弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

吹田市の有料老人ホームで准看護師が呼吸器電源入れ忘れ女性死亡(報道)

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朝日新聞「人工呼吸器の電源入れ忘れ、ホーム入居者を死なせた疑い」(2017年1月5日)は,次のとおり報じました.

「大阪府吹田市の有料老人ホーム「メディカル・リハビリホームくらら吹田」で昨年8月20日夜、入所中の重病の女性(68)が付けていた人工呼吸器の電源を入れ忘れて、窒息死させたとして、大阪府警は5日、施設長の女(36)=同府茨木市=と准看護師の女(53)=兵庫県伊丹市=を業務上過失致死の疑いで書類送検し、発表した。共に容疑を認めているという。

 捜査1課によると、准看護師は「たんの吸引の際にアラーム音が鳴るのが煩わしく、普段から電源を切っていた」、施設長は「医療行為は医師や看護師に任せていた」と供述している。

 女性は筋肉が萎縮する重病で、自発呼吸が困難だった。昨年6月にも別の看護師が女性の人工呼吸器の電源を約30分入れ忘れていたが、女性の家族には伝えていなかったという。

 遺族は「入居者の安全という根本的なことが軽視され、企業の都合が優先されたことが残念でならない。二度と同じような事故を起こさないでほしいと強く願う」との談話を出した。」


産経新聞「呼吸器電源入れ忘れ女性死亡、老人ホーム施設長ら2人書類送検…ベネッセ系運営 大阪府警」(2017年1月5日)は,次のとおり報じました.

「大阪府吹田市の介護付き有料老人ホームで昨年8月、人工呼吸器が停止して入所女性(68)が死亡した問題で、大阪府警捜査1課は5日、たんの吸引作業後も呼吸器の電源を入れ忘れたまま放置していたとして、業務上過失致死容疑で女性施設長(36)と女性准看護師(53)を書類送検した。いずれも容疑を認めている。

 府警によると、死亡した女性は寝たきり状態で、昨年6月にも別の看護師が呼吸器の電源を入れ忘れ、約30分間停止する事故が起きていた。施設長は女性の家族や運営会社に事故を知らせず、再発防止策も取っていなかったという。

 書類送検容疑は昨年8月20日午後7時20分ごろ、吹田市朝日が丘町の「メディカル・リハビリホームくらら吹田」で、入所女性のたんを吸引した後、呼吸器の電源を入れ直すのを怠って放置し、女性を窒息死させたなどとしている。

 同課によると、本来は吸引作業中も電源を切ってはならないが、准看護師は「電源を入れたまま吸引作業をするとアラーム音がしてわずらわしく、頻繁に電源を切っていた」と供述している。

施設はベネッセコーポレーションの関連会社「ベネッセスタイルケア」が運営。同社の老松孝晃取締役は「深くお詫びする。責任を痛切に感じている」と話した。一方、女性の遺族は「入居者の安全が軽視され残念。介護事業者には安全管理を徹底してほしい」とのコメントを出した。」


NHK「老人ホーム女性死亡 准看護師が呼吸器電源入れ忘れか」(2017年1月5日)は,次のとおり報じました.

「去年8月、大阪・吹田市の介護付き有料老人ホームで、入居者の女性が死亡しているのが見つかり、警察は、女性に着けられていた人工呼吸器の電源を准看護師が切ったあと入れ忘れたとして、この准看護師など2人を業務上過失致死の疑いで書類送検しました。

去年8月、大阪・吹田市朝日が丘町の介護付き有料老人ホーム「メディカル・リハビリホームくらら吹田」で、入居していた68歳の女性が死亡しているのが見つかりました。
警察が調べたところ、この女性は病気のため自分で呼吸できず人工呼吸器を着けていましたが、担当の53歳の准看護師がたんを吸引する際、呼吸器の電源を切ったあと入れ忘れたと見られることがわかったということです。
警察は、安全管理が不十分だったとして、准看護師と36歳の施設長の2人を業務上過失致死の疑いで書類送検しました。

警察によりますと、この施設では去年6月にも、同じ入居者に着けられた人工呼吸器の電源を、別の看護師が一時、入れ忘れましたが、施設長は具体的な再発防止策を取っていなかったということです。

警察によりますと、2人は容疑を認め、准看護師は「電源をつけたままだとアラーム音が鳴るので、切って作業していた」と話し、施設長は「医者や看護師に任せきりになっていた」などと話しているということです。

遺族「企業の利益優先 安全管理徹底を

死亡した女性の長女と次女は、代理人の弁護士を通じてコメントを出し、「看護職員のほとんどが人工呼吸器の適切な使い方を知らず、過去にあった同様の事故についても対策や報告が行われていなかった。入居者の安全が軽視され企業の都合や利益が優先されていたことが残念でならない。安全管理を徹底し、二度と同じような事故を起こさないでほしい」と指摘しています。

一方、施設を運営する「ベネッセスタイルケア」の老松孝晃取締役は「あってはならないミスで人命が失われ、大変重く受け止めています。亡くなった入居者とご遺族に深くおわび申し上げます。全国の事業所に急いで再発防止策を示していきたい」と話しています。」



人工呼吸器の電源入れ忘れ事故は,病院などでも以前から結構起きています.
スイッチの入れ忘れによる事故について,以下の裁判例があります.

○看護師3名がアイセル病の患者を入浴させた後,人工呼吸器のアラームのスイッチをオンにするのを忘れ,その後人工呼吸器の接続部がはずれて患者Aが呼吸困難の状態に陥ったがアラームが鳴らなかったために気付くのが遅れ,患者が死亡した事案
「人工呼吸器がAの体からはずれると同人の生命自体が脅かされる状況にあったのであるから,担当看護師が負っていた人工呼吸器のアラームのスイッチを入れておくべき注意義務は,きわめて重大かつ基本的義務であるとともに,わずかの注意さえ払えばこれを履行することができる初歩的な義務であるということができる。この注意義務を怠ったこと自体,重大な過失であるし,さらに,以前にも同様の事故があり,病院側も本件のような事故が生じる可能性を十分に認識し得たにもかかわらず,再び本件事故を惹起したのであるから,その責任は重大である。」と判示されました.
(神戸地判平成5年12月24日 判タ868・231)。

○准看護師が,清拭後人工呼吸器のメインスイッチをオンに戻さず患者を死亡させた事案
「人工呼吸器のメインスイッチをオンの状態にするのはもとより,そのフロントパネルの表示を目視し,同女の胸郭を観察するなどして,清拭後も右人工呼吸器が正常に作動して同女への空気の供給が正常に為されていることを確認し,事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務」が認められました.
准看護師は罰金50万円
(松江簡略式命令平成13年1月9日,飯田英男ら『刑事医療過誤Ⅱ増補版』561頁)

○准看護師が人工呼吸器の加温加湿装置の給水後に人工呼吸器を作動させず患者を死亡させた事案
「給水作業後は,人工呼吸器を作動させ,その気道内圧計及び同人の胸郭の観察等を行い,同人への酸素の供給が正常になされていることを確認し,事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務」が認められました.准看護師は禁錮8月,執行猶予2年に処せられました.(盛岡地一関支判平成15年11月28日(飯田英男ら『刑事医療過誤Ⅱ増補版』594頁)
仙台高裁平成16年10月14日判決は控訴棄却,さらに上告棄却で確定しました.

○看護師が平成14年1月人工呼吸器の加湿器の蒸留水を交換した際,一時的に切った電源を入れ忘れ,患者が死亡した事案
札幌地判平成19年4月25日は,看護師の過失を認めました。
看護師は,平成17年,小樽簡裁で罰金50万円の略式命令を受けました(毎日新聞2007年4月26日).

○国立H病院母子医療センターの看護師Xが三方活栓の空気抜き後にシリンジポンプの輸液流量の設定値を0に戻さず,かつその流路を三方活栓で遮断せず,看護師Yが当該シリンジポンプを起動させる際,輸液量の設定値の確認を怠りイノバン希釈液を過量投与し患者を死亡させた事案
看護師Xについて,「三方活栓内の空気を抜いた後は,同設定値を0に戻し,医師の指示に基づき同液の投与を開始するまでは,その流路を三方活栓で遮断して,同液の過量投与を防止すべき業務上の注意義務」に違反したとして,看護師Yについて,「同シリンジポンプの輸液流量の設定値を確認して同液の過量投与を防止すべき業務上の注意義務」が認められました.
看護師Xは罰金30万円,看護師Yは罰金50万円に処せられました.
(弘前簡略式命令平成15年1月31日,飯田英男ら『刑事医療過誤Ⅱ増補版』578頁)


谷直樹

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by medical-law | 2017-01-09 02:12 | 医療事故・医療裁判