弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

帝王切開後の肺塞栓症の予防義務違反の裁判(報道)

朝日新聞「帝王切開の手術後、「医療ミス」と提訴 沼津市に賠償請求」(2015年10月21日)は,次のとおり報じました.

 「沼津市立病院(沼津市東椎路)は19日に開かれた市議会民生病院委員会で、県東部の女性(41)とその家族から2009年に女性が同病院で帝王切開手術後、低酸素脳症から植物状態に陥ったのは医療ミスが原因だとする損害賠償請求訴訟を起こされたことを明らかにした。

 病院によると提訴は6日付。訴えでは、女性は2009年3月5日、沼津市立病院で帝王切開手術を受けた。しかし翌6日、肺動脈が詰まって血液の流れが悪くなってしまう肺動脈血栓塞栓(そくせん)症を発症。一時病状は安定したものの、同月9日になって再発したのに伴い、低酸素脳症も併発し、植物状態に陥った。女性は現在も意識不明のままで、家族側は帝王切開前の肺動脈血栓塞栓症の予防が十分でなかった、などと主張している。」


本件は,私が担当したものではありませんが,記事のタイトルは不正確ではないでしょうか.
記事を読む限り,手術ミスというより,肺塞栓症予防義務違反の問題です.
妊産婦死亡事故の原因の1つにあげられているのが肺動脈血栓塞栓症です.
裁判例では,「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」より2年前の事案の東京地裁の患者側敗訴判決がありますが,現在の医療水準では帝王切開後の肺塞栓症予防義務は認められるでしょう.帝王切開後の肺塞栓症を帝王切開前に予防する義務については,新しい裁判例になるでしょう.仮に帝王切開前の予防義務違反が認められたとして,その肺塞栓症予防義務違反と結果との因果関係が争点になるでしょう.因果関係について,高度の蓋然性まで認定できるか,相当程度の可能性にとどまるか,相当程度にも達しないか,は具体的な事案によるでしょう.


 谷直樹


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by medical-law | 2015-10-21 08:55 | 医療事故・医療裁判