弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

兵庫県立こども病院,血液製剤と誤り血圧降下薬を乳児の静脈に投与(報道)

神戸新聞「乳児に投薬ミス、死亡との因果関係は否定 こども病院」(2016年2月10日)は,次のとおり報じました.

「兵庫県立こども病院(神戸市須磨区)で昨年3月、心臓病で入院中の乳児が医師に誤った薬を投与され、一時中毒状態に陥っていたことが9日、関係者への取材で分かった。乳児はいったん回復したが、約2カ月後に持病の心臓病で死亡したという。同病院は遺族に対し、投薬ミスと死亡に因果関係はない、と説明しているという。

 関係者によると、昨年3月、医師が血液を固まりやすくする血液製剤を乳児の静脈に注入する際、誤って血圧を降下させる薬を投与し、乳児は一時、呼吸困難などの中毒状態になった。治療により中毒状態は脱したが、その後に容体が悪化したという。

 血液製剤と血圧降下薬の色が似ていたことなどが投与ミスの一因とみられている。院内では薬を指さし確認したり、名称を読み上げたりして、再発防止に努めているという。

 県立病院では2014年10月から、医療過誤のケースでも、患者や家族から事案を非公表とするよう文書で申し出があれば、公表しないよう基準を変更。今回は家族から申し出があったとして、公表していなかった。

 県の担当者は神戸新聞社の取材に「遺族の意向があるので、県としては説明やコメントはできない」としている。(金井恒幸)」


神戸新聞「県立こども病院投薬ミス 専門医「非公表は問題」(2016年2月10日)は,次のとおり報じました.

「兵庫県立こども病院(神戸市須磨区)で9日判明した心臓病の乳児に対する投薬ミスは、家族の申し出により非公表となっていた。県内では、家族の同意がなくても医療事故を公表する公立病院があるが、県は2014年に基準を変更した。専門医や別の患者家族からは「家族の意向を理由に医療過誤を公表しないのは問題」との声が上がっている。

 県立病院では医療過誤で障害が残ったり、死亡したりした事故を原則公表している。だが「個人情報が特定され、精神的な苦痛を受けた」などと抗議を受ける事案が複数発生したため、14年から、医療過誤の事案でも患者や家族から非公表とするよう文書で申し出があれば公表しないよう基準を変えた。

 県によると、今回以外にも別の家族から非公表を求める申し出があった。県の担当者は「情報公開という点では後退したととらえられる可能性はある」とし、公表基準を再度議論したいという。

 医療事故の公表基準は公立病院でもさまざまで、神戸市立医療センター中央市民病院などを運営する神戸市民病院機構では、事前に患者・家族の同意を得るよう努める一方、同意が得られない場合も患者のプライバシーに配慮しつつ、原則公表している。

 子どもの心臓病に詳しい県内のある専門医は「県立病院は公的な存在で県民には知る権利がある。県や病院という身内が公表の有無を判断するのは問題。医師が誤って薬を投与しただけで十分公表に値する」と指摘。子どもが心臓病患者という女性は「こども病院は県内では子どもの心臓病患者にとって最後のとりで。患者や家族の特定につながらないようにしながら、起きた事故はオープンにすべきだ」と話す。(金井恒幸)


本件は私が担当したものではありませんので,具体的事情がわかりませんので,因果関係についてはなんともいえませんが,中毒状態が続いたことが死亡に影響している可能性を否定することはできるのでしょうか..

また,医療過誤のケースをプライバシーに配慮して公表することで,他施設での同種事故を防止する効果が期待できます.また,上記報道の件であれば,薬は間違いを防ぐために着色していることも多いのですが,その色について検討が必要とされるかもしれません.このようなケースでは,非公表にするのではなく,ご遺族の意見をいれた公表のしかたを考えるべきと思います.

医療の進歩,患者の安全の進歩は,先例の教訓の上に築かれたものです.いま患者が受けている医療は,先例の教訓の上にあるものです.医療は公的なものですから,医療事故の公表,共有は,今後の医療,患者の安全のために必要なことです.

 谷直樹


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by medical-law | 2016-02-11 07:33 | 医療事故・医療裁判