弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

鹿児島地裁平成28年1月13日判決,鹿児島市立病院の生後7か月の小児転落事故で賠償命じる(報道)

鹿児島読売テレビ「転落し後遺症 鹿児島市立病院に賠償判決」(2016年1月13日)は,次のとおり報じました.

「鹿児島市立病院で、2007年、生後7か月だった男の子が診察台から転落し、重い後遺症が出たとして、男の子と両親が鹿児島市に、損害賠償を求めた裁判で、鹿児島地裁は、病院側の責任を認め、総額約1億1400万円の支払いを命じた。
訴えを起こしていたのは、現在9歳の男の子と両親。

訴えなどによると、男の子は生後7か月だった2007年、自宅で転倒し後頭部を打ったため、鹿児島市立病院に運ばれた。その際、男の子は診療中に医師らが目を離した隙に、誤って高さ70センチの診察台から転落。その後、外傷性の急性硬膜下血腫が見つかった。

「転落が原因で常に介護が必要な重い後遺症が出た」として1億7000万円の損害賠償を求めた両親。
これに対し鹿児島市は、「自宅で転倒した時に生じた障害の影響によるもの」と反論していた。

13日の判決で、鹿児島地裁の川崎聡子裁判長は、「男の子は、診察台から転落後に急性硬膜下血腫が見つかり、その後、脳の萎縮が始まるなど、転落と後遺症の因果関係は、相当認められる」として、鹿児島市に総額約1億1400万円の支払いを命じた。

判決を受け男の子の両親は「息子の現状を考えれば手放しには喜べないが、妥当な判決をいただいてホッとしている」とコメント。一方、鹿児島市立病院は、「主張が認められず残念。判決内容を精査し、今後の対応を検討したい」とコメントしている。」


産経新聞「診察ベッドから男児転落、重い後遺症 鹿児島市に1億円賠償判決」(2016年1月13日)は,次のとおり報じました.

「生後7カ月で搬送された鹿児島市立病院で診察ベッドから転落し、手足などに重い後遺障害を負ったのは病院の責任だとして、奈良市の男児(9)と両親が鹿児島市に計約1億7千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁は13日、逸失利益や介護費用、慰謝料など計約1億1千万円の支払いを命じた。

 川崎聡子裁判長は判決理由で、病院で起きた転落事故の後、男児の容体が急激に悪化したと判断。「事故がなければ重大な後遺障害の発生を回避できた」と結論付けた。

 病院側は「後遺障害は事故の影響ではなく、自宅で転倒した際の症状が悪化した」と主張していたが、判決は「病院での事故の前には意識は正常に近い状態に回復していた」と指摘した。

 判決によると、男児は平成19年1月14日、鹿児島県内の自宅で座った状態から転倒し、床で頭を打った。市立病院に運ばれ入院したが、翌15日朝、診察中に医師らが目を離した隙に、柵がない高さ約60~70センチのベッドから床に転落。後遺障害を負って、平成21年に転居先の奈良市から重度の障害者認定を受け、将来も仕事ができなくなった。」


これは私が担当した事件ではありませんが,医師らが,診察中に,高さ70センチの診察台においた生後7か月の男児から目を離すのは,注意義務違反(過失)です.注意義務違反(過失)が明らかでも,転落と後遺症の因果関係が争われると,解決まで年月を要します.それにしても,9年は長いです.
上記テレビ報道では「相当認められる」という言葉がありますが,相当因果関係が認められるという意味です.共同通信は,「川崎聡子裁判長は判決理由で、病院で起きた転落事故の後、男児の容体が急激に悪化したと判断。「事故がなければ重大な後遺障害の発生を回避できた」と結論付けた。」と報じていますので,また賠償金額からも,相当程度の可能性ではなく,高度の蓋然性を認めたものと考えられます.因果関係の認定について参考になる判決です.

【追記】

朝日新聞「入院乳児ベッド転落、鹿児島市が控訴 1億円賠償命令に」(2016年1月28日)は,次のとおり報じました.

鹿児島市立病院で2007年、当時生後7カ月だった男児(9)がベッドから転落して重い後遺症が残ったとして両親と男児が病院を運営する市に損害賠償を求めた訴訟で、市は27日、約1億1350万円の支払いを命じた鹿児島地裁の判決を不服として福岡高裁宮崎支部に控訴した。

 判決によると、男児は自宅で転倒して頭を打ち、市立病院に入院し、翌日に診察用ベッドから転落した。地裁は13日の判決で「(転落)事故が無ければ後遺障害を回避できた」と病院側の過失を認めた。

 鹿児島市の森博幸市長は28日の定例記者会見で「搬送された時点で、患者はすでに重篤だった。(地裁判決で)主張が認められなかったのは残念。今後も裁判の場で主張していく」と述べた。」



谷直樹


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by medical-law | 2016-01-14 06:56 | 医療事故・医療裁判