弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

高岡市民病院,ブルガダ症候群を見落とし6000万円で示談

読売新聞「診断ミス 50歳突然死…高岡市民病院」(2016年5月31日)は,次のとおり報じました.

「◆遺族に6000万円支払い

 高岡市民病院は30日、記者会見を開き、診断ミスで高岡市内の男性(当時50歳)が突然死するのを防げなかったとして、遺族に賠償金6000万円を支払うと発表した。男性は2014年7月に受診し、約1か月半後に死亡した。死因はブルガダ症候群だった。

 市民病院によると、男性は14年7月、意識を失ったことや頭の重さを訴えて受診した。市民病院は、精密検査で中枢神経系の病気と診断し、経過観察していた。ところが、男性は同年8月、心停止になり、救急搬送された別の病院で死亡した。

 遺族側から昨年5月、損害賠償請求されたことを受け、市民病院では院内の医療安全小委員会などで当時の対応を検証した。

 その結果、診察時の男性の心電図に特有の波形があり、ブルガダ症候群と診断できていた可能性が判明。ブルガダ症候群の中でも発作のリスクが高いと診断し、植え込み型除細動器を手術で取りつける治療をしていれば、男性の突然死を防げたという。

 市役所で記者会見した遠山一喜病院長は「亡くなられた方やご遺族の心情を考えると心が痛む。今後は体制を強化し、安全安心な医療を心がけ、地域のみなさんに信頼される病院としていく」と謝罪した。」


これは,私が担当したものではありません.
検査・診断については,検査しなかったことに過失があっても,検査していればどのような結果になっていたかを立証することが困難な場合,因果関係立証ができず,関員追求が困難なことも王ですが,検査の評価を誤った場合(検査→診断の過程に問題がある場合)は,検査結果が残っていると,過失立証は比較的容易です.
報道の件は,植え込み型除細動器という治療法があり,過失がなく正しく診断ができていいれば,死亡という結果を回避できた可能性があります.
このような事案は,裁判にならずに解決することが多いです.


【追記】

読売新聞「「検査必要」カルテ記載漏れ…高岡の突然死」(2016年6月26日)は,次のとおり報じました.

「◆正確な診断行われず

 高岡市民病院の診断ミスで高岡市内の男性(当時50歳)が心疾患(ブルガダ症候群)によって突然死した問題で、電子カルテの記載漏れや病院内の連携不足によって、正確な診断に必要だった循環器系の検査が行われていなかったことが分かった。

 市民病院によると、2014年7月上旬、男性が「夜中に意識を失った」と訴えて救急外来を受診。診察した医師は心電図に異常な波形を認めたため、中枢神経系と循環器系の検査が必要と診断した。しかし、循環器系の検査が必要とカルテに記載するのを忘れたため、男性は中枢神経系の検査を受けただけで「異常なし」と診断されて帰宅。同年8月下旬にブルガダ症候群で死亡した。

 男性の遺族らは15年5月、損害賠償を市民病院に請求。市民病院は、循環器系の検査をしていればブルガダ症候群と診断できた可能性があったとして、診断ミスを認めて損害賠償金6000万円を遺族に支払い和解する

 遠山一喜病院長は「カルテに循環器系の検査の必要性に関する記載があれば、中枢神経系の検査をした医師が、次に循環系の検査を勧めることもできた。カルテ記載の徹底や院内の連携を強化して、再発防止を図りたい」と話している。」。



谷直樹


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by medical-law | 2016-05-31 06:02 | 医療事故・医療裁判