弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

名古屋地裁平成28年7月15日判決,チアミン不投与によるウェルニッケ脳症と後遺症の因果関係肯定(報道)

読売新聞「治療ミス1億2000万円賠償 名古屋地裁」(2016年7月16日)は,次のとおり報じました.

藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)で食道がんの手術を受けた際、医師が適切にビタミンB1を投与せず、運動障害などの後遺症が残ったとして、同県知多市の男性(60)が病院を運営する藤田学園らに約1億6600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、名古屋地裁であり、朝日貴浩裁判長は約1億2000万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、男性は2009年7月に食道がんの手術を受けた後、めまいや意識障害などの症状を訴え、8月にビタミンB1の欠乏で生じる「ウェルニッケ脳症」と診断された。医師が縫合不全を疑い、男性は手術後絶食を指示され、輸液で栄養を摂取していたが、同病院は1か月余りビタミンB1を投与しなかった。男性は退院後も症状が進行。歩行が困難となり、日常生活のほとんどに介助が必要となった。

 同学園は、脳症の診断後にビタミンB1を大量投与し、退院までに症状は改善したと主張したが、判決では、「男性がめまいなどの症状を訴えた後すみやかに投与せず、後遺症が残った」とし、原告の請求を認めた。

 同学園は「判決内容を検討した上で、今後の対応を考えたい」とした。」


この件は,私が担当したものではありません.
ウェルニッケ脳症の判決は久々です.高カロリー輸液でビタミンB1を投与しないなどということが2009年にあったことに驚きました.
歩行が困難となり日常生活のほとんどに介助が必要となった原因は,食道がんとは考え難いので,ウェルニッケ脳症によるものと認定されたのでしょう.

谷直樹


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by medical-law | 2016-07-16 08:39 | 医療事故・医療裁判