弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

「国立病院機構盛岡病院が誤嚥事故で提訴される(報道)

河北新報「入院中食事詰まらせ死亡 遺族が病院機構提訴」(2016年8月24日)は次のとおり報じました.

「国立病院機構盛岡病院(盛岡市)に入院していた女性=当時(69)=が死亡したのは、病院側が食事を喉に詰まらせないようにする注意義務を怠ったためとして、盛岡、滝沢両市の遺族が23日までに、病院を運営する独立行政法人国立病院機構(東京)に2200万円の損害賠償を求める訴えを盛岡地裁に起こした。
 訴えによると、女性は2014年1月22日、肺炎のため入院。同26日に病院が用意した昼食を喉に詰まらせて心肺停止状態に陥り、同2月2日、低酸素脳症で死亡したとされる。
 遺族は「アルツハイマー型認知症で早食いする癖があったにもかかわらず、病院は食事の介助や付き添いを怠った上、食材を細かく刻むなど誤嚥(ごえん)を防止する配慮をしなかった」と主張している。」


これは私が担当した事件ではありません.
誤嚥事故は,その事案で,具体的な危険性が予見できたか否か,が問題になります.
記事では食材等はわからず,アルツハイマー型認知症で早食いする癖があったという事情しか報じられていませんが,それ以外に具体的な危険性を予見させる多くの事情があるのでしょう.

なお,誤嚥事故の責任を肯定した最近の判決としては東京地判平成26年9月11日などがあります,
同判決は,継のとおり判示しました.
「本件当日は,手術から僅か5日しか経っておらず,原告X1の意識状態は午後0時頃の時点でJCS3~10,蒸しパンを口に入れた時点ではJCS3であったが,証拠(甲B1,証人E)によれば,JCS3の意識状態とは,良い状態であっても,辛うじて名前を言うことが出来る程度で,それ以上の質問には答えられないという状態であるから,してはいけないことやしても良いことを理解する能力が低下し,食事を摂取するに当たり,自分の嚥下に適した食べ物の大きさや柔らかさを適切に判断することが困難な状況にあって,食べ物を一気に口の中に入れようとしたり,自分の嚥下能力を超えた大きさの食べ物をそのまま飲み込もうとしたりする行動に出る可能性があるのみならず,嚥下に適した大きさに咀嚼する能力も低下しており,原告X1の食事介助にあたる看護師は,そのことを十分に予測することができる状況であったことが認められる。」「パンは唾液がその表面部分を覆うと付着性が増加するといった特性を有し,窒息の原因食品としては上位に挙げられる食品であること,このことはリハビリテーションの現場では広く知られていることが認められる。」「本件事故当時原告X1の食事の介助を担当する看護師は,蒸しパンが窒息の危険がある食品であることを念頭に置き,同原告が蒸しパンを大きな塊のまま口に入れることのないように,あらかじめ蒸しパンを食べやすい大きさにちぎっておいたり,同原告の動作を観察し必要に応じてこれを制止するなどの措置を講ずるべき注意義務を負っていたというべきである。」

誤嚥の具体的予見可能性は、その食事のときの患者の意識状態,提供する食品塔によって異なることになります.



谷直樹


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by medical-law | 2016-08-24 23:46 | 医療事故・医療裁判