弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

静岡地判平成28年3月24日,留置針穿刺の際神経を傷つけCRPSを発症した事案で6100万円賠償命令(報道)

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読売新聞「静脈注射で左腕まひ、日本赤十字社に賠償命令」(2016年3月25日)は,次のとおり報じました.

「静脈注射で神経を傷つけられ、左腕まひの後遺症が残ったとして、静岡市内の30歳代の女性が、静岡赤十字病院を運営する日本赤十字社(東京)を相手取り、慰謝料など計約7170万円の損害賠償を求めた訴訟で、静岡地裁(細矢郁裁判長)は24日、計約6100万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、女性は2010年12月、甲状腺腫瘍の切除手術を受けるため、同病院に入院。看護師が点滴を行う際、神経を傷つける可能性があり、深く刺さないようにする義務があるのに十分な注意を払わず、左腕の中枢部から静脈に留置針を刺し、神経を傷つけた。その結果、女性は手足がしびれるなどする「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」を発症し、左腕がまひする後遺症が残った。

 判決で、細矢裁判長は、「手関節部から中枢に向かって12センチ以内の部位に留置針を刺す際は、十分な技量を持つ者が、他の部位に比べて十分な注意義務を払って行うべきだ」と指摘。看護師が左手関節から4、5センチ付近に刺した針によって、「神経が傷ついたと認めるのが相当」と認定した。

 原告は「認められて今はほっとしています」とコメントを発表。代理人の青山雅幸弁護士は「将来の医療事故の再発防止につながれば」と述べた。

 一方、静岡赤十字病院の担当者は「判決内容を精査した上で、今後の対応を決める」とコメントした。」


中日新聞「日赤に6100万円賠償命令 赤十字病院注射でまひ 静岡地裁判決」(2016年3月25日) は,次のとおり報じました.

「静岡市葵区の静岡赤十字病院で静脈注射をされたことで神経が傷つき、左腕が完全にまひしたとして同市の30代女性が病院を運営する日赤(東京都)に損害賠償を求めた訴訟で、静岡地裁は24日、同社に慰謝料など6100万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 判決によると、女性は2010年12月、甲状腺腫瘍の摘出手術のため同院に入院。麻酔のため、看護師に左腕の手関節から5センチ付近の血管に針を刺されたが、鋭い痛みを感じ「痛い」と声を上げた。その後も複数回にわたり深く針を刺されて神経が傷つけられ、複合性局所疼痛(とうつう)症候群(CRPS)を発症し、左腕がまひした。細矢郁裁判長は判決で「看護師は、深く穿刺(せんし)しないようにする義務を怠った」とした。

 県弁護士会館で会見した原告代理人の青山雅幸弁護士は「治療過程における問題も多く、結果も重大な事故だった。判決がより良い医療につながれば」と話した。女性は「判決で認められて今はほっとしている」とコメントを出した。

 静岡赤十字病院は取材に「判決内容を精査した上で、控訴も含めて対応を検討したい」と話した。」


この件は私が担当したものではありません.原告の代理人は青山雅幸先生です.
静脈注射による神経損傷は多数起きており,なかにはCRPSを発症する例もあります.
画期的な判決です.

【追記】
毎日新聞「日赤注射ミス 2審も過失認める 5700万円賠償命令」(2017年3月26日)は,次のとおり報じました. 

「手術前の注射が原因で左腕がまひする重度の後遺症が残ったとして、静岡市内の40代の女性が静岡赤十字病院(同市葵区)を運営する日本赤十字社に約7000万円の損害賠償を求めていた訴訟で、東京高裁(阿部潤裁判長)は23日、1審静岡地裁判決と同様に病院側の過失を認め、日赤に約5700万円の支払いを命じた。女性が将来働いて得られたはずの「逸失利益」は1審よりも低く認定し、賠償額を約400万円減額した。」




 谷直樹


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by medical-law | 2016-03-26 21:17 | 医療事故・医療裁判