弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

名古屋大学医学部附属病院, 腎癌術後フォロー中、原発性肺癌進行の発見が遅れた事例について

名古屋大学医学部附属病院は, 平成27年12月21日,腎癌術後フォロー中、原発性肺癌進行の発見が遅れた事例があったことを以下のとおり公表しました.

 「名古屋大学医学部附属病院(以下「当院」という。)泌尿器科において,他病院で左腎癌腹腔鏡下根治的腎摘除術を受けた患者さんに対し,2007年11月から術後フォローを目的として定期的な外来通院と,CT検査を行っていました。2012年6月,患者さんの左肺に経時的に増大する不整形陰影を認めたため,それまでのCT画像を振り返ったところ,同病巣は従前から認められることが判明しました。精査の結果,同病巣は原発性肺癌と診断され,発見の遅れが疑われました。一連の画像診断には,泌尿器科外来医師2名,放射線科一次読影医9名,二次読影医2名(当院放射線科では1人の患者さんの画像読影を複数の医師で行っている。最初の読影を一次読影と呼び,2回目の読影を二次読影と呼ぶ。)の合計13名が関わっていました。
 本事例は2012年6月に当院医療の質・安全管理部に報告があり,患者さん及びご家族からの要望に応じて情報を提供しながら治療をしましたが,患者さんは肺癌の悪化により,2014年3月に亡くなられました。」

 直ちに臨時医療の質向上と安全推進委員会(長尾能雅委員長)を開催し,一連の治療過程を検証した結果,同委員会は,本事例についての第三者専門家による詳細な検証が必要と判断し,石黒直樹病院長に事例調査委員会を設置するよう進言しました。これを受け石黒病院長は,複数の外部専門家を主体とする事例調査委員会を招集しました。事例調査委員会は2回開催され,2015年10月に調査報告書を取りまとめました。
 当院では,この調査結果を受け,当院の診療行為に落ち度があったものと考え,深く反省するとともに,12月15日に患者さんのご遺族に対し説明を行い,併せて謝罪いたしました。このたび,ご遺族のお許しをいただきましたので,調査報告書の概要を示し,本事例の経緯等について皆様にご報告申し上げます。
 また,当院では,本事例調査結果を院内で共有するとともに,別紙の通知を行いました。
 以上,本事例については,事案の重大性,他病院に対する警鐘,再発防止の必要性に鑑み,公表させていただきました。
 患者さんのご遺族にあらためて謝罪申し上げるとともに,上記調査報告書において示された提言を真摯に受け止め,再発防止に職員一丸となって取り組む所存です。」


中日新聞「がんを3年見落とし、患者死亡 名古屋大病院」(2015年12月21日)は,次のとおり報じました.

「石黒直樹病院長は「医療ミス」と認め、遺族に謝罪した。賠償する方針も明らかにした。

 亡くなったのは県内の40代男性で、2007年6月から名大病院に通い始めた。直前に別の病院で腎臓がんの手術を受け、将来の他の器官への転移の有無を調べるためだった。

 半年に一度、名大病院でコンピューター断層撮影(CT)検査を受けたが、主治医らは肺の異常に気付かなかった。男性が胸に痛みを感じ、12年5月に別の病院で診察を受け、肺がんが判明した。既に悪化しており、14年3月に死亡した。

 過去のCT画像にがんとみられる陰影が写っていたことが分かり、名大病院は男性の死後、検証のための調査委員会を設置。09年5月にはがんの可能性に気づくことができたと結論づけた。当時、手術していれば、5年後の生存率は82%だったという。

 男性はCT検査を10回受け、計13人の医師が診断に関わっていた。調査委は見落としの原因を「主治医がCT画像の診断を放射線科に委ね、自らチェックしなかった」と指摘した。また放射線科の医師は腎臓がんの転移にとらわれていたなどとして診断態勢の改善を求めた。」


癌の見落としは大変残念ですが,名大病院の事故調査をはじめとするその後の対応は誠実だと思います.
私が担当している訴訟事案では,被告は全く別の医療機関ですが,見落としがなかった場合の5年生存率が90%をはるかにこえるのに被告は見落としと死亡との因果関係がないと主張してきました.
医療機関の対応はいろいろです.


谷直樹


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by medical-law | 2015-12-22 01:30 | 医療事故・医療裁判