弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

一宮市民病院,嘔吐が始まった朝以降に血液検査を行わなかった過失を認め和解,説明義務違反で示談(報道)

中京テレビ「医療過誤で計5100万円賠償 一宮市」(2016年2月23日)は,次のとおり報じました.
 
「愛知県一宮市の市民病院で医療過誤があったとして、一宮市は計5100万円の賠償金を患者の遺族に支払うことで合意したと発表した。

一宮市によると、一宮市民病院では2010年4月、当時10歳の男の子に対し急性虫垂炎の緊急手術を行った。手術は成功したが、その後に容体が急変し死亡した。担当医師が血液検査を行わなかったなど、判断にミスがあったとして、遺族側に5000万円の賠償金を支払うことで和解したという。

また、3年前の2月には、当時40歳だった末期腎不全の女性に対し、透析のカテーテルを足から首に付け替える処置を行ったが、処置中に意識がなくなり、その後、死亡した。カテーテルを付け替える処置の同意を患者に文書で求めておらず、100万円を支払うことで遺族と合意したという。」



共同通信「10歳男児の医療過誤死亡で5000万円和解」(2016年2月23日)は,次のとおり報じました.
 
「愛知県一宮市が運営する一宮市民病院で2010年、県内在住の男児=当時(10)=が急性虫垂炎の手術後に死亡したことについて、市は23日までに医療過誤を認め、両親に5千万円を支払うことで和解した。

 病院によると、男児は10年4月22日、虫垂を切除する緊急手術を受け成功した。しかし手術中に原因不明の大量の腹水が見つかり、24日朝から嘔吐(おうと)するようになり、25日に死亡した。

 12年、早期に血液検査をして適切な処置を取らなかったとして、両親が市に約7千万円の損害賠償を求め名古屋地裁に提訴。

 和解に向けた協議の結果、市は、嘔吐が始まった24日朝以降に血液検査をせずに輸血をした過失を認めた。」


上記報道の件はいずれも私が担当したものではありません.
 
100万円の示談は,説明義務違反によるものです.結果と関係しない説明義務違反は100万円前後のことが多いですが,多くの場合,示談で解決し,裁判になることはほとんどありません.

5000万円の和解のほうは,この金額から,病院側が過失と因果関係を認めたものと考えられます.
炎症に伴う腹水,小腸の出血,嘔吐,バイタルの変化があれば,普通,少なくとも血液検査は行うでしょう.ですから,それを行わなかった過失は明らかです.
ただ,過失と結果との因果関係が争われると,血液検査を行った場合にどのような結果だったかを原告が立証することは血液検査を実施していないので難しく,したがって血液検査により原因が判明し,治療して治癒したという立証が難しく,因果関係立証が高度の蓋然性に足りないとして少額の賠償金しか認められないこともあり得ますが,被告の過失が大きいがゆえに原告の立証ができずそのために原告に不利な結果になるとすれば明らかに不合理・不正義ですので,このような和解解決が適切です.



谷直樹


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by medical-law | 2016-02-23 19:56 | 医療事故・医療裁判