弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

母体保護法指定医師の資格のない医師が中絶手術12件,死亡女性遺族告発(報道)

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日本テレビ「中絶手術後に妻死亡 夫が記者会見」(2016年12月6日)は次のとおり報じました.

「東京・武蔵野市の産婦人科病院で、亡くなった妻の中絶手術を、指定を受けていない医師が行ったとして、6日、遺族の夫が医師を刑事告発した。夫は6日午後2時すぎに記者会見し、妻が急死した原因の究明をうったえた。

 刑事告発したのは都内に住む男性で、今年7月、男性の当時23歳だった妻が武蔵野市の「水口病院」で、胎児の発育が良くないと診断されたため人工妊娠中絶手術を受けたところ、手術の6日後に急死したという。

 中絶手術は指定の医師以外が行うことを禁止されているが、病院側は指定を受けていない医師が執刀したことを認めた。手術と死亡の因果関係はわかっていないが、男性は6日午後、記者会見し、妻が急死した原因についても、調べてほしいとうったえた。

 夫「この手術が本当に原因ではないのか、ちゃんと調べてほしい。病気とかなく健康な人間がなぜ死ぬのか」

 水口病院によると、執刀した医師は、今回の女性を含め12件の中絶手術を行っている。男性は6日、この医師を業務上堕胎罪で刑事告発し、警視庁が受理した。」


NHK「妊娠中絶手術受けた女性死亡 遺族が医師を告発」(2016年12月6日)は次のとおり報じました.

「ことし7月、東京・武蔵野市の産婦人科病院で人工妊娠中絶の手術を受けた女性が6日後に死亡していたことがわかりました。女性の遺族は、執刀した医師が手術に必要な指定を受けていなかった疑いで警視庁に告発しました。

これは女性の遺族と弁護士が6日午後、記者会見をして明らかにしました。

それによりますと、東京・武蔵野市にある産婦人科の「水口病院」で、ことし7月、当時23歳の女性が人工妊娠中絶の手術を受けたあと体調が悪化し、6日後に自宅で死亡しました。手術との因果関係はわかっていませんが、執刀した男性医師は、中絶の手術をするのに必要な東京都の医師会からの指定を受けていなかったということです。

このため遺族は、指定を受けずに違法に手術を行った疑いでこの医師を6日、警視庁に告発しました。会見した26歳の夫は「胎児の発育が不十分だと説明があり、妻と話し合って中絶を決めたが、健康だった妻が急死したことには納得がいかない。本当に手術が原因ではなかったのか、病院の管理体制が適切だったのかを明らかにしてほしい」と話していました。

水口病院は、「このような事件を発生させたことを反省するとともに、深くおわび申し上げます。事件を厳粛に受け止め、再発防止に向け、全力で信頼回復に取り組んでまいります」とコメントしています。

病院は医師の手術を容認

水口病院によりますと、今回執刀した男性医師は、ことし8月から10月までの3か月間勤務し、合わせて12件の人工妊娠中絶の手術を行っていたということです。病院では、この医師が、必要な指定を受けていないことを把握していたものの、指定を受けていた当時の院長の責任のもとで、手術を行うことを容認していたということです。病院は認識不足だったとしていて、この問題を受けて当時の院長と執刀した医師はいずれも10月末で退職したということです。」



遺族側の代理人は,オアシス法律事務所の中川素充先生です.

母体保護法指定医師の技能要件は,以下のとおりです.

「都道府県医師会が認める研修機関において、一定期間産婦人科医として専門知識を修め、手術並びに救急処置法等の手技を修得しかつ下記要件を具備すること。
(1)医師免許取得後5年以上経過しており産婦人科の研修を3年以上受けたもの又は産婦人科専門医の資格を有すもの。
(2)研修医療機関において、20例以上の人工妊娠中絶又は流産手術の実地指導を受けたもの。ただし10例以上の人工妊娠中絶手術を含むこととする。なお、指定医師でない医師については、研修機関で指導医の直接指導の下においてのみ人工妊娠中絶手術ができる。
(3)都道府県医師会の定める指定医師のための講習会(以下、「母体保護法指定医師研修会」という)を原則として申請時までに受講していること。」


中絶手術で妊婦が亡くなることは普通ありません.
術者に母体保護法指定医師の資格がなかったことと,本件妊婦の死亡が関連するという見方もそれなりに合理的な推測ですが,今の時点では,具体的な事実が明らかでないため,手術と妊婦の死亡との因果関係については何とも言えません.

ただ,告発された業務上堕胎罪は,妊婦の死亡との因果関係の有無にかかわず成立する罪です.
母体保護法第14条は,次のとおり定めています.

「都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一  妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの(以下略)」


この母体保護法第14条にそった人工妊娠中絶は,堕胎罪の堕胎にあたらないのですが,本件術者は「指定医師」ではないので,本則にかえって堕胎罪が成立する,と考えることもできます.ただ,本件で母体の健康保護など人工妊娠中絶が必要な事情があったとすれば,堕胎罪は成立しない,とも考えられます.


いずれにしても,事実が解明されることを期待します.


谷直樹

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by medical-law | 2016-12-06 18:42 | 医療事故・医療裁判