弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

虚偽公文書作成などの容疑で京都府立医科大学附属病院を家宅捜査(報道)

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山口組系暴力団組長の生体腎移植手術執刀医の京都府立医科大学附属病院の吉村了勇院長(移植一般外科)や担当医が重症化の恐れを指摘して「拘禁に耐えられない」とする意見書を作成し,2015年8月に大阪高検に提出した件について,虚偽の意見書や診断書を作った疑いがあるとして京都府立医科大学附属病院が家宅捜査されました.
この手術には,京都府立医科大学の吉川敏一学長(消化器内科)が立ち会っていたとのことです.
報道によると,手術は,周囲の医師らの反対を押し切る形で病院幹部の判断で行うことが決まったとのことです.
また,医療法人財団康生会武田病院の医師についても、組長が重度の心臓病にかかっているとした虚偽内容の意見書を作った疑いで,京都府警が近く同病院を強制捜査するとも報じられました.

朝日新聞「組長の虚偽意見書、別の病院も作成か 京都府立医大事件」(2017年2月15日)
毎日新聞「組長収監逃れ 京都府立医大の学長が手術立ち会い」(2017年2月15日)

刑法第156条は,「 公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前2条の例による。」
刑法第160条は,「医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、3年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する。」と定めています.
つまり,公務員である医師が虚偽の診断書等を作成したときは,1年以上10年以下の懲役で,公務員である医師が虚偽の診断書等を作成したときは3年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処せられます.

虚偽診断書等作成罪(刑法160条)の「虚偽の記載」とは,客観的な真実に反する内容の記載をすることです。医師の裁量という言い訳は通用しません.刑務所収容に耐えうるか否かは,客観的な検査結果,身体所見により判断されますので,客観的な検査結果,身体所見によって刑務所収容に耐えられないことが言えないと,「虚偽」と判断されるでしょう.実際に受刑者が刑務所に収容されて健康状態に問題が生じなければ,「刑務所収容に耐えうること」が立証されたことになり,診断の時点と刑務所に収容された時点が近接していれば,診断の時点でも刑務所収容に耐えうる状態であったことが推定されるでしょう.
客観的な真実に反する内容を,もし医師が主観的には真実に合致すると考えて診断書を作成した場合は,「故意」が問題になります。「故意」の認定は客観的事実から推認されます.ナイフで心臓を深く刺しておきながら殺すつもりはなかったという言い訳が通用しないように,明らかに客観的な真実に反する,根拠のない内容を記載しておきながら真実に合致すると考えたという言い訳は裁判では通用しません.
客観的真実に反する記載がなされたこと(行為),真実に反する内容であることをその医師が認識認容していること(故意)が要件ですが,本件が起訴まですすむのか,公判でそのことが立証できるのか,注目したいと思います.

日本経済新聞「組幹部収監逃れ「虚偽書類、院長が指示」 京都府立医大担当医」(2017年2月15日)は次のとおり報じました.
「組長の担当医が昨年、京都府警の任意の事情聴取に「病院長からの指示で虚偽の書類を書いた」と供述したことが14日、捜査関係者などへの取材で分かった。」

【追記】
NHK「京都府立医大病院 暴力団との関係指摘の学長に辞任勧告決定」(2017年2月24日)は,次のとおり報じました.

「大学の吉川敏一学長は、高山総長と飲食店で会っていたことが明らかになり、大学は23日、教員の人事などを審議する学内の評議会を開き、対応を協議しました。

関係者によりますと、委員からは、吉川学長が現在学長としての職務を行っていないという指摘や、反社会的勢力との関係を問題視する意見が出され、協議の結果、吉川学長に対し、副学長名で辞任を勧告することを出席者の全会一致で決めたということです。

勧告は弁護士を通じて吉川学長に伝え、来週前半までに回答を求め、辞任しない場合や回答がない場合は評議会として、学長を解任する権限がある学長選考会議に解任を請求することも決めたということです。吉川学長は「高山総長とは飲食店で偶然、2回ほど会った」とするコメントを出し、親密な関係を否定していて、今後の対応が注目されます。」




谷直樹

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by medical-law | 2017-02-15 10:19 | 医療