弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

医療問題十大ニュース2015

今年,ニュースとなった医療問題について,振り返ってみます.

1 群馬大学医学部附属病院の消化器科手術事件
事故調査委員会(上田裕一委員長)は,病院の診療体制が十分でなかった可能性があるととして,院内で患者が亡くなった64の事例すべてを対象とすることになりました.医療事故の背景には,根深いものがありそうです.

2 東京女子医科大学病院のプロポフォール事件
70時間以上にわたりプロポフォールが大量に使用されていたことがわかり,今後そのようなことが起きないように,厚労省の研究班が指針をまとめました.
また,厚労省は,「大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース」を設置しました.
ただ,事件自体の進展はみえません.

3 神戸国際フロンティアメディカルセンターの生体肝移植死亡事件
シンガポールの関連病院は閉鎖されました.KIFMEC神戸は,患者が減少し,事実上診療を停止しました。はたして,再建はできるのでしょうか.
なお,そもそも,海外では,生体肝移植はほとんど行われていません.健康な人に侵襲を加える生体肝移植という方向自体,検討が必要だったのではないでしょうか.

4 千葉県がんセンターの腹腔鏡手術問題と乳癌患者の検体を取り違え事件
千葉県がんセンターで難度の高い保険適用外の腹腔鏡手術の後,患者11人が死亡した件について事故調査が行われました.肝胆膵外科学会は,千葉県がんセンターについて修練施設の認定を取り消し,死亡例は隠し成功した例のみを学会報告していた執刀医とその上司の医師の「指導医」の資格を取り消しました.
腹腔鏡下手術問題のみならず,乳癌患者の検体を取り違え,乳房全摘手術を実施する,という過誤もおきました.

5 国立国際医療研究センターのウログラフィン脊髄注射事件の東京地裁判決
添付文書を検討せず薬剤部への問い合わせせずに,造影剤ウログラフィンを脊髄注射した医師(5年目のレジデント)が,東京地裁で禁錮1年執行猶予3年に処せられたのは,議論はありますが,箱にもアンプルにも「脊髄造影禁止」と赤字で書いてあることから,従前の裁判例に照らし相当と思います.また,一般に,業務上過失致死事件の場合,直接の担当者の過失が問われますが,なかなか上層部の過失(体制整備義務違反)が問われない傾向があるように思います.そこに踏み込めば,事故防止の体制整備がすすむはずなのですが...

6 日産厚生会玉川病院でのインスリン大量投与事件東京地裁判決
東京地裁平成27年12月15日判決は,日産厚生会玉川病院の看護師に,懲役2年6月の刑を言い渡し,被告人は即日控訴しました.判決は,被告人が患者に異変のあった3日間とも看護を担当し犯行が容易だったこと,看護記録に虚偽の血糖値を記載したことなどから,犯人と強く推認される,と認定しました.
病院内の物証の少ない事案での,事実認定の参考になります.控訴審の判断が待たれます.

7 新宿セントラルクリニックの性病詐欺事件東京高裁判決
東京高裁平成27年9月9日判決は,新宿セントラルクリニックの控訴を棄却し,25万円の支払いを命じた東京地裁の判決が確定しました.
厚生労働省が感染の判定基準としている検査結果の数値が「0.90」のところを,新宿セントラルクリニック院長が「0.00」と改変していました.その結果,同クリニックで診察を受けた患者は,ほぼ全員がクラミジア,ヘルペスなどの性病に関して陽性と判断されてしまいます.院長は「自分の判定基準の方が正しい」と主張し,同様の基準での検査結果を数千人に告知したと法廷で証言しています.性病と診断され,不要な投薬をされた被害者は多数いると思います.

8 大崎市民病院の電子カルテ不正閲覧事件と正常卵巣切除事件
 
院内で興味本位で電子カルテが閲覧された事件のみならず,正常な卵巣を切除するという医療事故もおきました.執刀医が両側の卵巣を摘出する次の手術と思い違いをした可能性があるとのことです.

9 レーシック手術集団訴訟,追加提訴
「品川近視クリニック」と「錦糸眼科」でレーシック手術を受けたた患者12人が2014年12月に集団訴訟を起こしていますが,本年9月に9人が追加提訴しました.
集団訴訟提訴後,レーシック手術の件数は,急速に減少していると思います.

10 胃のX線の撮影で撮影台と車内の壁に挟まれた死亡事故
5月に沼田市で胃のX線の撮影で撮影台と車内の壁に挟まれ,女性が死亡する事故がおきました.
放射線技師が女性の状況を十分に確認しておらず,滑落に気がつかず,撮影台を水平方向に戻したため,頭が挟まれたとのことです.胃のX線の撮影は検診台を傾けて撮影するものですから,放射線技師には,被撮影者の女性の状況を十分に把握する注意義務があると思います.

2015年も,医療事故の多い年だったと思います.
2016年こそは,医療事故の少ない年であってほしいと期待します.
よいお年をお迎えください.


谷直樹


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by medical-law | 2015-12-31 20:18 | 医療事故・医療裁判