと言いながらぶれている).真摯な反省の心のない談話と言えるのでないしょうか.美しくない文章と思いました.


谷直樹


ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2015-08-14 23:38