弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

今津赤十字病院の看護助手にトイレで2時間放置された見守りが必要な難病患者が心肺停止となり死亡(報道)

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朝日新聞「トイレに難病患者2時間放置、1カ月後死亡 福岡の病院」(2017年1月1日)は,次のとおり報じました.
 
「福岡市西区の今津赤十字病院(藤井弘二院長)で昨年、難病で入院していた福岡県糸島市の女性(当時68)がトイレで約2時間放置されて心肺停止になり、約1カ月後に死亡していたことが、同病院への取材でわかった。

 病院によると、女性は脳の神経細胞の変異から筋肉のこわばりを起こす指定難病「多系統萎縮症」の患者で、昨年8月8日に入院。左半身にまひがあるため車いすを使い、会話も難しかったという。院内では、移動時に付き添いが必要との申し送りがされていた。

 8月12日午前10時ごろ、女性看護助手に付き添われてトイレに行き、正午過ぎ、心肺停止になっているのを別の職員が見つけた。放置されている間に血圧が低下し、心肺停止になったという。女性は9月9日に亡くなった。

 この看護助手は別の業務のためその場を離れ、女性には「終わったらナースコールで呼ぶように」と伝えていたという。

 看護助手は当初、病院に「5~10分おきに様子を見に行った」と説明し、病院も家族にそう伝えた。だが数日後、実際には約2時間離れていたと看護助手が説明を翻したため、病院は8月18日に再度家族へ説明し、謝罪したという。

 この看護助手は11月に依願退職した。同病院の武田義夫事務部長は「深くおわび申し上げます」と話した。再発防止として、見守りの必要な患者の移動時には、ベッドに行き先を書いた札を置く措置を講じたという。(鈴木峻)」

産経新聞「難病女性をトイレに放置、死亡 福岡の病院「5~10分おきに様子見ていた」虚偽説明」(2016年1月3日)は次のとおり報じました.

病院によると、女性は脳の神経細胞が変性して筋肉のこわばりを起こす指定難病「多系統萎縮症」で昨年8月8日に入院。同月12日、看護助手に付き添われてトイレに行った後一人で残され、約2時間後に心肺停止の状態で発見された。低血圧で意識を失ったとみられ、9月9日に死亡した。女性は以前もトイレで意識を失ったことがあり、見守りが必要と院内で申し送りをしていたが、十分伝わっていなかった。

 病院側は家族に対し、看護助手への聞き取りを基に断続的に見守っていたと説明していたが後日、誤りがあることが判明して謝罪した。看護助手は11月に依願退職した。

 事故調査委員会を設置し、詳しい事故原因を調べている。同院は「深くおわびする。信頼回復のため、再発防止に一層の対策を講じたい」としている。」


この件は私が担当したものではありません.

平成 24 年度社会保険診療報酬改定により,看護職員の業務を補助する職員の配置に対してより手厚い評価がなされました.その後,看護補助者(看護助手)を増員する病院が増えています.
しかし,看護補助者の研修,情報共有,業務の適正な分担については,問題もあるようです.
看護補助者の資質,経験,研修の程度に応じて,本来,任せられる業務の範囲,任せ方が異なるはずです.

報道の件は,この患者が以前もトイレで意識を失ったことがあり見守りが必要なことが当該看護補助者には十分伝わっていなかったことがそもそもの問題です.
病室で看護師の見ているところで看護補助者が業務にあたるときは看護師の目がとどきますが,それ以外の場合,トイレ,浴室のような場所で看護補助者が単独で業務にあたる場合には,病院は事故が起きないように,リスクを十分に認識し適切に対応できる体制にしておく必要があります.
報道の件は,当該看護補助者がその患者をトイレに運んでいく業務のリスクを十分認識していなかった原因を検討する必要があるでしょう.
また,当該看護補助者が虚偽の説明を述べた背景事情も検討すべきでしょう.
事故調査委員会の報告はホームページで公表していただきたく思います.

看護補助者(看護助手)は平成24年以降増えていますが,病院の看護補助者(看護助手)に対する研修,管理の体制が不十分であると事故が起きるリスクがあります.そのリスクは,この病院だけの問題ではないのではないかと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-06 08:17 | 医療事故・医療裁判