弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

大阪府済生会野江病院,太ももの痛みと腫れについて検査等を実施せず悪性腫瘍で死亡した事案で和解(報道)

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産経新聞「17歳少年の悪性腫瘍、「担当医の誤診で死亡」遺族が解決金700万円で病院と和解 大阪地裁」(2017年2月15日)は次のとおり報じました.

「左足にできた悪性腫瘍で平成26年に死亡した少年=当時(17)=の遺族が「担当医の誤診により適切な検査がされなかった」として、通院先の病院を運営する社会福祉法人恩賜財団済生会(東京)を相手取り、計1千万円の損害賠償を求めた訴訟で、同会が解決金700万円を支払う内容で大阪地裁(山地修裁判長)で和解が成立したことが15日、分かった。

 和解は1月27日付。訴状などによると、少年は中学3年だった24年10月、休み時間に学校の校庭でサッカーをしていた際に転倒して左大(だい)腿(たい)骨(こつ)を骨折。救急車で大阪府済生会野江病院(大阪市城東区)に搬送された。

 病院では骨折の治療を受けて退院したが、左の太ももの痛みと腫れが引かず、何度も受診。しかし病院側は骨折に伴う症状との診断を変えなかったという。そこで別の病院に行ったところ、25年3月に悪性腫瘍と診断された。同年5月に左足の切断手術を行ったものの、悪性腫瘍は肺や脳に転移しており、少年は26年12月に死亡した。」


これは,私が担当した事案ではありません.
整形の医師は,太ももの軟部肉腫についても一応の知識をもっているはずですが,思い込みは危険です.警鐘例といえるでしょう.軟部腫瘍の良性,悪性の判断は難しく,中途半端な生検はかえって危険なので,がんセンター等の専門病院への転院が必要なケースだったと思います.
和解金額から判断すると,裁判所は,医師の注意義務違反(過失)を認めたが,死亡との因果関係について高度の蓋然性まで認めなかったと思われます.
そのときにMRI検査,PET-CT検査していればどのような治療が行われてどのような結果になったかは,実際に検査が行われていませんので,原告は立証できません.被告が検査を怠ったことで原告が因果関係を高度の蓋然性の程度まで立証できず不利に取り扱われるというのは不合理です.軟部腫瘍が自覚されるのはかない大きくなってからであることが多いので,そのときにMRI検査,PET-CT検査を実施していれば救命できたという立証はハードルが高いでしょう.
それでも,注意義務違反(過失)が認められ,それと死亡との間に相当程度の因果関係が認められたことは大きな意義があると思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-02-16 18:37 | 医療事故・医療裁判